光増幅光学装置(ILS = Intensified Lens System(2000.07.17)

イメージインテンシファイア(Image Intesifier)

目次

ILSの特徴
ILSの応用例
ILSの仕様
より詳しくILSを知りたい人のために
 

●ILSの特徴

 
新世代大口径高解像力イメージインテンシファイア  モデルILS3
高速度カメラKodak(現Roper MASD)1000HRCに取り付けたILS3
 
●クラス最高の大口径イメージインテンシファイア →φ40mm
 一般に使用されている高速度カメラのイメージインテンシファイア(Image Intensifier = I.I.)は光電面及び蛍光面の口径がφ18mmもしくは25mmが一般的でした。ILSにはφ40mmというクラス最高の大口径I.I.を使用しています。大口径I.I.の製造は難しく、特に、高速度カメラ用では露光が短時間であるため出力側の蛍光面輝度を明るくしななければなりません。一般にI.I.の蛍光面輝度は暗く、高速度カメラでの使用は不可能でした。そのため高速度カメラ用I.I.には、蛍光面輝度を上げるため、I.I.を4段直結にして、かつ限られた時間内に定格以上の電圧をかけて強制的に輝度を上げたり(Hadland社Cinemax)、第四世代の近接型MCPゲートI.I.にイメージブースターと呼ぶ第一世代のI.I.を接続して蛍光面輝度を満足させていました(浜松ホトニクス社、フォトロン社Ultima UV、ナックGIB)。Imco社(現Hadland社)のILS.は1ヶのI.I.でこれらの問題をすべて解決し、高輝度、大口径を満足させました。シンプルな構成により信頼性も高く、解像力・コントラストも向上しました。
●クラス最高の高画質
ILSの解像力は蛍光面上で21 lp/mm(1mm当たり21本の白黒ペア)あり、画素換算で1,680画素に相当します。高速度カメラでは、この画素数に相当するものはないので、I.I.による画質の低下を最小限に抑えることができます。これまでのゲートI.I.は、蛍光面が17.5mmで解像力が23 lp/mm、画素換算で805画素相当(実際には2つのI.I.を組み合わせるので総合解像力は560画素程度)でした。従来のI.I.とILSを比べると、面積比で4.4倍(組み合わせ解像力では9倍)の情報量を持つことになります。ILSは、高速度カメラのみならず一般のCCDカメラ、Nikon35mmスティルカメラ、Kodak DCSデジタルカメラ、高精細CCDカメラ(SensiCam)に接続できるため新しい応用分野が広がります。
●クラス最高の高感度
 ILSは、1つのI.I.で驚異的な光増幅と蛍光面輝度を可能にします。この新しい技術によりI.I.一つでブースタ機能を持たせる事が可能となりました。
 ILSの感度実験を高速度カメラ「ウルトラナック」を用いて行いました。
 被写体に400ルクス(スティルカメラの露出計でF2.8、1/60秒、ASA400)の照明を当てて、ウルトラナックにILSを装着して撮影を行いました。この照明でレンズ絞りF1.8、フィルムポラロイド667(ASA3000)、露出時間30nsの設定で適正露光を得ました。この時のILSゲインは90%でした。次にILSを外し、同じ被写体、同じレンズで露出時間300usにて適正露光を得ました。これよりILSは、最大10,000倍の光増幅を持つことを確認しました。(注意:これはILS2と呼ばれるウルトラナック専用のモデルを使用しました。)
●クラス最高の繰り返し周波数
 ILSは、外部の信号を5MHz(5,000,000コマ/秒相当)まで受けつけます。また、トリガ信号により、装置内部で63パルスまでの多重露光を設定することができます。この機能は、たとえば、一般のCCDカメラや、Kodak DCSデジタルカメラを使って多重露光を行うことができます。露出時間は20nsから165msまで10ns単位で任意に設定でき、パルス間隔も40nsから10msまで10nsで設定できます。ただし、この多重露光の設定は、1シークエンス165ms以上を超えることはできません。
レーザシートを用いた多重露光、ゴルフボール、弾丸などのストロボ効果撮影が可能となります。
●ほとんどの高速度カメラとの接続可能
ILSが接続できるカメラは以下の通りです。
-ILS-1:Fマウント、イメージサークルφ43mm
Nikon35mmスティルカメラ、Imco cooledCCDカメラICS42(2,000x2,000画素16ビット)、Kodak DCS、Cordin351、318、Photosonics35-4ML
-ILS-2:Fマウント、イメージサークルφ18mm
ウルトラナック、PCO DiCAM-2
-ILS-3/18:Cマウント、イメージサークルφ18mm
 Kodak(現Roper MASD) HS4540、ナック E-10、Photosonics 1PL/1B、STALEX WS3、PCO DiCAM-2
-ILS-3/11:Cマウント、イメージサークルφ11mm
 ナック HSV-1000/500、ナック MEMRECAM Ci、Kodak (現Roper MASD)EM、一般CCDカメラ
-ILS-4:高精細CCDカメラファイバカプリング
1,152画素x770画素、光ファイバ通信により、DOS/Vコンピュータに画像転送
●市販のビデオカメラ、デジタルカメラ(Kodak DCS)、35mmスティルカメラと接続可能
ILSは、高速度カメラのみならず、高解像力、大口径の特徴を生かして、一般の映像装置との接続が可能です。他のイメージインテンシファイアに比べ情報力が多く、また、操作性も高いので多目的に使用することができます。
●使いやすい操作環境
ILSは、CPUが内蔵されていて、全ての操作機能を装置単体で行うことができます。他のI.I.に見られるようなタイミングパルスジェネレータ、同期装置の必要がありません。その他撮影に関する取り扱いの簡便さを以下に述べます。
・過大入力光プロテクト機能
 装置に内蔵されたCPUは、I.I.の大敵である過大入力光を絶えず監視してます。正確には、蛍光面に到達する電流を検知し、定格以上に流れた場合、MCPの電圧を自動的に下げます。MCPの電圧は「ゲイン」と呼ばれるものでこの電圧設定で光増幅度が変わります。ゲインは予め0%から100%までデジタル設定できます。入力光が明るすぎる場合、装置の液晶パネルに警告表示が出、最適な「ゲイン」値にセットしその値を表示できます。この警告機能は、μ秒オーダの過大入力に対しても機能するので、応用によっては、プロテクト機能が邪魔な場合もあります。このような場合、プロテクト機能を解除する設定も可能です。 
・パルスジェネレータ不要
装置内部には、パルス巾を設定する回路をはじめ、多重露光のパルス数、インターバル時間を10ns単位で設定できます。また、高速度カメラとの同期撮影では、200ns以内で装置のトリガリセットが完了するため、最大5,000,000コマ/秒の同期撮影が可能です。
・広範囲なトリガ入力環境
外部トリガは、2系統のBNCコネクタより受けつけることができます。一つは、通常のトリガ信号で、TTL、アナログ5V、メイクコンタクト、ブレークなどほとんどのトリガ信号を受けつけます。もう一つのトリガ信号は、「Video」と書かれたBNC端子入力で、これに通常のビデオ信号を入れると装置が自動的にビデオ信号の垂直同期信号を分離・見知し、撮影コマに同期したタイミングでゲートをかけることができます。 
・容易なセッテイング
ILSに内蔵されているCPUが全ての制御を行い、ユーザとは、装置側面に配置された液晶ディスプレーと操作ボタンでタイミング、トリガ設定を行うことができます。また、RS232C回線も装備されていて、一般のパソコンからデータを転送することができます。転送には市販の転送プログラム(Windowsのハイパーターミナル、PC-DOSのP-Com、C-Term)などが使えます。また、コンピュータをターミナルモードにしても通信可能です。
・広範囲な電源
ILSの駆動には、いろいろな電源を使うことができます。一般的な商用電源は、AC80Vから264Vまで使用可能なため商用電源の電圧をまったく気にせず使用することができます。消費電力も50Wと低く、装置内部に単三乾電池9本を格納できるスペースがあり、これを使えば電源が使えない場所でも使用可能です。自動車バッテリ(12VDC)からの電源も使用することができ、「AUX」ソケットから入力できます。このほか、110 - 330VDCでの駆動も可能です。
 

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●ILSの応用例

光増幅光学装置の応用例を以下に示します。
 
【ブルーフレーム(青炎燃焼)】
最近の環境対策の一環として、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン燃焼研究では、希薄燃焼が盛んです。燃焼火炎はブルーフレームと呼ばれる青色の炎で、高速度カメラでは微弱光なため撮影が非常に困難なものの一つです。今までは、18mm口径のI.I.をCCDカメラの前部に接着したシャッタカメラ(ICCDカメラ)や、25mm口径のI.I.を高速度カメラにレンズ接続した組み合わせが用いられてきました。今後この研究分野は、分光分析、紫外光の検出、LIF(Laser Induced Fluorecence)、ラマン分光などますます微弱な光を扱う研究手法に向かうだけにILSのような大口径・高解像力I.I.の需要が高いと考えられます。
【UV燃焼反応】
燃焼の初期反応は、OHラジカルと呼ばれるλ=308nm近辺の微弱な紫外光を放射します。この紫外光を検出することにより、燃焼反応の初期(どの部分から燃焼が始まったか)を判断することができます。放射光が紫外光であるため、I.I.以外に可視化できる装置がありません。また、NOを検出するにはさらに短い紫外光(λ=246nm)の検出が必要で、この領域に感度を持ち感度の高いイメージインテンシファイアが望まれます。また、I.I.のゲインを挙げてもS/N性能が良いILSの性能が期待されています。
【流れの可視化】
エンジン研究でインテークマニホールド(吸気管)から空気と燃料がシリンダ内に吸入される様子や排ガスのマフラー内での流れの可視化をはじめとして、自動車フロントガラスデフロスタの空気の流れ、車体回りの空気の流れなど自動車関連の流れの可視化研究をはじめ、騒音、ビル風、冷暖房機器など多くの分野で流れを可視化する撮影法が採用されています。これらの多くはライトシートと呼ばれる光の薄いシートを投射して流れの断面を可視化します。また、ブラックライト(紫外蛍光ランプ)で蛍光を発するタフト(気流子)を照射し蛍光発色したタフトをカメラに収めています。一般のCCDカメラでは比較的十分な明るさであっても、短時間露光をする高速度カメラでは暗くなるためI.I.が必要になります。
【レーザライトシート】
ライトシートをレーザで作る方法で、ヘリウムネオン(赤色)、アルゴンイオン(青緑)、銅蒸気レーザ(緑・黄緑)、エキシマ(パルス紫外)、YAG(パルス緑)レーザでシート光学系を使って薄膜光を作ります。乱流域の流れは、複雑な動きをするため、光をシート状にして流れの断層面を浮かび上がらせ、2次元的にとらえることができます。高速度カメラと組み合わせて撮影する場合、高輝度レーザが必要です。また、できるだけ明るく撮影するため反射輝度の高いトレーサを使う必要があります。反射輝度を上げるにはある程度トレーサの粒子径を大きくする必要があり、大きくするとトレーサが流れに追随しなくなります。銅蒸気レーザは輝度が高く高周波発振が可能なため高速度カメラとの組み合わせで良く使われています。ヘリウムネオンレーザ、アルゴンイオンレーザを使う場合は輝度が低いため、高速度カメラにI.I.を組み合わせて可視化を行います。従来は、I.I.の解像力が低いため計測に十分な情報を得ることが困難でした。ILSの開発により廉価なレーザでも流れの可視化撮影・解析が十分に行えると考えます。
【短時間露光撮影】
ILSのシャッタリングは最小20nsとこれまでのI.I.のゲート時間より短い露出時間を得ることができます。また、ILS装置には多重露光機能があり、20MHz程度の内部発振モードでのシャッタリングが可能なため、運動の速い被写体をストロボ撮影のように多重露光することができます。これは、クセノンストロボ(4発、1us、1MHz)、AOM(音響光学素子)を使った連続レーザ(ヘリウムネオン、アルゴンイオン、100ns、5MHz)、銅蒸気レーザ(30ns、30KHz)よりもはるかに高速のシャッタリングを可能にしています。35mmスティルカメラ、デジタルカメラ、Kodak(現Roper MASD) HRCのような高解像力カメラと組み合わせて多重露光、短時間露光撮影をすれば、情報量の多い画像データを得ることができます。
【高速飛翔体】
ILS-4は、この目的のために開発されました。この分野ではこの種のカメラのことをレンジカメラと呼び、秒速500m〜2Kmで飛翔する物体の飛翔姿勢、速度を高速シャッタリングによって撮影します。露出時間は、100ns〜50ns程度が必要です。弾丸などの飛翔体は2 - 300mの長さにわたって撮影するので、ILS-4を飛翔経路に沿って10-20セット程度配置し次々とシャッタリングを切って撮影を行います。
ILSは4種類あります。上の写真は、モデルILS4。
φ40mm口径のI.I.に1152x770画素のCCD素子が密着接続されています。
画像データは光ファイバーにより数Km離れた計測地まで転送することができます。
 
 
【顕微鏡撮影】
顕微鏡下では、光量が絶対的に不足し、良好な高速度撮影ができません。特に落射照明では光量が不足し光増幅装置が必要不可欠です。ILSは、現状のI.I.に比べ、解像力が高いので良い結果が出ると期待されています。1997年7夏には、カルシウムイオンの検出として高速度共焦点レーザ顕微鏡と組み合わせてネズミの心臓の筋肉細胞運動の可視化に成功しました。ILSは重さが約10L程度あるので顕微鏡の取り付けにはしっかりと支える架台を装備する必要があります。
【望遠撮影・ファイバスコープ撮影】
500m〜数Km以上離れた遠距離で飛翔するミサイルの姿勢を撮影する場合、通常の撮影では、光量と短時間露光に問題があります。この二つを両立させるにはI.I.が有効です。機械の狭い部分をファイバスコープを使って撮影する場合も光量に問題が起きます。こんな撮影にもILSは威力を発揮します。
【プラズマ反応】
プラズマ発光は比較的高輝度自発光現象ですが、研究対象はこれを分光したり、プラズマの初期発光の微弱光であったり短時間発光であったりで、I.I.の活躍の場が期待されます。
【分光画像】
特定の波長に着目して発光現象を画像計測するには、希望する波長を透過させる干渉フィルタを装着したり、分光器を介して分散した光を取り込む手法が行われています。干渉フィルタも、分光器も分光効率が低く非常に微弱です。これまでの研究では、高感度のフォトマルティプライア(点計測)、cooledCCDカメラでの計測、I.I.内蔵のCCDカメラの使用が一般的でしたが、大口径・高解像力のILSの開発で新しい計測が可能になりました。
 

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●ILSの仕様

【イメージインテンシファイア部】
・タイプ: マイクロチャンネルプレート(MCP)内蔵型イメージインテンシファイア
・光学窓: 入力窓 サファイア
 出力窓 ファイバ処理
・口径: 入力φ40mm
     出力φ40mm
・光電面: S20/S25いずれか指定
・マイクロチャンネルプレート:1段もしくは2段(MCP)
・波長感度: S20 λ=180nm〜700nm
       S25 λ=350nm〜850nm
・蛍光面: P46/P24/P20いずれか指定
・蛍光面残像: P46→1%減衰時間 約1μ秒
        P24→1%減衰時間 約10μ秒
・光増幅ゲイン: 10,000倍(max)
・過大入力光保護回路:  有り
    蛍光面電流を常時モニタ。最大電流値検出しゲインを自動制御。
    「自動制御」解除も可能。
 【シャッタリング部】
・ゲート時間: 20nsからDC(連続)10ns単位の設定可能
・多重露光(外部のトリガ信号より装置内部で複数発のゲート時間を発生):
    最大63パルスまで設定可能、設定ゲート時間最小20ns、インターバル最小40ns
・内部発振によるインターバル時間:
    最小40nsから10msまで10ns単位。
       1シークエンス時間最大165msもしくは63パルスまで可能。
・フォーカス調整: DCモード
・作動停止(Inhibit)機能: TTL信号を「AUX」に入力することにより全ての動作が停止。
   復帰は、再度TTL信号を入力。
   TTL信号は立ち上がり、立ち下がりどちらかを装置内部で選択
・トリガー信号入力: 以下の5種類のトリガ信号が入力可能、BNC端子
   1. TTL信号(立ち上がり、立ち下がり)
   2. 5V(立ち上がり、立ち下がり)
   3. メイクコンタクト(無電圧接点信号ON)
   4. ブレークコンタクト(無電圧接点信号OFF)
   5. ビデオ信号同期信号自動検出
   注)1〜2の信号は200nsで自動リセット
・トリガ信号出力: 装置から外部へトリガ出力可能
   -出力数:4チャンネル
   -設定:プログラム設定(10ns単位)
   -出力:TTL50Ω、BNC端子
・制御:
   -装置側面の液晶パネルと選択ボタンで操作設定可能
   -RS232C通信ケーブルと市販の通信ソフト(P-com、C-Term)
   もしくはターミナルモードでの通信設定可能
・内蔵メモリ:
   装置内部に、ユーザが設定した操作手順を格納しておけるメモリ領域が5つあり、
   ユーザが呼び出してセッティングすることが可能。
 【寸法・環境】
・寸法: 約247(±6)mm(L)×120mm(W)×193mm(H)、
    但しカメラレンズは除く
・重量: 約10L
・電源: 以下の電源が使用可能
    1. 80〜264VAC、50VA、50/60Hz
    2. 110〜330VDC
    3. 内蔵単三乾電池 9本、充電式バッテリ使用可能
    4. 「AUX」ソケットより + 9V〜15V(12Ω)のバッテリ電源接続
・環境:
   操作環境 - 0℃〜40℃、90%RH
   保管環境 - -5℃〜50℃、90%RH
・取り付けネジ: カメラ三脚取り付け用1/4インチネジ穴
 
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●より詳しくILSを知りたい人のために 

【高速度カメラとイメージインテンシファイア(Image Intensifier=I.I.)との関わり】
先の「応用例」でも述べたように、高速度カメラと光増幅光学装置との組み合わせ応用例は多く、私自身も20年来イメージインテンシファイアと高速度カメラを組み合わせた微弱光撮影でいろいろな試みを行ってきました。イメージインテンシファイアと高速度カメラの組み合わせの歴史的な試みをこの項で述べてみたいと思います。
 
【大型飛翔体の望遠撮影(屋外)】
今も昔もイメージインテンシファイアが高価であることは変わりはありません。1970年代初め、高速度カメラにI.I.を取り付けるた最初の試みがフランスの軍研究所で行われました(これは、我々が知り得ている情報のみでアメリカでも極秘にもっと以前にこのような応用をしていたのかも知れません)。開発目的はミサイル開発で、ミサイルの飛行姿勢を捉えるのにf12,500mm、F44の超望遠レンズをロータリプリズム式高速度フィルムカメラに取り付け、これに光増幅と短時間露光の2機能を満足させるため近接型I.I.をロータリプリズムの前に置いて9,000コマ/秒で撮影できる装置開発が行われました。当時の電子技術ではI.I.でシャッタリングする技術が確立しておらず、軍研究所はMCP(マイクロチャンネルプレート、電子増幅素子)を200Vでスイッチングする基礎実験をし可能性を示唆したのみに止まりました。高圧スイッチングが安定して出力されたかどうかは手元にある資料ではわかりません。また、このシステムが完成したかも極秘研究のためわかっていません。明るさを稼ぐためI.I.に際どい電圧をかけていたものと思われます。我々も、1970年代後半に、この報告に基づき同じ方法による高速度カメラシステムの検討を行いましたが、市販のI.I.ではこれを満足するものがなく、中座してしまいました。
【リーンバーンエンジン燃焼】
1970年代後半にガソリンエンジンメーカでリーンバーンエンジンの研究が盛んに行われました。この研究は一時下火になり、1990年代になって再び活発になりました。その1970年代後半、大手自動車メーカ研究所の研究員が大変熱心にブルーフレーム希薄燃焼の可視化研究をしておられ、この研究員と共にシステム開発のためいろいろな検討を行いました。国内外のありとあらゆるイメージインテンシファイアを検討し、高速度カメラに適用できるかの検討をおこないました。しかし、当時の入手できる技術では、DCモードで駆動する近接I.I.しかなく、この装置では、500コマ/秒での撮影が限界でした。
【X線撮影】
●ロールスロイスのジェットエンジン内部のブレード破壊実験
1975年、ロールスロイスはジェットエンジン内部を可視化するためX線装置にI.I.を組み付け、これをリレー光学系を用いて16mmロータリプリズム式高速度カメラとつなげました。このシステムで、10,000コマ/秒の撮影に成功しました。この時、彼らは、初めてI.I.をパルス駆動する方式を実用化し、このためのI.I.のパルス駆動回路を開発しました。1975年彼らは既に、パルス駆動の考えを導入し、効率よくI.I.の輝度を高めて成功しました。しかし、この論文はチャンピオンデータとも呼べるべきもので、I.I.をかなり酷使した使い方のようでした。その後、高速度カメラ用として市販で入手できるパルスI.I.装置はしばらく現れず、1980年代後半のHadland社の「Cinemax」まで待たなくてはなりませんでした。しかしながらこの試みは近接型I.I.をパルス駆動して発光効率を高め、10,000コマ/秒までの撮影を可能にしたその方向性は高く評価されるべきものでした。
●日本原子力研究所の熱流動実験
1980年代前半の日本は、依然パルス発振のイメージインテンシファイアの供給がなく、X線応用でも連続X線と連続モードのイメージインテンシファイアが使用されました。この研究では、日本で初めてのI.I.を使った2,000コマ/秒撮影が行われました。I.I.の残像もI.I.の特性もよく分からないまま、強引にカメラを回し、フィルムを限界まで増感して「何とか写った」出来事でした。
●大阪大学溶接工学研究所の電子ビーム溶接の金属内部の溶接現象
電子ビーム溶接は、溶接金属の深い所まで溶融できる特徴があります。電子ビーム溶接をX線を通して溶接の内部の挙動を高速度撮影したのが溶接工学研究所の荒田先生でした。実際の撮影を担当された阿部先生は、当時パルスX線の開発に意欲的でいろいろなトライアルを試みられていました。しかし当時の技術では実現が難しくX線イメージャに高速度カメラを接続して300コマ/秒での撮影が行われました。「もう一桁撮影速度がほしかった」とは、当時を振り返っての先生のコメントです。このフィルムは大変貴重なもので、溶接学会で賞を受賞したそうです。
●砲弾のマズル出口の弾丸姿勢
砲弾がマズル(砲口)から飛び出る姿勢は、弾道研究をされる研究者にとって最も興味ある所です。砲弾を高速度カメラでとらえるとき、マズルから煙が先に出てしまい砲弾を覆い隠してしまいます。したがって、煙の中の砲弾を捕らえるためX線を利用してマズル出口での姿勢の可視化撮影を行っています。100,000コマ/秒〜500,000コマ/秒が必要なこの試験には、適当なI.I.とX装置が無かったので単発フラッシュX線を何台も設置し、これに一枚取りのシートフィルムを装填してマルチ撮影を行っています。この分野は古くから高性能I.I.の要求が高いところですが、満足のいく装置開発に長い年月がかかっています。欧米の軍事研究部門では、1980年代後半に100万コマ/秒のX線I.I.システムを稼働させていた報告があります。
【電子顕微鏡撮影】
電子顕微鏡は、光学顕微鏡よりもはるかに倍率の高い視野を得ることができ、走査型顕微鏡ではピントの合う範囲が広いクリアな像を得ることができます。その反面、供試体を真空チャンバーに入れなければならないとか、走査型は供試体の表面をテレビカメラのようにスキャニング(走査)する関係上高速度撮影には向かないデメリットがありました。また、像は電子像を蛍光板に当てて可視像を再撮するため高速度撮影では明るさが足らない欠点もありました。1980年代の終わりに大阪大学物理学教室の電子顕微鏡を用いて、金属原子の転移を200コマ/秒の高速度ビデオと連続モードのイメージインテンシファイアを用いて撮影する試みを行いました。この時は、ビデオの解像力、I.I.の解像力、記録時間(メモリループ方式でないために、一日に一度起きるか起きないかの現象と捕らえにくかった)などの問題が提起されました。
【生物顕微鏡撮影】
生物分野での高速度カメラは、微生物のメカニズム(べん毛運動、せん毛運動、精子の運動など)の比較的速い動きのものに使われます。生き物相手であるため、熱、光には細心の注意が払われ、イメージインテンシファイアの要求が高いところでもあります。しかしながら、1インチのI.I.では、せん毛のような細かい被写体を解像するには不十分でした。高解像力、高コントラストの光増幅装置の開発が待たれていた分野です。
 

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