コーヒー(Coffee)はお好き?(1998.01記)(2021.04.04追記)

 

目 次

●コーヒーとのつき合い (2004.10.11追記)

●コーヒーのおいしい時

●コーヒーのおいしいお店

●コーヒーのおいしい豆を売る店

●世界のコーヒー習慣

●コーヒーを知る書物

●コーヒーを煎る

●コーヒーを挽く

●コーヒーを入れる(2000.06.14)

●コーヒー豆 ア・ラ・カルト(2004.10.11)

●コーヒーショップ Joy オーナー 林氏からのメッセージ (1999.07.16)(2007.09.15追記)

 


私がこのサイトを開いて23年が経つ。
継ぎ足しの更新で古いものと新しいものが混合してしまっている。
贔屓にしていた多くのコーヒー屋も時代とともに店を畳んだりオーナーが他界してしまった。
私とコーヒーの付き合いは長く、依然深い付き合いをしている。
そうした意味もあってこのコーナーは今しばらく続けていき折を見ながら更新していきたいと思っている。(2021.04.04)
 

●コーヒーとのつき合い    

【最初の出会い】
私とコーヒーのつき合いは長い。
物心ついた3才の頃まで遡(さかのぼ)る。ほろ苦いコーヒーがうまいと感じた記憶をしっかりと憶えている。
当時(昭和34年、1959年頃)、コーヒーなど子供に与えるべき飲み物ではなかった、と記憶する。子供が喜ぶ味ではないし、第一砂糖やミルクが潤沢になかった。
私はそれを飲んだというより、棚にしまってあったコーヒー缶(コーヒーの粉と砂糖が混ざった1000ml程度の缶詰、たぶんアメリカ製のもらい物だったと思う)の粉をそのまま盗み頬ばった記憶がある。
・・・これが最初の出会い。
 
【自家製アイスキャンディ】
私の育った家は愛知県の山あいで、冬はかなり冷えた。
小学校の時、インスタントコーヒーを砂糖と一緒にお湯で濃いめに溶いて水で薄め、茶碗に入れ割り箸を差して1晩屋外に放置した。
翌朝、コーヒーのアイスキャンディーができた。なかなか美味だった。
砂糖をちゃんと溶かさないと、翌朝砂糖が茶碗の下に沈殿した。
砂糖だけの甘さではダメ。コーヒーのあの苦さと一緒にならないとうまくなかった。
小学校時代に森永から「クリープ」という動物性粉末クリームが発売された。
これは画期的なものだった。
牛乳を入れるよりコクがでた。インスタントコーヒーの人口がこれによって急増したと思われるほど、急速に家庭に浸透した。
その後、ネッスル(現ネスレ)から「NIDO」、味の素から「ブライト」が出た。
クリープが一番うまかった。しかしアイスキャンデーにこれらのクリームは入れられなかった。アイスキャンデー(アイスクリーム??)ができないのである。
それほどまでには山の屋外は冷えなかった
 
【コーヒーよりもココアの時代】
高校時代、岡崎に下宿して、深夜、疲れるとインスタントコーヒーを飲んだ。
しかし、この頃は、ココアに執心した。ココアは森永のココアだった。
缶詰のコンデンスミルクを使ってココアの粉をしっかりと練り合わせる。この練り合わせがココアの味の良否を決めた。
これにグラニュー糖を混ぜてさらに練って、熱湯を入れて溶かす。
下宿には冷蔵庫も、ガスも、電気コンロもなく、500mlの電気ポットが一つしかなかった。
当然牛乳は保存できなかった。もちろん保存の利く一人用のフレッシュミルクなどあろうハズもなかった。
従って缶詰のコンデンスミルクがベストだった。ホントは、この練ったココアを溶かすのに温めたミルクを使うのが一番おいしい。
この頃初めて「コーヒー豆」を知った。インスタントとは別の豊かな香りがあった。
「アロマ」というのだそうである。このにおいは、「コーヒールンバ」という西田佐知子(関口宏の奥さん)が歌った昔の歌を思い起こさせた。
「コーヒールンバ」は1960年代初頭に流行った歌で、これを思い起こしたのは1970年代初頭だから10年も経つことになる。
エキゾチックな歌でリズムも詩も当時の作風とは別次元だった。
高校の上級生にグァテマラだのキリマンジャロだの、ブルーマウンテンだのこれ見よがしに豆の蘊蓄(うんちく)をたれていた人がいた。が、自分にはその違いが分からなかった。
唯、インスタントコーヒーと違って香しい香りだったのは区別できた。
高校時代は、喫茶店に入ることが禁止されていたので数えるほどしか喫茶店に入らなかった。
面白いことに、喫茶店ではコーヒーを飲まなかった記憶がある。コーヒーよりもジュースとかソーダ、パフェなどを飲んだ。
コーヒーは割高感があったし、まだコーヒ-よりも甘味を好んでいたようだ。
 
【大学研究室】
大学に入ると、時間つぶしに(マンガ本を読むために)喫茶店によく入った。
名古屋は本当に喫茶店が多い。
大学時代は車を持っていたので気が向くと喫茶店に入った。名古屋の喫茶店は、コーヒーに必ずスナック(ナッツ等)をつけてくれる。
東京に出た当初、喫茶店でコーヒーを頼んでもスナックがついてなくて寂しい思いがした。
喫茶店で飲むコーヒの多くはヘビーだった。ドロッとしたコーヒーが多かった。
ネルドリップで入れたコーヒーはコクが出るが、一度にたくさん作り置きするから時間と共に味が変わる。味がかなり濃く胃袋にどすんと入った。
卒業研究で研究室に入り浸るようになると研究室でしょっちゅうコーヒーを飲んだ。コーヒーがなくなるとマスターコースの先輩が会費を集め生協でインスタントコーヒーを買ってきた。
夏は、研究室にある熱電対の?0?点補償用の氷を持ち出してアイスコーヒーを作った。
 
【社会人】 
社会人になると、コーヒーの飲む量が増えた。会合や客先でコーヒーが出され、しらずしらずに増えていった。
ミルクを入れなくなり、砂糖を入れなくなった。コーヒーの苦さの中に薫りと甘みを感ずるようになっていった。
家では、週末にコーヒー豆を買いに行き、ドリップして飲むようになった。コーヒー豆を挽くミルがなかったのでお店で挽いてもらった。
豆を挽いてもらうと1週間ほどしか保存できない。1週間で200gの豆を消費した。
結婚したとき、高校の友人がコーヒーミルをプレゼントしてくれた。以来それを使ってその都度豆を挽きコーヒーを入れるようになった。2年ほど前から生豆を買って焙煎するようになった。
コーヒーを家で入れるのは息抜きである。コーヒーを煎り、挽き、抽出する。その過程々々で出会うコーヒーの香りは安らぎを与える。
細君は、コーヒーは好きだが、私のようには凝らない。
彼女が一人の時は、「カフェグレコ」かインスタントコーヒー、仲間が来ればコーヒーメーカですませている。
長男には小学校6年の時から英才教育(!?)を施し、中学になってドリップのやり方を伝授した。
しかし、中学2年になって父親に反旗を翻(ひるがえ)し、以後コーヒーを飲まなくなった。面倒くさいようである。
末息子は、味覚が我々と全く違い、生まれ落ちた時から一すすりも口にしない。理由は「苦い」からとか。
かくて我が家のコーヒー人口は細君と私の二人だけ、それに週末にやってくる細君の両親。
両親は我が愚息たちより人間的に暖かい人たちなので、私の入れるコーヒーをおいしいといって飲んでくれる。
 
 
【昨今のコーヒー店事情】 (2004.10.11) (2007.11.20)(2018.11.20追記)
東京では、喫茶店の様相が一変しつつある。
外国資本によるファースト・フードばりの喫茶店(Starbucks、Tullysなど)が進出してきて、従来の喫茶店の地図が変わってきた。
こうしたお店は、潤沢な資本を元手に駅前の一等地を借りてカウンタとテーブルを設らえて、セルフサービスでコーヒーをサービスしている。
テイクアウトに便利なようにコーヒーカップは耐熱処理した紙コップとし、こぼれないようにプラスチックの上蓋が付けられている。
価格は330円から400円程度。
都内の従来の喫茶店の価格が400円から500円くらいだから、ちょっと安い値段設定である。
イージーなコーヒー提供システムとしては決して安いとは言えない。
しかし、ファッショナブルなこと、コーヒーの量が多いこと、独自の高価なマシンによって一定した品質のおいしい味(総じて甘い)を提供していること、システムが明瞭なこと、などが手伝って若い世代やサラリーマンを取り込んで急成長している。
かくして都内の従来の喫茶店は一つ消え二つ消え、代わってこうしたお店が増えてきている。
彼らが提供するコーヒは、高温、高圧で抽出する自動マシンによるエスプレッソやカプチーノ、ラテなどであり、注文を受けてその場でボタンを押して自由自在に作っている。
チェーン店の大きな特徴として、ブランドが知れ渡るとお客は安心してお店に出入りするようになるので生業は安定する。
こうしたお店はこのようにして全国展開をすることになる。
個人で経営するお店は派手な宣伝ができないから、徐々に客数が減って行き閉店の憂き目に合う。
私の住んでいる駅前もかつては個人が経営する喫茶店がポツポツとあったが、チェーン店の進出により駅前200m圏内で生き残ることが難しくなって、駅から離れた所でかろうじて生計をたてているありさまとなった。 

  

2006.05 米国シカゴ空港内でのStarbucksコーヒー店。
米国では至る所にコーナー型のコーヒーショップがある。
ターミナル空港では飛行機を待つ乗客の咽をうるおすオアシスになっている。
 
 
都内では、外国資本のコーヒーチェーン店の他に、日本の資本による同様のお店ががんばっている。
筆頭はドトールコーヒーである。
このお店は比較的小さな駅前に進出している。
このお店は、1970年から続いているお店で、主に豆を売っていた。
店鋪は小さく、店内で飲むコーヒーは300円程度と安い。しかし、あまり美味しいとは言えない。気軽に入るお店であろう。
このお店は総じて小さくそして喫煙できる。タバコ嫌いの私には耐えられない愛煙家の「憩いの場」なのであろう。
知り合いが待ち合わせをここに指定しない限り、私は絶対に使わないお店である。(1998年の話、2014年現在は入っていないのでわからない。)
このお店の親会社が、外国資本と競うために作ったお店がエクセルシオール「Excelsior」(1999年)である。
また、東京の喫茶店チェーンの老舗「ルノアール」(98店鋪)が新しく出したお店がNew Yorker's Cafeである。
このチェーン店はまだ12店鋪であり都心の主だった駅周辺にしかない(2007年9月現在)。
私はまだこのお店に入ったことがない。
 
喫茶店の多い名古屋では、東京と同様、ターミナル駅前に外国資本のコーヒーチェーン店が進出してきている、が、東京ほど多くはない。
代わりに、県内のあちこちの主要道路脇にフランチャイズのコーヒー店(コメダ珈琲)が台頭している。
県内で240店鋪はあるという。このお店の店構えは大きい。
ファミリーレストランと見まがうほど大きくて大きな看板で客を引き、完備した駐車場に呼び込んでいる。
このお店は大きな駐車場を完備しているところが多い(右写真)。
店内も広々としていてカウンタとテーブル数が十分に取られていて、新聞・雑誌なども気配りよく置かれている。
独特のマグカップで多めのブレンド珈琲が飲める。味も良い。もちろんピーナッツ付き。
名古屋ではこうしたお店のスタンスが一般的なので外国資本のお店とは一線を画しているように見える。いつ行っても6割〜8割の入りである。
コメダは2010年より関東に進出してきて、2018年では池袋など都心のターミナル駅にまでお店を出すようになった。
画期的なことである。
スターバックスの旧来のやり方がウェットな客対応を好む日本人から飽きられてきたように感じる。
コメダの成功にあやかってか、関東にも星乃珈琲、ミヤマ珈琲が郊外に出店している。
 
コーヒーの喫茶スタイルを変えたのは、ファミリーレストランチェーンの「Denny's」(デニーズ)ではなかったであろうか。
このお店はアメリカ資本のレストランで、コーヒーを一杯の値段で何杯もお変わりできるシステムを日本で最初に取り入れた。
1970年代後半のことだったと思う。この風習が日本中に広まって、多くのファミリーレストランが追随するようになった。
このあたりから個人経営の喫茶店の風向きがおかしくなってくる。
コーヒーの味にこだわらないお客が個人経営のお店から徐々に遠のいて行ってしまった。
 
ともあれ、こうしたチェーン店は一定の品質とサービスを保つことはできるものの、一定であるが故(品質を一定にしなければならないが故)にそれ以上でもなければ以下でもない。
これは、チェーン店の大きな特徴である。
従って、個人経営による美味しい珈琲や雰囲気に出会うことは難しい。
そうは言っても、仕事柄いろいろな場所に出向く時、時間がないとついつい味のわかっているチェーン店に入ってしまう。
ここ数年の私の喫茶店利用では、圧倒的にチェーン店の利用が多くなってしまっている。
これから先、個人経営のお店がどこまで店を守っていけるか不安を抱かせるような事情となっている。
2000年に仕事で独立して自分の時間を管理して行動できるようになり、クルマであちこちまわるようになると、珈琲事情も別の側面から見えるようになってきた。
北名古屋(一宮、稲沢、江南)では、現在も独立した個人珈琲店が多い。名古屋式のコーヒー店スタイルを作り出したところなので自然サービスが良い。
埼玉などの首都圏郊外では、星乃珈琲店やミヤマ珈琲店が出店している。
コメダは下丸子の進出を皮切りに横浜青葉区、緑区に進出し、東京23区では池袋、新宿、巣鴨、渋谷、田端にお店がある。
 
米国西海岸から「Blue Bottle Coffe」という珈琲ショップが、2015年2月に清澄白河に上陸した。二号店は青山、三号店は新宿。
このお店の特徴は、生豆を焙煎して48時間以内に使い切るのがコンセプト。
創設した社長が一時期日本(東京)に長期滞在していて、日本人の舌の繊細さに感銘を受け海外出店の手始めは東京、それも下町の清澄白河としてと言われている。
ブルーボトル珈琲は手でドリップするために、お店にはドリッパーをずらりと並べてられて、店員が注文に応じて次々と珈琲を抽出している。
開店したての頃清澄白河のお店に訪れ30分ほど並んでコーヒーをいただいた。
若い子がペーパードリップで入れてくれた。手つきを見ていると、教育したてのようでうまい抽出の仕方を十分にわかっていないように感じた。
味は、凡庸。ペーパーの匂いが残って酸味が強かった。
豊かな苦みが好きな私には好みが合わなかった。以後訪れていない。
2021.04時点では主要地区を含め12店舗があるという。

  

●コーヒーのおいしい時

コーヒをおいしいと感ずるのは、体調に大きく左右される。私はたばこを飲まないが、たばこの味わいと似ていると思う。
どれだけおいしいコーヒーでも体調が悪いとおいしく感じられない。
コーヒーがおいしいと感じる時は次のような時である。
 
・ 体調が良いとき(カゼなどひいていないとき)。
・ 体に程良い疲れがあるとき。
・ のどが渇いているとき。
・ 頭脳を使って精神的にある程度張りつめているとき
・ パン、バターを食べながら一緒に飲むとき。
 
こうした条件のとき、どんなコーヒーを飲んでもおいしく感ずる。
私が最もおいしいと感じたコーヒーは、尾瀬に行った際に山で飲んだ「ネスカフェゴールドブレンド」のインスタントコーヒーだった。
体を使ってのどが渇き、おいしい空気のもとで飲んだコーヒーは一番うまかった。苦みと甘みが脳天をしびれさせ胃の中に吸い込まれていった。
以来、おいしいコーヒーのつき合い方をいつも考えるようになった。
自分であれこれコーヒー豆を選んだり、挽き方を変えたり、入れ方を変えてみたりした。
体が疲れているときや、デスクワークでのどが渇いている時は軽めで香りの良いコーヒーがおいしく、コーヒーを味わいたい時は濃いめでコクのあるコーヒが良いことを知った。

 

●コーヒーのおいしいお店

コーヒーのおいしい店はたくさんあると思う。ここに紹介したのは、たまたま私が出入りした店である。
(このトピックを書いたのが2000年当時であるので、今現在もお店を開いているのかわからない。)
私は時間があればいろいろな喫茶店に入りコーヒーを楽しむが、ほとんどの場合そこで仕事をするため(コンピュータをたたくので)、いちいちその名前の憶えていない。
基本的においしい店は次のようなお店。
 
  ★ コーヒー豆を分けてくれる(売ってくれる)店は総じておいしい。
  ★ 注文してからコーヒーを作ってくれる店はおいしい。
  ★ 店内が明るく、フロアがフローリング仕上げになっている店。
    → カーペットや布張りは匂いがつきやすく、タバコの匂いで
        せっかくのコーヒーの味がだいなしに なってしまう。
 
 
・六本木「カファブンナ」
六本木の交差点から首都高速沿いを渋谷方向に右側歩道を歩き、マグドナルドを越えた路地を左に入って100mほど歩いた右手の中二階にある。
コーヒーだけを扱っている。
ここは豆が重厚で味に隙がない。
ネルドリップで入れていてどっしりした味わいがある。
 
六本木「ドンパ」
六本木交差点を飯倉方面に左側歩道を100mほど歩いた道路沿いにある。
水コーヒとして有名。
水コーヒーは本来味わいのある抽出の仕方ではないそうだが、ここのコーヒは独特のライトな味わいがある。
(2009年現在、このお店はない。)
 
代々木上原「唯」
仕事の帰り道に立ち寄った店。千代田線代々木上原駅の改札を右に出て路地を右に50mすすんだ2階にあるお店。
独自の唯ブレンドはコクがある。
 
神谷町「扇屋」
オフィス街にある。日比谷線神谷町を虎ノ門方向に左側歩道を50mほど行った所。ビジネスマンがよく利用。
明るいお店でコーヒーはコクがある。お店のママさんが如才ない。
(2009年現在、このお店があった場所はコーヒー店とは違う別のお店になっている。)
 
神戸「そ」
阪神電車「青木(おうぎ)」駅北口にある小さなお店。コーヒーカップにこだわる。
実は、この店に行く前は同じ阪神電車「深江」駅にあった喫茶店のコーヒーがうまかった。
ここで買ったコーヒー豆は香りが強くて、カバンを開けただけでコーヒーの香りが発散した。
阪神大震災でこの店は跡形も無くなってしまった。
今また同じ所でお店を再開しているのかどうかはわからない。
 
京都三条「イノダ」
大学時代に、京都へ遊びに行った折り実兄に教えてもらった店。
西京極から狭い路地を歩いて行くと左側にガラス張りのお店が見える。
25年以上も前にフォークシンガー「高田渡(たかだ・わたる)」がイノダのコーヒーを歌っていた。
以来20年近く行っていないが、昨年(1997年)ブラリと行ってみた。
この店は、夜8時には店を閉めてしまうのでコーヒーを飲むことはできなかった。
店内には大きな円卓があり、中でお兄さんが注文のコーヒーを入れてくれる。
コーヒーとミルクを交互に高々と入れるやり方はまだ踏襲しているのだろうか。
コクのあるコーヒーだったことを憶えている。
 
 ●コーヒーのおいしい豆を売る店
豆の良否は、ペーパドリップで入れる時に蒸らしから抽出に移る際の豆の盛り上がりでわかる。
新鮮な豆、おいしい豆は、蒸らしたときにブクブクと泡立つようにふくれ上がる。
この蒸らしのふくれ上がりがたまらない。どのようにしたらお饅頭のようにふくれ上がるかを考える。
コーヒーメーカはこの蒸らしが十分に行えない。上から無造作にバシャバシャ湯が降ってくる。
おいしい豆はちょっと間違った入れ方をしても自ら蒸れてふくれ上がってくる。こんな豆は入れ方がとても楽だ。
 
・六本木「カファブンナ」
 - 苦みのラテンと酸味のアフリカ系の2種類を分けてくれる。
 
・代々木上原「唯」
 - コクのある「唯」ブレンドを分けてくれる。
 
・神戸「そ」
 - 前に行ってた店が震災で無くなってしまい、彷徨しているときに見つけた店。コーヒーがおいしかったので豆も買った。
  期待した通りのおいしい豆だった。コクがあった。
 
・池袋西武 「カフェ・ノ・バール Cafe no Bar」
 - 地下食品売場にあるお店。値段もリーズナブル。おいしい豆は回転の良いお店で買うのが常識。
  この店は常連が多く、豆が飛ぶように売れていく。
  客の流れを見ながら、この人たちはどのようなコーヒーの入れ方をするのだろうと思うことがある。
 
・東急ハンズ
 - 生豆を売っている。ブラジル。オーソドックスでうまかった。
 
・日本橋高島屋食品売場
 - 知り合いに10年ほど前(1988年)に教えてもらった。生豆を売ってくれる店。
 
・YANAKA Coffe(やなか コーヒー)アリオ西新井店
 - 2020年に買い物をしているお店で見つけたコーヒーショップ。
  このお店でたくさんの種類の生豆が置いてあるのが目に入った。そのお店には焙煎機が置いてあり、その場で焙煎をしてくれる。
  以後2021.04になる現在もこのお店で焙煎をしてもらって、コーヒーを楽しんでいる。
  このお店はチェーン店で都内にいくつかのお店がある。(2021.04.04)
 
  
生豆(左) と 焙煎(ロースト)した豆(右)
生豆は重くてずしりとしている(左写真)。色は半透明の緑がかった白色。白石のような感じ。
これを煎ると軽くなり少し膨れる(写真右)。  
 
 ●世界のコーヒー習慣
 
・コーヒーの歴史:
コーヒーの歴史は、1000年くらい前の話だそうだが、現在の嗜好品として飲まれるようになったのは今から400年ほど前のこと。
発祥の地は、アラビアとエチオピアに広がる地域。それまでは胃薬として使われていた。
野生の木の実を砕いて煮出していた。苦みはなく麦藁色で「バンカム」と呼ばれていた。
この薬用の豆を煎って煮出すようになると苦みと香り良さが受け、イスラム教社会に普及した。
イスラム社会は酒が禁止されていたためコーヒーが爆発的に普及した。
バンカムと呼ばず、酒の一種の名前をとって「カーフェ」といった。
お酒が飲みたかったんだろう。
17世紀に入って、ベネチア、パリ、ロンドンと欧州に取り入れられ、コーヒーまたはカフェ(Cafe)という世界的共通語ができた。
コーヒーがヨーロッパに導入された時、コーヒーの毒性が賛否された。
この論議に白黒の決着をつけたのが、スウェーデン国王Gustav III世だった。
体つきが全く同じ双子の死刑囚がいて、死刑を免除する代わりに双子の内の一人にコーヒーを、別の者に紅茶を毎日2、3杯飲ませ続けた。
彼らは長生きし83才まで生きながらえた。
コーヒーを飲み続けた囚人はそれより数年長く生きた。スウェーデン、フィンランドは、世界でもっともコーヒーを飲む国だそうである。
 
・イギリス:
イギリス人は実に良くコーヒーを飲む。
しかし、町に喫茶店は無い。あるかも知れないが少ない。
これだけコーヒーを飲みたい私がロンドンの町を歩いて見つけられないのだから少ないのだろう。
イギリスにあるのはパブ。彼ら(特に我々のような若い世代)は紅茶よりコーヒーを飲む。
圧倒的にインスタントコーヒーである。
日本では、金銭的な事情が無い限りコーヒーはフリーズドライのインスタントコーヒーを買うが、イギリス人のオフィスでは安価なインスタントコーヒー瓶ばかりが目についた。
イギリス人の特徴は、砂糖とミルクをたっぷり入れるコーヒーミルクを好んで飲む。
会社の始まりに1杯、10時に一杯、食事に1杯、3時に1杯という具合である。
 
・アメリカ:
アメリカ人もコーヒーが好きだ。
アメリカには紅茶を飲む習慣が希薄なので、コーヒーかさもなくばコーラである。
イギリスと違ってアメリカのオフィスには、たいがいコーヒーサーバー(事業所向けのコーヒーメーカ)があり、コーヒーは常時サーバーにある。
味はどこに行っても同じ。いわゆるアメリカン。
日本でデニーズやマグドナルドで飲むのと同じ味わいである。
薄くて香りが若干する程度で、コクなどを味わうシロモノではない。
薄めのためのどが渇いているときはうまい。ミルクを入れずに飲む方がおいしいようだ。
アメリカ人はあまりミルクを使わない。
面白いことに、アメリカ人もイギリス人も日本の缶コーヒーは絶対飲まない。
まず、彼らにはアイスコーヒーという概念が無い。
従って、アイスコーヒー、冷たい缶コーヒーは魚の「さしみ」以上に奇妙なシロモノだ。
また、暖かい缶コーヒーは「甘い!」といって嫌がる。
「コーラ」だって相当甘い、と思うのだが。
日本で外国の有名人がさかんに缶コーヒーの宣伝をしているが、あれは「ウソ」。
 
・ドイツ:
ドイツでは少し濃いめ(日本に近い)のコーヒーを飲む。
ドイツに行くとビールばかり意識が向いてしまうためか、ドイツでのコーヒー事情を余りよく観察していない。
物の本によると、アラビアで発生したコーヒーは、ドイツ(ジャーマンコーヒー)、フランス(フレンチコーヒー)、イタリア(エスプレッソコーヒー)としてそれぞれ発展した。
ドイツは軽めで、フレンチはヘビー、エスプレッソは最もヘビーとされている。
日常で飲むのはライトで香りが良いものがいい。
 
・韓国:
何回か韓国に行ったが、喫茶店に入ったのはたった1回だけ。
コーヒー専門店ではなかったので風味は印象に残っていない。
焼き肉を食わせてくれる韓国料理の店にはコーヒーはおいていない。
日本人は時間があると喫茶店に入るが、韓国ではこのような風習はないように思える。(1999年当時)
 
・中国:
中国ではホテル以外コーヒーを口にすることはまず無い。
打ち合わせには必ずジャスミンティーかウーロン茶である。
現在西欧化が激しく、海外留学生が帰国して、日本やアメリカで過ごしたコーヒーの文化を職場や大学でオフィスで流行らせるのも時間の問題と思われる。(1999年当時)
 
 ●コーヒーを知る書物
コーヒーが好きになったらオーソドックスなコーヒーの楽しみ方について知りたくなる。
自分が楽しければそれで良いのだろうが、はたしてこれが一般的なのかどうか心配になる。
以下の2つの書物は豊富な図と写真が挿入されてコーヒーについて詳しく紹介されている。
● 田口 護 著: 『コーヒー 味わいの「こつ」』
   柴田書店、1996.3.10初版。田口氏はバッハ・コーヒー主宰
● 嘉茂 明宏(かも・あきひろ) 著: 『こだわりのコーヒーブック』
   大泉書店、1991.7.17初版。嘉茂氏は、コーヒーの専門学校嘉茂学園の副学長
 
 ●コーヒーを煎る
普通コーヒー豆は、コーヒー店で焙煎(茶色)した豆を買ってくるか、コーヒー屋で希望の粗さに挽いてもらう。
生の豆を煎る(いる)ことは通常まずない。しかし、私はこだわる時はこだわる。
焙煎するとコーヒーのみずみずしい(若々しい)味わいに出会うことができる。
上に紹介したおいしいお店のコーヒー豆は老練で香りとコクが良い。
しかし、こちらの体調が整っていないと気圧(けお)されてしまう強さもある。
生豆は赤ちゃんから育てる初々しさがある。焙煎の度合いで成長を確認できる。濃くも淡くも焙煎次第である。
 
家庭でできる良い焙煎器はないかと物色していたとき、東急ハンズのチラシに下のような焙煎器の案内があった。
「いるいる」というシロモノ。¥3,000程度と記憶する。
セラミックスでできていて真ん中の穴に生豆を入れる。
取っ手はパイプ状になっていて煙がここから抜けていく。
熱源は家庭のガスコンロ。局部的に焦がさないように豆をこまめに手を使ってロースター(いるいる)を揺すり攪拌する。
焦げはじめには皮のはじける「ハゼ」が起きる。ポンポンと音を立てて爆ぜる。
ハゼて分離した皮を吹き飛ばしながら、好みの色に仕上げていく。
しばらくすると2回目の「ハゼ」が起きる。これが仕上げのタイミング。
この頃あいで煎ることを止める。この時間をこすと焙煎が深くなる。苦みとコクが深くなる。
このタイミングは、豆の種類と相談しながら決めていく。
好みの焙煎ができたら新聞紙などに豆を広げて素早く冷やす。
このとき豆は相当熱い。焼け石のように熱い。
十分冷え切ったら空気を遮断できる密閉容器にいれて保存する。
焙煎した豆は1週間以内に飲む事を奨める。
 
東急ハンズで買った焙煎器(ロースタ)
 ●コーヒーを挽く
焙煎した豆を挽く。電動ミルが楽で良いが、私は長年、下の写真の手動ミルを愛用している。
このミルで6人分の豆が挽ける。かなり重労働で、家の者は決してやろうとしない。
長男がおもしろ半分に小学校5年ぐらいまで手伝ってくれたが今は誰もやらない。手動ミルの豆挽きはストイックだ。
小さい頃おばあちゃんが石臼を使って、煎った大豆を挽いたり、煎った米を挽いていたことを思い出す。
小さかった自分もおもしろ半分に手伝ったことを思い出す。これに比べればどうってことない作業なのだが。
2020年では、3才の孫娘が興味を持ってジイジと一緒に豆を挽いてくれた。
ときどき蓋を開けて豆がミルの中に入っていく様子を興味深く見ながらハンドルを回してくれる。
3才の娘にとってハンドルを回すのはちょっと重労働なようで、介添えして一緒に回さないとすりつぶせない。
嫌々ながらハンドルをブン回して豆を挽くとおいしいコーヒーが出ない。
一説によると豆に過度の熱を帯びて味を損なうのだそうだ。
豆を挽く歯もすりつぶしよりもカッタの方が熱を帯びずに良いと言われている。果たしてどうだろうか。
コーヒー豆屋で大きなミルですりつぶしてもらった豆と、同じ豆をそのまま持って帰って自分で挽いた豆を飲み比べたことがあった。
豆屋で挽いた豆の方がうまかった。しかし、コーヒー豆屋で、一度にたくさん挽いてしまうと保存ができないので、その都度豆を挽いた方が良い。
ミルで挽くときは精神を安定させて念ずるように豆を挽く。ストイックだと思う。
昔より少しはうまくなったろうか?また挽き比べをしてみたいと思っている。
65才になった今(2021年4月)は、昔ほど億劫がらずに豆を挽くことができる。人間枯れて来たからなのだろうか。
豆の粗さは、一番粗い粗挽きで行っている。一番贅沢な挽き方である。
できるだけあっさりと、かつ、コクのあるコーヒーが自分の描いているコーヒーである。
何と言っても粗挽きが一番。細挽きにするとコーヒーが濃く抽出されやすい。
よほどうまいこと入れないと(抽出しないと)とてつもない濃いコーヒーになる。
1982年友人からプレゼントされた手回しミル
 ●コーヒーを入れる
挽いた豆でコーヒーを抽出する。
お湯は85〜90℃。お湯がシュンシュン踊るまで沸騰させ10秒で火を止める。火を止め、冬場で2分、夏場で3分ぐらいがこの温度。今は温度を一定に保てる。
水は浄水器を取り付けカルキ抜きをした水を使用。かって市販の天然水を使ったことがあったが味はあまり変わらなかった。
司馬遼太郎が、神戸の水は酒が造れるくらいうまいからコーヒーもおいしいと思ったら大間違いだと本に書いておられた。酒に適した水とコーヒーに適した水は違うようだ。
  
コーヒーを入れる湯は注ぎ口が命(左)。ペーパードリップに入れたコーヒー豆(右)。
 
 
コーヒーの蒸らしは一番緊張する瞬間だ。
これだけ緊張して湯量を調節して蒸らしを行うのだから、コーヒーメーカで簡単に抽出されてはたまらない。
糸を引くようにお湯を挽いた豆の上に注ぐ。
湯量は多すぎず少なすぎず。
豆が湯をかろうじて保持できるぐらいにゆっくりとしかも素早く(どっちだ!?)注ぐ。
待つこと30秒。
この待ち時間が以外と長い。
その後、おそるおそる糸のような湯を中央部に垂らす。
このとき良く蒸れていれば豆は泡(あぶく)のように泡だってふくれ上がる。
あとは中央部から周辺部へ「の」の字を書くようにゆっくりとしかも素早く(どっちだ!?)注ぐ。
一回目の抽出が終われば後は成り行きで必要量のコーヒーを抽出すればよい。
 
  お疲れさま!  おいしいコーヒーを召し上がれ。
  
最初の蒸らしには竹串を使って湯をゆっくり豆に落とす。
程良い蒸らしのための湯量調節が大切。
 
蒸れてくるとブクブク泡が立ってくる。
一回目の抽出は湯量を調節して絶えず蒸らしができるようにする。
蒸らしが終わった豆はゆっくりと湯を注いで抽出。
抽出が終わったコーヒー。豆がすり鉢状に窪む。
 
バッハコーヒーの田口氏の本に、次のようなコーヒーの入れ方に関するコメントがあったので紹介しておく。
 
コーヒーのおいしい入れ方10g/一人分
【入れ方】
苦み: 細挽き、高温90℃以上、抽出少なめ100cc以下、抽出スピード4-5分
苦みと酸味: 中挽き、中温82-83℃以上、抽出中100-150cc、抽出スピード3-4分
酸味: 粗挽き、低温75℃以下、抽出多170cc、抽出スピード2分
【器具】
エスプレッソ: 細挽き、高温、抽出少、抽出スピード速
ペーパードリップ: 中〜粗挽き、82-83℃、抽出中、抽出スピード中
布ドリップ: 粗挽き、低温、抽出少、抽出スピード遅
 ●コーヒー豆 ア・ラ・カルト (2004.10.11追記)
コーヒ豆の蘊蓄(うんちく)を垂れる。
実際の所、日本で買い求める豆の味はそれほど変わらない。
焙煎(ばいせん)や、豆の挽き方、コーヒーの入れ方、使用する水、豆の保存、飲む人の体調などの影響の方が大きい。
豆の回転が速く、安定した手順で入れてくれるコーヒー専門店で飲み比べないと、ホントの味はわからない。
一般的にストレートよりもブレンドの方がおいしい。
自分は、コーヒーにこだわっているような新しいお店に入るとまずブレンドを注文する。
これが一番お店の評価を出しやすい。
豆が最も回転していて新鮮であろうからだ。
ブレンドで店が主張する酸味、苦み、コクがわかる。
豆屋で豆を頼むときは、まず豆の色を見る。黒い色は、コクが出るが総じて苦い。茶色の豆は軽い。
自分は池袋の西武百貨店の地下食品売場「カフェ・ノ・バール」で10数年来豆を買っているが、最終的に「ジャーマン・ブレンド」、「マイルド・ブレンド」に落ち着いている。
いずれも軽めでほどほどにコクと苦みがある。
ちなみに、Cafe no Barで買ってきて入れたコーヒー豆の寸評を以下にまとめる。が私の舌に合ったコーヒー豆。
 
・ クリスタルマウンテイン : ●● 軽い味
・ ジャーマンブレンド :  こくのある味。 深い味
・ マイルドブレンド : ●● あっさり味
・ アメリカンブレンド :  軽い味
・ バロンドモカ:  スタンダード、苦み 甘み 酸っぱ味も適当
・ モカマタリゴールド: ●● 弱酸 こく中、さっぱり風、独特の味
・ ショコラターダ:  酸味と苦みのミックス、いれるのが難しい
・ フレンチロースト: 深焙り、豆を少な目に入れるか、多めに抽出する
          一般的に入れると苦い。蒸らしは簡単。砂糖は多め
 
●コーヒーのできる風土
コーヒーの木は、熱帯で栽培されるアカネ科の常緑木本。
北緯25度から南緯25度の間がコーヒーベルト地帯。
全生産量の70-80%がここで栽培されるアラビカ種の原産はエチオピア。
コーヒーは南北回帰線の熱帯地方の且つ海抜1000〜2000mの山岳地帯で栽培される。
高地といえどけっして霜害にあってはならない。
条件が同じならば高地であるほど良質の豆がとれる。
標高が高いほど、気温が低くなるのでゆっくりと時間をかけて実が熟するからだといわれている。
家でコーヒーの木で豆を作ろうとしてもこればかりはダメなようである。
ちなみにブラジルはコーヒー栽培が南限した1970年代に、大霜害に見舞われた。
コーヒー豆の残りの30%はロブスタ種でインスタントコーヒーの原料に使われる。 
 
 
  ●コーヒーショップ Joy オーナー 林氏からのメッセージ (2000.06.14)(2007.09.15追記)
倉敷でコーヒーショップを26年間続けておられる林氏から、このホームページを訪問された旨のメールをいただいた。
林氏は、自らホームページを開いておられ(http://joyhoken.hp.infoseek.co.jp/coffee.html)、コーヒーショップ ジョイというお店を31年間(2004.10現在)続けられている。
(2006.11に連絡いただき、現在は体調を崩され休養中とのこと)
 
氏からいただいたメッセージには、非常に多くの示唆に富んだ指摘やアドバイスがあったので紹介しておく。
 
●私(林亮之介)について
私は、倉敷市の鶴形で昭和48年から一日も休まず、ただコーヒーの味にこだわり続け、この六月十六日で27年目(1999年当時)を迎えるコーヒー専門ショップ「ジョイ」を営んでいる者です。
28歳から苦節27年、毎日毎日コーヒーと仲良く付き合ってきました。最近では、安藤さんもご存知の通り、健康にコーヒーが非常に良いということを、健康に関する書物にて毎日のように大々的に報道されるようになりました。私の方も、今現在コーヒーとその効能に付いて研究を続けており上手く行けば医学博士号を取り、今一度、コーヒーに日の目を見させてやりたいと思っています。
 
●お店のスタンス
京都にあるコーヒーショップの有名な『I』は、私のコーヒー店経営理念からすると正当では無いように感じます。
コーヒーというのは、通常の料理と違って最後の味付けはお客様にお任せしています。
『I』のようなお店のコーヒー提供のやり方(予め砂糖もミルクも入れて提供するやり方)だと、苦く入ったコーヒーには、少しミルクを多めに入れれば、そして酸味が出過ぎた場合は砂糖を少し増やせば、というように、お店の側でいとも簡単に修整が効くためお客様をごまかすようなことになりかねません。
『I』の提供の方法は、我々のようにコーヒーを通して真剣に生きている者にとっては納得行かない部分が残ります。
京都では、チキリ屋そして花房、ウインナーの築地でしたか、そんなところが心に残るコーヒー店です。
私も、安藤さんに負けない位、飲み歩いております。また、コーヒーに関しては譲れない部分もあり、26年の間に何百人のお客様と喧嘩をしてお店を出ていただいた経緯もあります。
そういう意味で、安藤さんと共鳴できる所があると信じて、今後とも永きにわたるお付き合いをお願いするところです。
 
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安藤記:林さんのホームページも訪問してみました。
林さんは、家系をお調べになるのがお詳しいようですね。
よくまあ、それだけ遡(さかのぼ)れるものだと感心します。欧米ではこうした家系を調べていくことが結構しずかなブームであるようで、私の知り合いのイギリス人も自分のルーツをこつこつ調べてました。
コーヒーの世界は味わい深いものがあると思います。
林さんに比べると、私などそんなにコーヒー店をわたり歩いているわけではなく、仕事の合間に寄ったお店でその雰囲気を楽しませていただいたり、おいしいコーヒーの入れ方を心と健康のバロメータにしているだけです。
今後ともコーヒーのいろいろな情報がありましたらホームページなどで紹介いただければうれしく思います。
今後ともよろしくお願いします。
 
●インスタントコーヒーのおいしい飲み方
安藤さんは、インスタントコーヒーをお飲みになりますか?もし飲まれる事があれば、以下のような方法でインスタントコーヒーの味を試してみて下さい。今までのインスタントコーヒーの味を一蹴するほどの味わいがあること請け合います。
普通のインスタントコーヒーは、カップに自分の好みの量のインスタントコーヒーを入れてその上から湯を注ぎます。
おいしい入れ方は、なべに一人前の水(お湯ではなく水)を入れて其の中にお好みのインスタントコーヒーを入れて暖めます。そして沸騰寸前に火を止めてコーヒーカップに移して飲んで見て下さい。コーヒーは、沸騰させてはいけません、沸騰寸前に火を止めて下さい。沸騰させてしまいますと、渋味が出てしまい、元に戻す為にやった事が台無しになってしまいます。お湯は、沸騰する前、寸前と言いましたが、目安として鍋の周りが煮立ってきた時に火から降ろして飲んでみて下さい、ぬるいようでしたら沸騰する直前までやってみて下さい。
基本的に、コーヒーを入れる際の一番重要なことは、
  コーヒーを入れるお湯の温度管理
です。これがコーヒーの味の99%を占めるといって過言ではありません。
コーヒーを入れる温度は、豆により、またはブレンド豆により違いますが、一般的に90度を超すと美味いコーヒーは作れません。
今一度、騙されたと思ってお試し下さい。
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安藤記:心こもったメールいただき感謝致します。
インスタントコーヒーも、近年はとてもおいしくいただけるようになりました。
我が家では、ネスカフェ プレジデントRich & Full bodied(ラベル:深緑)を愛飲してます。このコーヒーは価格が高いだけあって、下手なコーヒー豆よりおいしく飲めます。
インスタントコーヒーのおいしい入れ方を教わってから、いろいろ実験してみました。
結論からいいますと、粉をお湯で溶くだけでは粉っぽさが残り、鍋で沸かした方がまろやかになることが初めてわかりました。
粉っぽさを取り除いてお湯になじませるために沸かすという考えでよいのでしょうか。渋みをとるということでしたが、私は粉っぽさがなくなり、インスタントコーヒー独特のエグミ(風味、これを苦みというのでしょうか)がとれるような感じがしました。
ですから一気に沸かすと言うよりも粉とお湯をなじませるような頃合いで温度を上げていくやり方がいいんじゃないかと思いました。
このやり方でいれたインスタントコーヒーは結構うまいと感じました。新幹線の車中でポットからもらうコーヒーよりも格段においしく感じます。
 昔、息子たちにカフェ・オーレを作ってやるとき、鍋にミルクを入れインスタントコーヒーを入れて沸かしていたのですが、これが結構おいしかった。これはなぜだかドリップで入れたコーヒーを使って作るカフェ・オーレよりおいしいのです。
インスタントコーヒーは、粉が酸化しやすいので開封したらできるだけ速やかに飲むように心がけています。
 
●ドリップの仕方 (2000.06.14)
ドリップでコーヒーをタテル場合のやり方を説明します。
ドリップするお湯の温度は、コーヒー豆の種類により温度差はありますが、基本的には、前にも申したとうり90度を越えてはなりません。90℃以上になりますとどのような豆でもその豆の良い所が消えてしまいます。ちなみに、私の店のブレンドコーヒーの場合には、86度でドリップしております。
美味しいコーヒーを作る為には、一杯分の豆を惜しまず多目に使い、一気にドリップします。よくドリップは何度にも分けてお湯を注ぐ方法を紹介している人がいますが、二度三度に分けて注ぐとその度に温度が違いますから、同じ味のコーヒーが抽出されません。ですから蒸らしが終わった後は速やかにお湯を一気に注いでコーヒーを出します。
お湯の量は1.4Kg(1400cc)をわかします。コーヒーを抽出する際、200ccが豆に吸収されたりアクをとるために捨てますので、最終的に1200ccが抽出するコーヒーの量になります。
したがって、1人前120ccとなります。
ネルを使ったドリップする方法を、27年にわたり私なりにコーヒーと付き合ってきた体験をもとに説明いたします。
普通、ドリップするネルを中にして行いますが、私の場合ネルの方を外にして行います。
ドリップをする方法ですが、10人分をドリップする方法を説明します。10人分のコーヒーを抽出すためのコーヒー粉の量は、一般的に150gと言われていますが、ミルで挽いたロス分を考慮して180gを使います。、ミルに残ったコーヒー豆は使いません。捨てます。粉を受けるドリッパーをミルから離して、上に浮遊している微粉末は取り除きます。カレー用の大き目のスプーンを使ってドリッパーの周りに付いている微粉末を取り除きます。おいしいコーヒーをいれるためには不純物を取り除く必要があります。10人分のコーヒー豆は、したがって丁度150gになる計算です。
ネルでドリップする場合、約25秒間で一気に86度のお湯を注ぎます。温度は、前にも申し上げましたが、ブレンドによりそしてコーヒーにより異なりますが、少なくとも、90度を越えるとそのコーヒーの持つ特性を失ってしまいますのでくれぐれも注意を。
お湯は90度くらいまで沸かして86度になるまで冷まします
決して沸騰させないことがポイントです
コーヒーと言うものは、インスタントにしても、ペーパードリップにしても、そして片ネルのドリップにしても基本的に大事なことは、
 
   1. 水の量
   2. 豆の鮮度
   3. 一番大事な温度
 
の3つです。これらの選択によりコーヒー豆の持つ酸味また苦みを活かしもし殺しもします。
ペーパードリップでコーヒーを入れる場合一番に気を付けなければならない事は、先ずペーパーをセットしたら熱湯などでまんべんなくドリップペーパーを浸し、ペーパーの持つ紙の臭いを消します、そして、ミルで挽いた粉を入れ90度以下のお湯で少し蒸らします。その際、下に降りたコーヒーは捨てます、そして予め決めた温度(90℃以下)で一気にお湯を注ぎます。一気に入れるわけですから一人前に対し15gぐらいは、惜しまず使って頂きたいと思います。
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安藤記:たびたび、いろいろなご指摘をいただきとても感謝しています。
今朝、土曜日、長男と一緒に、林さんのご指摘通りにコーヒーをドリップしてみました。
林さんの入れ方は、私にとって初めての入れ方だったのですが、ホントにアラ不思議、とてもあっさりと風味も程良く入れることができました。
目からウロコのようなコーヒーの入れ方でした。味わいは、サイフォンで入れたような味わいがありました。
私の今までのやり方ですと、蒸らしも長い時間とり、お湯のそそぎかたもゆっくり注ぐのでかなり濃い目のコーヒーが出てしまい、豆の素材が相当しっかりしていないと良質のコクのあるコーヒが出ないことがわかりました。
8時30分に飲んだコーヒーがとてもうまくて、もう一杯と10時頃また教えてもらったやり方で入れて飲みました。
ネルドリップだと、ペーパードリップと違いもう少し濃いめに出るのかも知れませんね。
私は、コーヒー豆をとても大事に入れすぎていた感じがあり、こうしたダイナミックな入れ方でも、温度と豆さえ鮮度があれば素材そのものの良さでうまく出るものだと感心しました。
ペーパもお湯で洗うことも結構効果があるようでした。
こうしたやり方ですと、豆を少し多めに入れて一気にいいとこだけ取り出すということになりそうですね。
水は、東京の上水道を浄水器にかけて入れているのですが、何かいい水はあるのでしょうか。
インスタントコーヒーは、ペットボトルの天然水を使った方がおいしくいただけました。
 
●水について
倉敷は、非常に水の美味しい所で、コーヒーを入れるのに水で苦労する事は、有りません。東京、大阪、四国などは、水の事も考慮に入れないと、美味しくコーヒーを入れることができませんね。浄水機やミネラルを使用することもいいでしょうが、市水を利用する場合は、面倒でも一度、冷凍庫の氷をためて、自然解凍してその水でコーヒーを入れてみて下さい。水道水に含まれる不純物やカルキ等は、氷になりませんから美味しい水が作れると思います。
 
●砂糖について
コーヒー豆、そしてドリップするお湯の温度は、コーヒーをおいしく飲むための大切な事柄です。それに加えコーヒーを飲む時に使われる、グラニュウ糖も隠れた名脇役です。安藤さんはどこのメーカーの砂糖をお使いですか?スプーン印とか色々なメーカーが出まわっていますが、私が試した経験から申しますと、マルハ株式会社のパールエース印(元の大洋魚業)が一番適しています。琥珀色の砂糖には不純物が含まれている為、コーヒーに入れて混ぜると薄いシロッポイ膜が出来ると思います。まそれが琥珀色の砂糖に含まれているアク(不純物)です。
ザラメの砂糖は甘すぎて調整が難しいと思います。
純度の高い砂糖をご所望されるのでしたら、時間が掛かりますが氷砂糖を粉のように砕いて使うことをお奨めします。これは純度100%です。
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安藤記:グラニュー糖は、漂白した味がそぐわなくて、ザラメ状のような四角い粒の白砂糖をコーヒー豆屋で買ってきます。メーカーは、スプーン印(三井製糖)のクリスタルシュガーです。また、漂白のしてない茶色い小粒の砂糖も買ってきて併せて飲んでいます。氷砂糖が一番適しているというのはうなずける話しですね。今度、氷砂糖を買って試して見たいと思います。
 
●フレッシュミルクについて
コーヒーを美味しく飲む為には、生クリームにもこだわらなくては美味しく飲む事は出来ません、少なくとも、乳脂肪が44%セント以上の生クリームを使って頂きたいと思います、スジャータ等の植物性脂肪のフレッシュミルク(新幹線等でコーヒーを注文するとついてくる小さなカップの生クリーム)は、コーヒーの中に入れても表面に浮かぶだけでおいしく味わうにはほど遠いものです。
乳脂肪44%以上の生クリームコーヒーに入れてみて下さい、スーパーででも買い求められます。我々の仲間やお客さんでは、これをバクダンと言っています。コーヒーに入れると、比重が違う為いったんカップの底まで落ちてバクダンのようにあがってきます、それで我々はバクダンと言います。
うちの店では、現在、雪印のコーヒーフレッシュ、乳脂肪分44%と無脂乳固形分4%を使っています。これは、近くのスーパーでも200gで売っているはずです。
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安藤記:爆弾とは面白い表現ですね。そういえば喫茶店でフレッシュを入れるとドンと底まで落ちて、それからスーッと浮かび上がってきますよね。私はこれをかき回さずに飲むのが好きです。コーヒーそのものの風味と、フレッシュとコーヒーが交わった味わいの2つを味わうことができるものですから。
我が家では、フレッシュを使っていないので、ご指摘のフレッシュを買い求めて試してみたいと思います。
 
●コーヒーメーカとコーヒー豆
市販の家電メーカーから販売しているコーヒーメーカーは、温度の設定が93度以上にされていますので、コーヒーメーカーを利用される方には、私の店ではコーヒー豆をお売りいたしておりません。それから、コーヒー豆をうちの店で買い求めて帰られる方には、ペーパーかもしくはネルを使ったドリップで入れられるのかをお聞きしてメッシュを決めてお売りしています。
 「家にある手動式のミルで挽くから豆だけ売って下さい」と言う人にはお断りしています、なぜかと言うと手動式のミルでは豆に熱が加わり、折角の豆に悪影響を及ぼすからです。
コーヒー豆を買い求められる場合には行きつけのお店で、業務用のミルで挽いてもらって、冷凍庫に保存するのが一番良いやり方だと思います。冷蔵庫ですと湿気がありますが、冷凍庫では湿気がありませんからシリカゲル等を使って湿気取りに気を使う事も必要がありません。
一度に買い求める量としては、200gが限度だと思います。
 
 
●アイスコーヒー
アイスコーヒー(10人分)の作り方は、
サーバーに、上白糖を110gを入れ、ホットコーヒーで行うドリップと同じ要領でお湯を注ぎます。アイスの場合は、後で氷を入れますからその分量を差し引いたお湯でドリップします。豆の分量はホットと同じで、一気にお湯を注ぎます。そしてドリップし終わったら、ゆっくりと混ぜて、氷420gをサーバーに入れ泡が立たないょうにゆっくりと混ぜます、そうすると、香りの残った美味しいアイスコーヒーが出来ます。
ホットコーヒーの場合も同じことが言えますが、入れたては、水臭くそしてコクの無い軽い物になります。アイスコーヒーを作る場合、できあがったコーヒーは少なくとも一晩は寝かしてコクが出てから飲んで頂きたいと思います、そして上手く入れたコーヒーは、一週間でも冷蔵庫に保存しておいても味が変わる事無くおいしく飲む事が出来ます。
 
 

 
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