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 更新日時:2008年 11月 9日 日曜日 - 10:03 PM
光と光の記録 --- 記録編 (2008.11.05更新) 
 
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項 目
 
■ 光の記録
■ 光を電子に換える材質
  【光と電子の関係 - 最初の発見者 ヘルツ】
■ 光電子(Photoelectron)
  ▲ 光電面(光陰極、Photo Cathode)
■ シリコン(silicon) - 現代の光産業・電子産業の主役
 
■ 光電効果(Photoelectric Effect)
▲ 光電子放出効果(Photoelectron Effect)
▲ 光導電効果(Photoconductive Effect)
▲ 光起電力効果(Photovoltaic Effect)
 
■ 光の記録原理 その1 --- 1次元記録
光を検知するフォトチューブ、
フォトダイオード、フォトマルチプライア
について説明します。
 
■ フォトチューブ(光電管 = Photoelectric Tube)
■ フォトマル(光電子増倍管 = Photo Multiplier)
   ▲ スーパーカミオカンデ
■ フォトダイオード(Photo Diode)
 
■ 光の記録原理 その2 --- 2次元記録 (ビデオ装置)
最近主流になっているビデオカメラについて、
CCD、CMOS
などの特徴を説明します。
 
■ 撮像素子 --- CCD(Charge Coupled Device)素子
■ CCD素子の歴史
■ CCD素子のキーワード
■ CCD撮像素子の種類
   ・フルフレームトランスファ型CCD
   ・フレームトランスファ型CCD
   ・インターライントランスファ型CCD
   ・フレームインターライントランスファ型CCD
      - スミア(smear)
      - ブルーミング(blooming)
      - VOD(Vertical Overflow Drain)
   ・プログレッシブスキャン型CCD(全画素読み出しCCD)
 
■ CCD撮像素子の撮像、転送原理
   ・インターライントランスファー型CCDのシャッタ機能
   ・フレーム蓄積とフィールド蓄積
   ・画素ずらし
   ・3板CCD素子(3CCD)
   ・カラーフィルタ方式CCD素子
   モアレと光学ローパスフィルタ
   ・三層カラーCMOS素子(Foveon X3 CMOS)
   ・QE(Quantum Efficiency、量子効率)
   ・ショットノイズ(shot noise)、フォトンノイズ(photon noise)
   ・ビンニング(Binning)
 
■ 計測CCDカメラの先駆 - VIDEK社
■ 高解像力CCDカメラ(Megaplus)
■ 高速度カメラ用CCD素子(Kodak 16ch 読み出し素子)
 
■ 撮像素子 --- CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)素子
■ CMOS素子とCCD素子
■ 電子シャッタ内蔵CMOS撮像素子
 
■ 一時代を築いた撮像管
■ 撮像管の原理
■ 代表的な撮像管 - ビジコン(Vidicon)管
■ 撮像管の大きさ
■ 撮像管の種類
  ● ビジコン(Vidicon)
  ● プランビコン(Plumbicon)
  ● カルニコン(Chalnicon)
  ● サチコン(Saticon)
  ● SEC(Secondary Electron Conduction Tube)
  ● ハーピコン(HARPICON)(HARP撮像素子)
■ 電子管によるその他の撮像素子
  ● イメージコンバータ管(Image Converter Tube、転像管)
  ● X線イメージャー(X-ray Imager)
  ● イメージインテンシファイア(Image Intensifier)
  ● 電子顕微鏡(Electron MicroScope)
  ● フライング・スポット・スキャナー(Flying Spot Scanner、FSS)
 
■ 画像信号を記録する 
  
■ アナログビデオ信号 - NTSC(National Television Standards Committee)
   ・インターレース(interlace、飛び越し走査)
   ・NTSCの画面
   ・29.97フレーム/秒の怪
   ・アスペクト比4:3
   ・NTSC規格のカラー情報
   ・NTSC規格の水平解像力
   ・S-VHSビデオの解像力
   ・ビデオ信号のダイナミックレンジ
   ・デジタルビデオ信号
 
■ デジタル映像信号 (Digital Video Signal)
    最初のデジタル画像
    VGA規格(Video Graphics Array)
    デジタル放送(Digital Broadcasting)
 
■ 画像の転送
   ・NTSCビデオ信号
   ・RCAコネクタ/ケーブル
   ・BNCコネクタ/ケーブル、映像出力インピーダンス(75Ω)ケーブル
   ・RS23C
   ・セントロニクス(Centronics)
   ・GP-IB(General Purpose Interface Bus)
   ・DMA(Direct Memory Access)転送
   ・VME(Versa Module Eurocard)バス転送
   ・SCSI(Small Computer System Interface)転送
   ・IDE(Integrated Drive Electronics)転送/ATA規格
   ・イーサネット = Ethernet
   ・FireWire = IEEE1394、i.Link
   ・USB(Universal Serial Bus)
   ・D端子
   ・HDMI(High-Definition Multimedia Interface)
   ・LVDS(Low Voltage Differentila Signaling)
   ・カメラリンク(CameraLink)
   ・PoCL(Power over CameraLink)
 
 
■ 画像の保存(静止画像)
   ・アナログ記録
      - NTSC
      - ハイビジョン
   ・TIFF(Tagged Image File Format)
   ・BMP-DIB(Bit Map File / Device Independent Bitmap)
   ・PICT(QuickDraw Picture Format)
   ・GIF(Graphics Interchange Format)
   ・JPEG(Joint Photographic Experts Group)
   ・PNG(Portable Network Graphics)
   ・Exif(Exvhangeable Image File)
   ・DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)
   ・EPS、ai(Encapsulated Post Script)
      - ポストスクリプト
 
■ 画像の保存(動画像)
   ・AVI(Audio Video Interleaved Format)
   ・WMV
   ・QuickTime
   ・Motion JPEG
   ・MPEG
   ・DV-AVI
   ・DV
   ・DVD-Video
   ・デジタル放送規格
 
■ 画像(電子画像)の記録媒体
   【磁気テープ】
     ▲ 米国AMPEX社
     ▲ MT(Magnetic Tape)
     ▲ DV規格とメタルテープ
   【フロッピーディスク(FDD = Floppy Disk Drive)】
   【ハードディスクドライブ(HDD)】
   【光磁気ディスク(Magneto - Optical Disk = MO
   【CD(Compact Disc)】
   【DVD】
   【フラッシュメモリ】
 
 
■ 光の記録原理 その3 --- 2次元記録 (フィルム装置)
画像記録の原点である銀塩感光材料のフィルムについて説明します。
 
■ フィルムは銀を使っている
■ カラーフィルム
  【3原色感度層】
■ フィルム乳剤の種類
■ フィルムのタイプ
■ 35mmライカサイズカメラ
■ 小型カートリッジフィルム
■ インスタント写真
■ 映画用フィルム
■ 小型簡易白黒現像機
■ フィルムの解像力
 
 
■ 光の記録原理 その4 --- 光増幅光学装置 (イメージインテンシファイア)
微弱な光を検出する高感度光学装置について説明します。
 
 
 
 
■ 光の記録
 
光の記録体系表(希望する項目にカーソルを当てるとリンク先にジャンプします)
 
 
 
 
 
■ 光を電子に換える材質 (2006.11.04)(2007.11.18追記)
 光と電子との関わりがわかるようになったのは20世紀の初めでした。 今でも多くの人は、光と電子とは直積的な関係などない全く別のもの、というイメージを持っていることと思います。
 電気は恐いけど、光に関しては寛容です。
そうした性質の違う両者は、実はかなり深い関係があることがわかって来ました。
性質の全く異なる両者は、実は仲が良いのです。
光と電気、いや電子は、実は密接な関係があて、原子レベルでは電子と光は絶えずエネルギーの授受を行っています。電子が放出するエネルギーが光を含めた電磁波であり、電磁波からのエネルギーを受けて電子は運動します。
熱も赤外域の電磁波です。物質は熱によって分子レベルで運動が活発になり固体から液体、気体に変わります。分子が活発に運動する中で自らも熱を発します。金属などは、固体から液体に変わると大量の熱と一緒に光も放出します。
これらはすべて分子、原子の運動に伴って電子が放出する電磁波なのです。
 結論を述べると、光(電磁波)の記録は電子の助けなしにはあり得ないのです。
 
 
 
【光と電子の関係 - 最初の発見者 ヘルツ】
光と電気、いや、電子は密接な関係があり、原子レベルでは電子と光は互いに絶えずエネルギーを受け取りあっています。
 1887年、ドイツのヘルツ(Heinrich Rudolf Herz: 1857 - 1894)は、イギリス人(スコットランド人)のマクスウェルによって数式で導きだされた電磁波理論の追試を行っているとき、放電電極に紫外線を当てると放電が起きやすくなることを発見しました。ヘルツは、電磁波の実験になぜ光(紫外線)を使ったのでしょう。彼は、追試実験で放電ギャップを使って放電を起こし、それを15メートル離れた位置にコイルで作った受信器を置いて放電観察を行っていました。そのときに、たまたまその発見をしたのです。彼は放電を肉眼で確認していたので、弱い光だと受信したかどうかわからないために強い受信信号が欲しくていろいろな工夫を施し、その一環として光の照射(特に紫外線)を行ったというわけです。最初彼は、受信部の放電を見やすくするために受信部を暗箱で覆って観察を行っていました。そうしたところ、受信部の放電発光は見やすくなるどころか、とたんに何も見えなくなってしまいました。そこで暗箱のパネルを一つづつ外して行って、見やすい最適な配置を見つけて行きました。そして、観測窓を送信側に設けると他に配置したときよりも受信部での放電がおきやすくなることがわかりました。また、観測窓に通常のガラス材を用いると放電がにわかに鈍るのに対して、石英窓にするとかなりはっきりと放電が認められるようになり、距離を15mに離しても放電が認められたのです。彼は、このようにして、放電発光に関して何らかの光が関与していると考え、プリズムを使って受信部に特定波長の光を与えていったところ、紫外線が強い放電を促す効果があることをつき止めたのです。
 
 
 ヘルツ自身は空中を伝わる電気現象の解明に集中していたため、彼が発見した光と電子による現象を深く掘り下げることはしませんでした。それに、ヘルツはこの現象を発見した7年後、36才の若さで敗血病のため他界してしまいます。当時、「電子」という概念はありませんでした。
 ヘルツの発見の翌年の1888年、同国の物理学者ハルヴァックス(Wilhelm Ludwig Franz Hallwachs:1859 - 1922、ヘルツの門下生)は、光と電気に関する研究を別の実験で検証し、照射する光は短い波長であればあるほどこの傾向が強いことを再度確認しました。ハルヴァックスは、亜鉛板に紫外光を照射させ、この板を負に帯電させた検電器と接触させると検電器内の電荷が急速に無くなってしまうことを確認しました。また亜鉛に紫外線を照射させていないとき、検電器の挙動は緩慢であり逆に検電器を正に帯電させておくと開いた金箔は閉じることはありませんでした。
 
 
 
 
 さらに、20年後の1902年、同国のフィリップ・レーナルト(Philipp Eduard Anton von Lenard:1862 - 1947:ヘルツの弟子、1905年ノーベル物理学賞受賞)によって、陰極線(=電子線)と光に関するさらなる興味深い研究成果が得られました。レーナルトは、特殊な電子管をあつらえて、陰極に強力な炭素アークランプを照射し、それによって流れる電気の度合いを調べたのです。また炭素アークランプにプリズムを装着して任意の光を取り出すようにし、光と電気の流れる関係を調べました。その結果、興味ある両者の関係を導きだすことができました。その関係とは以下に述べるものです。
 
  ・ 光によって電気が流れるためには、最小の印加電圧(バッテリの電圧)が必要であった。
    この電圧以下ではどんなに強い光を与えても電気は流れない。
  ・ 電気が流れる条件の光では、照射する光量を2倍にすると流れる電気は2倍になった。
  ・ すべての光によって電気は流れるわけではなく、波長が短い光ほど容易に電気を流すことができた。
    赤色の光は、どんなにたくさんの光量を与えても電気を流すことができなかった。
 
 この現象は、当時の物理学では解き明かすことができない大きな問題でしたが、1905年にドイツの物理学者アインシュタイン(Einstein、1921年ノーベル物理学賞受賞)が両者(光と電子)の関係を説明し、光が粒子(光子 = )からなるというドイツの物理学者プランク(Planck)の光量子仮説を裏付ける結果を導きだしました。
 これら光量子説の構築において、レントゲン(Wilhelm Konrad Roentgen、1845-1923)が1895年に発見したX線は多大なるヒントを彼らに与えました。光の振る舞いをする電子に近い性質を持った電磁波(X線)は、光と電子を結びつける量子物理学の道を開いたと言っても過言ではありません。
今でこそ、
 
    「光は電磁波であり、電波のマイクロ波、赤外線、紫外線、X線と連綿と続く一連の波長の範囲の一部である」
 
と、極めて理解の良い説明が与えられているのですが、当時はその概念はなく、光は電磁波であると唱えたマクスウェル理論の追試を行っている途上にありました。その途上に電子線が現れ、放射線が現れたのです。
これら諸物性をどう説明するか。それが当時の大きな問題であったのです。
 レントゲンがX線を発見した当時、「電子」という明確な概念はありませんでした。レントゲンが高電圧発生装置で強い電子線を使って不思議な放射線(X線)を発見したにも関わらず、電子線は電子からできていることを理解していなかったのです。
 電子は、X線の発見の2年後、1897年に英国人物理学者J・Jトムソン(Sir Joseph John Thomson:1856 - 1940:1906年ノーベル物理学賞受賞)によって解明されます。
 
 
■ 光電子(Photoelectron)
 光の働きによって個体から放出される電子や、個体内部で励起したり移動する電子を光電子と呼びます。
光エネルギーによって電子が励起したり、放出する現象を光電効果と呼んでいますが、最初に発見された光電効果は、光を金属に当てると金属表面にある電子が遊離する現象でした。
遊離した電子は、電場があれば引き出されて正極に向かいます。この関係を端的に表したものが以下に示す数式です。
 
     Ep = 1240/λ [eV]  ・・・(Rec -1)
        Ep: 光子エネルギー(eV)
            eVは、エレクトロンボルトと読み、電子を真空中で1Vの
            電位差で加速したときの電子が得るエネルギー量を示す。
              1 eV = 1.6 x 10 -19 (J)
        1240: hc( = プランク定数と光速の積)を1eVで割った定数。
        λ: 光の波長(nm)
 
 上の関係は、電子と光を論ずる時に重要な関係式です。ある波長λ(nm)の光は、Epという電子換算エネルギー(eV、エレクトロンボルト)を持っていて、この電位差がないと光は放出されないことを示しています。発光ダイオードを作るときにもこの関係式は重要で、半導体素子のエネルギーギャップをこの理論エネルギー以上にしないと発光しないことを示しています。
例えば、赤色(650nm)LEDであれば1.9V以上が必要であり、青色(420nm)LEDであれば2.9V以上の電位差が必要となります。
短い波長ほどエネルギーが高いことがわかります。
 
 
▲ 光電面(光陰極、Photo Cathode)
 光電効果は、量子エネルギーが高い光が金属に当たると電気を放出する働きを言います。この作用を効率よく作用させる部位を光電面と言い、光 → 電気に変換させる重要なものとなります。光電面には、従来、銀(Ag)やセレン(Se)、セシウム(Cs)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、テルル(Te)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などの金属や、硫化カドミウム(CdS)、一酸化鉛(PbO)、セレン化カドミウム(CdCe)、三硫化アンチモン(Sb2S3)、ガリウムヒ素(GaAs)などの化合物が使われてきました。これらの材料は、光に対して反応が良いものです。光電面材料は、量子エネルギーの低い赤色から赤外に反応して電子を放出する素材が求められ開発が続けられてきました。
 本来、物質はすべて光に反応します。しかし、電子として取り出せる材料には限りがあります。光電効果に対して効率よい物質を求めてきたのが光電面開発の歴史です。光電装置の最初の装置は、セレンを使った光電管でした。
 最近では、シリコンが従来の高価な金属に変わって使われだしています。フォトダイオードは、ほとんどの場合シリコンで作られていますし、CCDカメラの撮像素子もシリコンでできています。シリコンはなぜ光に反応するのでしょうか。
 
 
 
■ シリコン(silicon) - 現代の光産業・電子産業の主役
 シリコンが光に対して敏感であることがわかったのは、70年ほど前(1940年)のことです。金属が光に対して反応し、電気を発生することはシリコンを使った発見よりもさらに70年も前の1873年、イギリスの電信会社に勤めていた技術者スミス(Willoughby Smith: 1828 - 1891)によって発見されます。そのときの金属がセレン(Se、Selenium)でした。
 そもそもシリコンは、電気を通すなどということすらもわかっていなかったのです。それが、トランジスタの発明を契機として、シリコンの素姓が徹底的に調べつくされ、現在では半導体電子機器部品の主役にまで上り詰めました。
 
▲ シリコン - 光反応の発見
 シリコンが光に反応することを突き止めたのは、ベル電話機研究所のRussel Ohl(1898 - 1987)とJack Scaff(1908〜)でした。1940年のことです。彼らは、トランジスタを発明した同じベル電話機研究所のショックレー、ブラッテン、バーデンらよりも先に半導体の組成の研究をしていた研究者です。
 1939年8月、第二次世界大戦の勃発直前、ベル電話機研究所のラッセル・オール(Russel S. Ohl)は、高純度のシリコンを作る研究を同じ研究所の金属研究者であるジャック・スカッフ(Jack Scaff)に依頼しました。彼は、融けたシリコンを使って部分的に高純度化する方法を採用します。これは、ゾーン・リファイニング(帯溶融精製)として知られる技術で、戦後(1952年)、ベル電話機研究所のプファン(William G. Pfann)によって確立される手法でした。 彼らの技術革新によって、シリコンが半導体の寵児となっていきました。
 1940年のある日、ラッセル・オールは数ある試験鉱石の中の一つである直径0.3mm、長さ25mmの細いシリコン棒におもしろい現象があることに気づきました。シリコン棒に光が当たると電気が起きたのです。彼がこれに気づいたのは、電気スタンドとシリコン棒の間に扇風機が回っていて、扇風機のゆっくりした動きに合わせて電気スタンドから照射される光がシリコン棒に遮られ、シリコン棒に接続した電流計が扇風機の動きに合わせて動き出したためでした。シリコンに影ができると針は下がり、光が当たると針が大きく振れました。
 これが、シリコンが光に反応して電気を起こす現象の最初の科学的発見でした。しかしながら、この発見はシリコンの光の起電力という観点よりも(シリコンで発電できるという発見よりも)、半導体のP型とN型構造によって電気が流れるという発見の方が関心が大きく、これを契機にトランジスタの発明につながって行きました。
 現代にあっては、半導体素子と言えばシリコンですが、トランジスタが発明された当初、半導体と言えばゲルマニウムが主流でした。ラッセル・オールらが基礎研究をおこない、P型N型の半導体発見の口火を切ったシリコンであったのに、初期のトランジスタではゲルマニウムに主役の座を譲ってしまいました。その理由は、当時、シリコンの精錬が難しくゲルマニウムのほうが結晶として得やすかったからです。シリコンが脚光をあびるようになったのは、シリコン単結晶の製造法(ゾーン・リファイニング)が確立された背景要因がまず一つあげられます。さらにもっと大きな要因は、シリコン素子の高集積化の確立からです。シリコンは簡単に酸化皮膜を作ることができ、酸化皮膜は電気を通しません。酸化皮膜をミクロン単位の線巾で描くことができるようになり、シリコン基板上に精緻な回路を作ることができるようになりました。小さな面積に10個、100個、1,000個という具合にトランジスタを描き作ることができるようになったのです。これが集積回路(Integrated Circuit、IC)の発展につながり、CPUの発明を促し、CCDの発明につながっていきました。ゲルマニウムではICが作れなかったのです。
 
▲ シリコン - 物性
 シリコンそのものについては、「AnfoWorld 別館 奇天烈エレキテル シリコンって何物?」「同 半導体物質」を参照下さい。
 シリコンの純粋な結晶は、ガラスやダイヤモンドと同じように絶縁体であり、電気を通すことがありません。結晶構造がしっかりしているので電子を捕縛したり遊離することができないのです。
しかし結晶の中に異種の元素を入れてやると、その部分に原子結合の歪みが生じます。
原子の中のあるもの(ガリウム、ホウ素、インジウムなど)は、電子の手が3本しかないので、シリコン結晶中に入ると4本の手の内3本までが握手できるのに1本は空いてしまい電子を欲しがるものになります(ホール素子、P型半導体)。また、別のあるもの(ヒ素、リン、アンチモンなど)は、電子の手が5本あってシリコンの4本の手とすべて握手しても1本あまってしまい、電子を持ったままぶらぶらさせることになります。電子を与えやすいキャリア素子、N型半導体となります。
そうしたシリコン原子と電気的な結合がわずかに違う原子をシリコン結晶中にわずかに打ち込んでやると、絶縁シリコン結晶から半導体結晶ができあがります。
これが、P型(電子を欲しがる)半導体と、N型(電子を持っている)半導体となります。
初期の半導体は、P型とN型の二種類の半導体を別々に作ってこれを接触させてダイオードやトランジスタを作っていました。その後、一つの半導体結晶にP型とN型を作り込む接合型半導体ができました。
こうした半導体製造はとても高度な技術が要求されます。基盤となるシリコンは、99.999999999%(イレブン・ナイン)の精度で精錬し結晶を作らなくてはなりません。その結晶板を使って、その中に不純物(価電子の違う金属)をドーピングし、N型もしくはP型半導体を作ります。CCDのフォトダイオードもこのようにして作られます。
 
 
 
 
 
■ 光電効果(Photoelectric Effect) (2007.04.09)(2007.12.25追記)
 
 光と電子の相互関係を示す光電効果は、以下のような分類ができます。
 
 
▲ 光電子放出効果(Photoelectron Effect)
 この性質は、歴史的に比較的早くから現象としてわかっていたもので、光子の概念を構築する発端となったものです。
 この効果は、端的に言うと光に反応する物質に光を照射させると電子が遊離して表面から飛び出すというものです。光電管(真空管)はこの原理を利用しています。また、暗視カメラに使うイメージインテンシファイアや、高感度光検出素子であるフォトマルチプライア(photo multiplier)にもこの原理が使われています。
 
 
▲ 光導電効果(Photoconductive Effect)
 この性質は、端的に言うと、光を光に反応する物質に照射すると抵抗値が変わって電気を通しやすくするというものです。
 このような物質を光導電体といいます。光導電体は半導体か絶縁体に限られ、金属単体ではこうした性質を持ちません。
 代表的なものは可視光域では、シリコン、酸化鉛(PbO)、セレン化カドミウム(CdSe)、無晶形セレン(Se)、硫化カドミウム(CdS)などがあります。
 光導電効果を持つ材料は、撮像管の光電面として使われました。
 
 
▲ 光起電力効果(Photovoltaic Effect)
 この性質は、言ってみれば太陽電池のようなものです。光を受けると電気を発するというものです。
 太陽電池といえばシリコンが有名です。ですから、シリコンがこの性質を最も顕著に持っていると言って良いでしょう。
 シリコンの他に光起電力を起こすものとして、ゲルマニウム(Ge)や硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、インジウムヒ素(InAs)、
 インジウムアンチモン(InSb)、水銀カドミウムテルル(HgCdTe)、鉛錫テルル(PbSnTe)があります。
 ただし、シリコン以外の物質は赤外域に感度を持っていて、可視光には感度がありません。
 
 
 
 
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■ 光の記録原理 その1 - - - 1次元記録 (1998.01)(2006.11.19追記)
 
 光を定量化する測定機器を考えて見ましょう。
光を検知する材料としては、セシウム、ナトリウム、カリウム、などのアルカリ金属があり、銀なども光に良く反応し、ガリウム、ヒ素、テルライド、シリコンなどの半導体も光に反応する性質を持ちます。
これらの素材は、アインシュタインの発見した光電効果で説明のつくものであり、量子エネルギーの小さな可視域(赤色)や赤外域まで感度を持たせた複合材料も開発されています。
ここでは主に可視光域について感度のある検出装置について特徴を述べます。
 
 
 
■ フォトチューブ(光電管 = Photoelectric Tube)
 フォトチューブ(光電管)は、光電効果を利用した最もシンプルな光検出素子です。銀、セシウム、ガリウム、ナトリウム、テルル、ヒ素などの光に反応して電子を放出しやすい材質(これを光電素子と呼ぶ)を真空状態のチューブ(真空管 = 電子管、Electron Tube)の中に入れて、これを陰極とします。陽極(プラス極)と光電面である陰極(光陰極、photo cathode)の間に、ある電圧を加えると光が当たった強さに比例して光電子が放出され、プラス電極に向かって電流が流れるようになります。この電流により、回路に組み込まれた抵抗間(出力抵抗RL)で電圧(E)が発生します。 (右図参照)
 フォトチューブは、映画フィルム端に光学的に記録された音声信号を取り出す際のエキサイターランプとしての応用が代表的なものでした。通常のフォトチューブは、印加電圧が 5 〜 30V程度で 1:100 程度のダイナミックレンジ(光の強さの度合)を持ちます。
 印加電圧を高くすれば電子が加速されやすく応答性がよくなります。2,000V程度まで印加できるフォトチューブがバイプラナ光電管(biplanar photo tube)として市販されています。こうしたフォトチューブは、印加電圧が高いので応答がよく10ps程度の性能を持っています。高速応答性のチューブは、パルスレーザの発光時間を測定するのに使われています。
 光電管に使われている光電面の発達が撮像管(Imaging Tube)の発展を促しました。撮像管とは、ビジコンとかサチコンなどと呼ばれているCCD固体撮像素子ができる前に活躍していたテレビ(ビデオ)カメラの眼のことです。
 
 
■ フォトマル(光電子増倍管 = Photo Multiplier)
 フォトマルチプライア(フォトマル = photo-electric multiplier、 光電子増倍管)は、光電面から放出された電子を二次電子放出する電極に衝突させ、これを何回も繰り返して、ねずみ算的に2次電子を放出させる真空管です。2次電子放出電極は、通常10段程度あり−1,000〜−2,000Vに印加された光電面から100〜200Vの電圧間隔で電極が配置されています。その結果、光電子増幅度は1,000,000以上に達し、非常に感度の良い光検出素子ができあがります。
 2次電子を受ける陽極は、バイアス抵抗を挟んで接地(グランド)されているため、出力(E)はバイアス抵抗間に流れる光電子で起電される負極性の電圧となります。バイアス抵抗を低くとっているため出力インピーダンスが低く、たくさんの電流を要求する測定器でも十分に流すことが可能です。
 光の応答は、2次電子電極を用いている関係上フォトチューブより悪く1ナノ秒程度となります。またフォトマルの受光部(光電面)の大きさによっても応答速度が変わり、大きなものでは4ナノ秒の応答となります。
 フォトマルは、非常に感度が良いので、微弱な光の検出や、分光器の射出口に取り付けて分光分析などに使われています。小柴昌俊東京大学名誉教授(ノーベル物理学賞受賞)の研究で有名になった神岡鉱山跡に設置されたカミオカンデのニュートリノ検出器にも大口径のフォトマルチプライアが使われています。このフォトマルは、口径が500mm以上もあり、大きな光電面で非常に微弱な光を検出しています。光増幅は1000万倍と言われています。
 
 
▲ スーパーカミオカンデ(Super-Kamiokande、Super-K)
 フォトマルの使われている代表的な事例を紹介します。
小柴昌俊東京大学名誉教授(ノーベル物理学賞受賞)の研究で有名になったスーパーカミオカンデに使われているニュートリノ検出器には、大口径のフォトマルチプライアが使われています。(モデルR3600。設計製造は、浜松ホトニクス株式会社)
 このフォトマルは、口径が500mm以上で重量が約8kgもある大きなエチゼンクラゲのような形をしたガラス真空管でできています。形状が大きいのは、大きな光電面で非常に微弱な光を検出するためです。その光増幅率は1000万倍と言われています。1000万倍の光増幅を達成するためにフォトマルにかけられる電圧は最大2,500Vとなっています。
 光電面は、350nm〜650nm(ピーク感度波長は420nm、量子効率20%)の感度を持っていて、チェレンコフ光の青白い微弱な光を検出するために青色域に感度を持たせています。その材質は、バイアルカリ(Sb-K-Cs)で作られ、1700cm2(直径46cmの円状)の大きな光電面で受ける微弱光は、11段の増幅段(ダイノード)を経て2次電子を作り出し最大100uAの電流を取り出すことができます。
 光の反応は10nsで応答し、光がフォトマルに入って電気信号として取り出すまでの遅れは95nsです。また、短いパルス光に関しては、5.5nsまでのパルス光を検出できます(Transit Time Spread [FWHM])。
 スーパーカミオカンデは、岐阜県の神岡町(岐阜県飛騨市神岡町池の山)の鉱山跡地に1995年に建設されたニュートリノを検出する巨大水槽と計測装置からなる設備です。初代の設備は1983年に建設されたカミオカンデですが、スーパーカミオカンデの完成によってその役目を終えています。スーパーカミオカンデは、地下1000mに直径39.3m、高さ41.4mの円筒型水槽が埋設されて、ここに50,000トンの純水が満たされています。この水槽は、さらに内側と外側の2重構造となっていて、内側水槽(直径36.2m、高さ33.8m、容積32,000m3)はステンレス構造体で作られ11,146本の20インチフォトマルが全水槽を覆うように配置されています(上面・下面各1,748個、側面7,650個)。外側水槽には、8インチ口径1,885個のフォトマルが内側水槽との仕切壁側に外向きに取り付けられています。
 これらのフォトマルは、宇宙から飛来するニュートリノが巨大水槽に入って減速する際に発光する青白い光(チェレンコフ光)を検出します。チェレンコフ光が非常に微弱であるのと、巨大水槽内で発光する光の空間位置と時系列を把握するために11,000本の巨大フォトマル(20インチ)を配置してチェレンコフ光の発生をマッピングしています。8インチのフォトマルを外側に配置しているのは装置のバックグランド光を取り除くためです。
 
 
 
 
■ フォトダイオード(Photo Diode)
 最近脚光を浴びてきている光反応素子として、シリコンフォトダイオードがあります。これは、いままで述べてきた真空管(Electron Tube)と違い半導体構造であるため、以下の特徴をもっています。
 
フォトダイオード(参考)。形状はいろいろなタイプがある。写真は左部の開口部の円形状がフォトダイオード部。右端子がBNCになっていて使いやすい。
1. 小型
2. 堅牢
3. 安価
4. 高電圧電源不要
5. 過大な光に対して強い
 
反面、以下の欠点を持っています。
 
a. 反応速度が遅い
b. 光増幅率が低い
c. ノイズが出やすい
 
 フォトダイオードは、安価で取り扱いが簡単なことから光検出素子としてあらゆる分野で使われだしてきています。シリコンは、光に対して鋭敏で光を電子に変換することができます。シリコンフォトダイオードは半導体ですから、光(時には熱)に反応して起電した電荷があふれると順方向に流れるようになります。しかし、ダイオード(半導体接合面)のしきい値を越える電荷( = 光)を蓄えない限り何の反応も起こさないので、極めてレスポンス( = 応答)の悪い素子になってしまいます。そこでフォトダイオードに順方向とは逆の電圧をかけておくと、ダイオードの電気的しきい値が低くなり、ちょっとした電気変動( = 光変化)でも電流が流れるようになります。バイアス電圧は5〜30V程度で、シリコンフォトダイオードの種類によって異なります。点接触タイプのPINフォトダイオードやアバランシェタイプはバイアス電圧を高くセットします。応答速度は、通常1マイクロ秒程度で、PINフォトタイプでサブマイクロ秒、アバランシェタイプでナノ秒です。いずれにしても、ダイオードとグランド間に接続された抵抗値により光応答性能と電圧出力が決まり、抵抗が高いものほど出力電圧が高くなる反面、レスポンスが遅くなります。ダイナミックレンジは、比較的広く 1:10,000 程度あります。
 フォトダイオードは当初、カメラの露出を決める露出計や照度計等に用いられてきました。半導体発光素子(発光ダイオード、LED)の発達と共に、発光ダイオードの光を検出して電気的なスイッチを行うフォトカプラー、フォトアイソレータという電子素子が開発され、電子機器に組み込まれて電気ノイズの遮断に威力を発揮しています。また、光通信分野においてもレーザ光を受信して電気信号に変換する装置にフォトダイオードが使われています。
 フォトダイオードの応用で最も興味深いのが、CCDカメラを代表とする撮像素子です。CCD撮像素子は、実はフォトダイオードの集合体なのです。画素の中心部はフォトダイオードでできていて、レンズによって集光する光を電気信号に変換する働きを持っています。CCDCMOSについてはのちほど詳しく述べます。
 
 
項目
フォトチューブ
フォトマル
フォトダイオード
光電素子
銀、セシウムなどアルカリ金属
50uA/lm
100uA/lm
シリコン
150uA/lm
使用電圧
100V〜300V
高い
1,000V〜2,000V
非常に高い
5V〜30VDC
低い
感度
中庸
最も高い
1,000,000倍程度
相対的に低い
応答速度
最も速い
ピコ秒
速い
ナノ秒
相対的に遅い
マイクロ秒
ノイズ
少ない
(真空管の利点)
中庸
(増幅ノイズの影響)
相対的に多い
(固体素子の宿命)
ダイナミックレンジ
1:100
1:1,000
1:100,000
(リニアリティがある)
その他特徴
・真空管
・高い電圧は使用しない
・応答速度速い
・別途電源必要
・真空管
・高い印加電圧使用
・感度が非常に高い
・強い光や衝撃に弱い。
 - 取り扱いに注意が必要。
・半導体
・低い電圧で使用
・感度も応答速度も遅い
・使い勝手が良い
光電素子の性能表 (この性能表は、傾向を示すための表です)
 
 
 
 


 
 
 
■ 光の記録原理 その2 - - - 2次元記録(ビデオ装置)  (2008.01.02追記)
 前項で述べたシリコンフォトダイオードを、とんぼの複眼のようにカメラ結像面に配置し、カメラレンズによって結像された光学濃淡像をテレビ信号として取り出すものが固体撮像素子CCDカメラです。テレビ技術は、比較的新しい技術ながら驚異的な速度で技術革新がなされて来ました。最近のビデオカメラやテレビカメラというと、CCDカメラが代名詞のようになっていますがCCDカメラができる前までは真空管を使ったカメラが主流でした。画像を見る受像器も真空管(ブラウン管、CRT = Cathode Ray Tube)が一般的でした。
 フィルム(銀塩画像)による2次元画像については項を改めるとして、電気信号処理による2次元画像は、
 
  1875年に端を発し(米国George R. CareyによるTelectroscopeの発明に始まります)、
  1931年に電子撮像素子(米国Farnsworthによるイメージディセクタ管)が完成し、
  1941年代に米国でテレビ放送規格(NTSC)が決まって大きな礎ができました。
 
 電子画像は、今となっては主流となっているものの、1830年終わりに発明された銀塩画像に比べてその足取りは遅く、1990年頃まではテレビ放送という形での発展に重点が置かれて写真のように個人が扱うまでには長い道のりがかかりました。電子画像は、画質が悪いけれど即時性があるため、テレビ放送などの分野に特化していたのです。
 電子カメラがフィルムカメラや映画カメラを凌ぐようになったのは2000年を越えてからでした。1981年に試作品として出品されたソニーのマビカ(Mavica)の品質は、銀塩フィルムに比べてお粗末なものでした(570x490画素、2インチ2HDフロッピーディスクにFM変調アナログ録画、アナログビデオ再生)。しかし、固体撮像素子の向上と記録媒体(CD、DVD、HDD、メモリスティック)の低価格化、再生装置(パーソナルコンピュータ)の高性能、低価格化によって、今は銀塩フィルムを凌駕するほどにデジタル画像は進歩しました。電子画像は、電子技術の成熟発展を待たねばならなかったようです。
 
 
 
 
▲ 2000年までの動画映像(Legacy video output) (2006.11.05)
 画像はとてもたくさんの情報を持っていて、これを記録したり転送したりするためにはこれらの大量データを高速で処理する機器が必要です。デジタル処理は、データの細分化とそれにともなう高速処理の戦いでした。デジタルは、アナログの持つ周波数以上にならないとそれを凌駕できないという宿命を持っています。動画像は、1955年に出発したテレビの送受信の画質と再生速度(NTSCビデオ規格)が一つの指針となっていました。デジタル画像は、テレビの画質と速度を凌駕しない限り普及できなかったのです。
 静止画像においては、銀塩のフィルム画像が一つの指針でした。キャビネサイズに引き延ばされたフィルム画像と、インクジェットプリンタでプリントされた写真を見比べて、遜色がなくなった時点でデジタル画像がアナログ画像に勝ったと言えました。2006年11月時点では、デジタル動画もデジタル静止画もあまねくアナログ画像を凌駕しました。2000x2000画素の静止画像や、1000x800画素で30コマ/秒の動画像はアナログ画像を凌ぐ画質を持っています。
 
 
▲ 映像は撮像面で一度にとらえるが、読み出しは1本の信号線から出力する(Serial video Signal)
 テレビ放送や家庭用のビデオカメラに使われている一般のアナログ映像信号の読み出しは次のようになっています。つまり、カメラレンズで結像された像は、カメラ内部の読み取り回路によって、左上から右下に順次なぞるような形で映像信号に置き変わります。従って、映像信号は一本の連綿と続くアナログ信号となります。実は、この連綿と続く1系統の信号であることが映像を電送する場合のキーポイントであり、放送電波として信号を送ることのできる原点だったのです。一連の巻き取り糸のような映像電気信号は、映像の記録(VTRの発明)にも便利でした。
 映像信号(NTSC規格のビデオ信号)は、0V〜1Vのアナログ信号であり、0V〜0.3Vは同期信号に割り当てられ、0.3V〜1.0Vを映像信号にあてています。暗い被写体は低い電圧であり、明るい被写体は1Vに近くになります。(ただし、最近の高画素デジタル素子や高速度撮像素子は1本の読み出し口から読み出すと速度が上がらないために複数の読み出し口から情報を取り出しているものもあります。)デジタル信号は、0V〜1.0Vの映像信号を8ビット濃度(256階調、カラーではRGB各8ビットで24ビット)に割り当てられました。
 NTSCビデオ信号については、別の項でも詳しく触れます。
 
 
 
 

 
 
 
▲ 撮像素子 - - -CCD(Charge Coupled Device)素子 (2004.10.24)(2007.12.23追記)
 
■ CCDの仲間
 CCD固体撮像素子は、光学像を電気出力に変換する撮像素子の中で最も一般的なものです。映像の撮像素子は、CCDだけかと言うとそうでもなく、以下示す固体撮像素子が開発されました。
 
  ・ MOS(Metal Oxide Semiconductor) 
       - 1966年〜。CCDの対抗馬的存在の固体撮像素子。
         消費電力が少ない。
  ・ BBD(Bucket Brigade Device)
       - 1969年〜。バケツリレー素子。
         松下が研究開発。
  ・ CID(Charge Injection Device)
       - 1970年〜。電荷注入素子。MOS型とCCD型の折衷素子。
         フィリップスが発表。
        GE社が開発を継続していた。
  ・ CPD(Charge Priming Device)
       - 1978年〜。呼び水転送素子。MOS型を基本構造とし、一部をCCD型とした素子。
         松下、日立が研究していた。
  ・ CSD(Charge Sweep Device)
       - 1983年〜。電荷掃き寄せ素子。
         三菱電機が研究していた素子。
  ・ PCD(Plasma Coupled Device)
       - 1972年〜。プラズマ結合素子。
         NTTが研究開発をしていたX-Yアドレス方式の素子。
  ・ SIT(Static Induced Transistor)
       - 1977年〜。静電誘導トランジスタ。
         オリンパスが開発。
         発想は東北大学西澤潤一教授。高感度。
  ・ CMD(Charge Modulation Device)
       - 1990年〜。MOS型素子。
         オリンパスが開発研究。
  ・ ISIS(In-situ Storage Image Sensor)
       - 2001年〜。CCD型素子。
         素子上にメモリ機能を置き100万コマ/秒の撮影を達成。
         近畿大学江藤剛治教授開発。
 
 こうした固体撮像素子を見ると、いろいろなメーカーがお互いの特許をかいくぐりながらいろいろなアイデアを持ち寄って開発したことがうかがい知れます。
 そもそもCCDに代表される固体撮像素子は、テレビカメラの世界では新しい撮像素子です。固体撮像素子が全盛を極める以前までは撮像管(電子管)が使われていました。撮像管によるテレビカメラはとても高価であり、一般市民が簡単に使えるものではありませんでした。撮像管は、放送局関係の人達だけが使っていたプロユースだったのです。
 
■ 映像信号の記録とCCDの発展
 私の記憶では、テレビカメラは1940年代に発明されて1950年代の放送局の設立と無線放送の発展の中で放送局専用として使われたものであり、一般家庭で使われる代物ではなかったはずです。一般家庭では、テレビカメラをたとえ持ったとしてもこれを記録する録画機(ビデオレコーダ)がなかったのです。録画装置がない限りテレビカメラがあっても何の役にも立ちません。当時、アマチュアで動画の記録保存を行うには、機械が好きでお金に融通の聞く人たちが8ミリ映画フィルムを使った8ミリカメラを使っていました。
 1970年代後半から発売された1/2インチビデオテープによるビデオテープレコーダによって、家庭にビデオカメラが浸透し始め、1980年代後半に発売された一体型ビデオカメラの登場によってホームビデオが市民権を得るようになりました。
 ビデオカムコーダ普及にあたって、CCD固体撮像素子の果たした役割は大変重要なものでした。CCD固体撮像素子は、真空管撮像素子に較べて小型、堅牢、メンテナンスフリーで何よりも安価でした。このカメラが出る前の1970年代は、放送局に加えて産業用用途にそして学術研究用にITV(Industrial TV)という分野が発展し、CCTV(Closed Circuit TV)の分野も立ち上がって、テレビ業界の大きな発展を見ます。撮像管を使ったテレビカメラはその中で使われていたに過ぎませんでした。家庭まで浸透するには値段が足かせとなっていました。
 
■ CCD以前の撮像素子
 こうしたテレビの世界で使われていたカメラの撮像管として、目的に応じてさまざまなタイプのものが開発されました。これらは、赤色領域の感度確保、高画質、高感度化が主な開発目的でした。
 
  ・ イメージディセクタ(Image Dissector) - 1931年、Farnsworthにより開発。
  ・ イメージオルシコン(Image Orthicon) - 1946年、米国RCA社が開発。
  ・ ビジコン(Vidicon) - 1950年。撮像管の代表的なもの。
  ・ プランビコン(Plumbicon) - 1963年。オランダ フィリップスが開発。残像が少ない。
  ・ サチコン(Saticon) - 1974年。NHKと日立が開発。
  ・ カルニコン(Chalnicon) - 1972年。東芝が開発。
  ・ ハーピコン(Harpicon) - 1985年。NHKと日立が開発。超高感度。
 
 撮像管については別の項で詳しく触れています。
 これら撮像素子の中で、固体撮像素子であるCCDだけが何故広くゆきわたり、撮像素子の代名詞になったのでしょう。その理由は、CCD撮像素子が一にも二にも大衆マーケットである一体型8mmカムコーダを中心としたビデオカメラにあまねく採用されて、そこそこの画質と使い勝手の良さが認められ、大量供給による低価格化によって市場を席巻していったためです。
 
■ CCDの発展
 CCDカメラは、米国ベル電話機研が開発し、日本のSonyが1970年代後半に市販化しました。ビデオカメラの眼として市販化するそもそもの発端は、日本の航空会社(ANA = 全日空)の要求からと言われています。堅牢な固体撮像素子カメラを航空旅客機に搭載し、離着陸時の機外の様子を客室へモニタする乗客サービスをしたい、という航空会社の要求をソニーが受け入れ開発に本腰を入れて市販化されたということです。当時は、画素数も少なくて画質が悪かったため、放送業界はもとより一般産業分野(当時、これを放送テレビと区別して ITV = Industrial Television と呼んでいました)でも受け入れ難かったのですが、振動、耐久性を重視する航空機搭載の強い要求が CCD 固体撮像素子を育て上げたと言えます。いずれにせよ取り扱いが簡単なことや、過度の光が入射しても素子を傷めないことから、開発当時は、放送局業界より一般産業界で着実に顧客をつかみ、感度、解像度、価格などを向上させていきました。そして現在では、放送局用カメラはもとより、ハイビジョンカメラや計測用カメラにあまねく利用されるようになりました。
 CCDの成功は、以下の技術革新によったと言えましょう。
  
   ・取扱が簡単 - 低電圧で駆動、焼き付きなし(強い光が入射しても損傷しない)、振動や環境に強い。
   ・高画素化 - NTSC規格の解像力を凌ぐ高解像力。
   ・電子シャッタ内蔵 - 電子的に光量を制御可能。及び計測用として利用。
   ・高感度化(マイクロレンズ) - 照明装置を用いずに撮影可能。
   ・モジュールによる素子のパッケージ販売 - CCDファミリーの増加。
 
■ CCDのライバル
 同時代、日立からもC-MOSタイプの撮像素子が開発され市販化されました。しかし、1980年代はCCD陣営に追いついて拮抗するまでには至らず、1990年に入って製造中止を余儀なくされました。しかし、その4-5年の後に、MOS型撮像素子の低消費電力の利点が見直され、デジタルカメラや携帯電話の需要を見込んで1997年、東芝によってさらに進化させたMOS型撮像素子が開発されました。現在では米国をはじめ、再び大きな市場に発展する勢いを示しています。皮肉なことに、MOSタイプのカメラが再び脚光を浴びたのは、米国航空宇宙局(NASA)の宇宙開発での要求、すなわち、低消費電力でコンパクト、そして取り回しの良い小型撮像素子開発要求があったことです。CCDはMOSに較べて桁が変わるくらいに多くの電力を消費しました。熱が対流によって逃げない宇宙空間では熱発生が致命的な問題となるのです。(詳細は、CMOSカメラの項目を参照下さい)。この要求が実を結んで、CMOS撮像素子が2000年代の主役に再度躍り出てくるというのも面白い巡り合わせです。
 
 
【CCD撮像素子の歴史】
 CCD素子は、1970年に米国ATTベル研究所で、W.S.ボイル(Willard Boyle、1924.1〜)とG.E.スミス(George E. Smith:1930.5〜)によって発明されました。彼らは、『The Bell System Technical Journal』という機関誌にCCDの基本原理と8ビットのシフトレジスタの発表をしました。論文名は、「Charge Coupled Semiconductor Device」でした。当時、彼らはCCD素子をメモリの一環として開発したのであって、カメラの目として開発したわけではありませんでした。CCDという名前は、電荷をパルスによって送る方式(Charged Couple)に由来しています。これは、1980年代、CCDカメラと熾烈な競争を展開したMOS素子の開発動機とは好対照です。
 MOS固体撮像素子の開発は、1963年、HoneywellのS.R.モリソン(Morrison)による「Photosensitive Junction Device」というフォトスキャナの発表に端を発します。CCDよりも7年も前のことです。これが1967年に、Westinghouseのアンダース、Fairchildのヴェクラー(Gene Weckler)、RCAのワイマー(Paul K. Weimer:1914 〜2005.01)などによってMOS型素子として発表されます。MOSは、フローティング状態のpn接合部に光の量に応じて蓄えられた電荷がスイッチング素子で吐き出されるという原理です。MOS素子の構造は、CCD方式に比べるとシンプルで作りやすい反面、各セルに蓄えられた電荷を取り出すのにトランジスタによるスイッチングで取り出すためスイッチングノイズが多く、これが画像に悪影響を与え(S/N比があまり良くなく)CCD転送方式に比べて大きなハンディキャップを背負っていました。しかしCCDに比べてシンプルで高速サンプリングが可能だったので、1990年代の高速度カメラにはMOS素子を使ったものが多く市販化されました(Kodak EM1012、Kodak HS4540、フォトロンFastcam Ultima、ナックHSV-1000)。
 両者の固体撮像素子の熾烈な競争の中、1990年代はCCDに軍配があがりました。
 CCD固体撮像素子(画像としての素子開発)は、1971年、ベル研究所のM.F.トムセット(M. F. Tompsett)によるフレーム・トランスファー方式のエリアセンサーの構想発表からスタートします。1972年にはベトラムが98画素、1973年にはシーガンが106 x128 = 13,568画素のCCD試作に成功します。1974年には、RCAのR.L.ロジャースが、NTSCテレビ標準方式にのっとった320 x 512 = 16万画素以上のCCDを発表して画素を向上させていきました。
 日本では1972年に、研究室レベルでソニーが8画素のCCDを作り電荷の転送を実証し、これをさらに8x8画素の64画素として「S」の字を撮像させたと言います。ソニーは、当時まだまだ問題の多かった固体撮像素子の画質を見る見る向上させ、1990年にはプロユースの撮像管を使った放送用テレビカメラを彼らが開発したCCDカメラで置き換えてしまいました。当時ソニーは、トランジスタで世界を唸らせる製品(小型トランジスタラジオ、小型テレビ受像器、テープレコーダ)を世に送り出していましたが、コンピュータメモリや集積回路では目立った実績を上げていませんでした。CCDは半導体製造技術でも特に高度な技術を要する素子です。こうした難しい製品の開発を成功させ、2000年にあってはカメラの目と言えばCCDと言われるくらいにカメラの代名詞となりました。現在は、ビデオカメラは言うに及ばず、デジタルカメラや放送局用のテレビカメラやハイビジョン用のカメラでさえCCDカメラに置き換わるようになりました。
 
 ■ CCDの基本原理 - シフトレジスタ
  CCDという名前は、今でこそ一般名詞(カメラの代名詞)として一般の人にも認知されるようになりましたが、名前の由来がどのようにしてできたのかよくわからない不思議な名前です。「CCD」のそもそもの原理や構造を説明できる人は多くはないと思います。最初に発表されたCCDの構造と原理をわかりやすく説明すると以下のような概念になります。
 
 
 
 CCDは、基本的に電荷を蓄えるための複数のセルを持っていて、電子回路によるシフト機構によって(電圧をタイミング良く上げ下げして、電荷を右方向に転送する仕組みによって)、順序よく電荷を次のセルに受け渡します。この方式がCCDの基本概念です。この方式によって蓄えられた電荷を時系列の時間情報として取り出すことができます。
 CCDが発想された1970年当時は、トランジスタとIC技術の進展でコンピュータ技術が発展している時代だったので、それに伴う周辺機器の開発(特にメモリ開発)が活発に行われていました。CCDは、コンピュータメモリの一環として開発されました。CCD開発には、磁気バブルメモリ(magnetic bubble memory)に代わるメモリ装置という伏線がありました。磁気バブルは、1960年代にベル電話機研究所(Andrew Bobeck、1926.10.01〜)が開発した記憶装置で、1980年代までのコンピュータの大切なメモリ装置でした。磁気バブルメモリは、CCD開発に多大な影響を与えます。つまり、CCDは磁気バブルメモリの欠点を補うべく開発されたのです。しかし、この両者は、1980年初頭に開発された小型HDD(磁気ディスク)の成功によりコンピュータメモリの世界から姿を消すことになりました。1980年当時の磁気バブルメモリは、情報を読み出すのに1/1000秒のアクセス時間がかかり、保存する容量も1Mビットを作るのがやっとでした。磁気バブルメモリは、1Mビット(125kバイト)のデータを読み出すのに、8ビットパラレルで2分もかかるのです。1980年に登場した小型HDD(IBMが開発したST-506)は、5Mバイトの容量を持ち、250kバイト/秒でデータを転送できました。これは、磁気バブルメモリの40倍の容量と250倍のスピードを持っていたことになります。磁気バブルメモリは、当時、富士通が熱心であり、彼らのパソコンFM-7、FM-8に記録装置として内蔵されていたそうです。CCDは、先に開発された磁気バブルメモリの性能を遙かに凌いでいましたが、どんどん進化していく小型HDDの性能を追い越すことができませんでした。当時の技術では、100万セル(1Mビット)のCCD素子を作るのが精いっぱいで、HDDには太刀打ちできなかったのです。
 コンピュータのメモリとしての命が絶たれた磁気バブルメモリとCCDでしたが、CCDは光信号を蓄積転送できるという特徴が活かされ、「カメラの眼」として新たな分野で発展成長を見ることになりました。
 
 
 
 
【ソニー(SONY)のCCD開発話 - NHK『プロジェクトX』 2004.09.14放送より、一部、別文献を参考】 (2004.09.19記)(2004.10.24追記)
 大企業のプロジェクトと言うのは、恵まれた環境の中で育てられて完成するものだと私自身は思っていました。日本のCCDカメラの開発も、ベル電話機研究所の発明を睨んで会社を上げての取り組みだと考えていたのです。しかし、NHKのテレビ番組『プロジェクトX』(2000年3月〜2005年12月)を見て、CCDカメラ開発の発端は閑職とも言えるべき立場にいた若いエンジニア(越智成之氏、東京工業大学電気工学卒、1962年入社)が、会社の意向とは関係なしに自発的に海外の文献を漁って、片手間に(しかし当人にとっては真剣に)手作りしたことに始まったことを知りました。彼は中国生まれで、少年時代手作りの真空管ラジオに熱中し、アンテナも自作して電波の弱い放送を感度良く受信していたそうです。根っからの電気少年でした。
 希望に胸ふくらませて入社されたソニーでしたが、配属先はスピーカーの性能を検査する部署だったそうで、毎日オシロスコープとにらめっこして波形データを記録する日々だったそうです。期待した仕事とは全く違った部署の配属となり、ジリジリとした焦りにも似た日々が続いた、と、越智氏は番組で述懐されていました。1962年に入社されて、ベル電話機研究所の文献が出される1970年までの8年間、ある意味の下積みをされていたのでしょうか。彼は、1961年に横浜保土ヶ谷区に建設された「ソニー研究所(現ソニー中央研究所)」に在籍されていたことは確かなようです。とすると、研究所の中でもあまりパッとしない研究職に就かれていたことになります。
 越智氏は、外国の文献を読んでCCDの事を知り、興味を覚えて独学でCCDの研究に取りかかります。1970年12月のことでした。当時越智氏は、同じ固体撮像素子であるMOS型素子も研究していたそうです。越智氏は、最初、CCDを遅延メモリの一環として研究を始めましたが(CCDの発明そのものが半導体メモリとしての使い方を考えていた)、撮像素子として使えそうだという着眼をしました。これが非凡な所です。彼の研究は、自分で始めた事なのでもちろん社内のバックアップも何もありません。その手作り製品は、8x8画素の64画素を持った撮像素子で、越智氏はこの撮像素子で『S』の字を撮影し(SONYの「S」なのでしょうか)、ノイズだらけながら文字を浮かび上がらせました。入社11年目(1972年、ベル電話機研の研究者が論文を発表した2年後)のことでした。この手作り製品を、研究所にやってきた岩間和夫副社長(当時、岩間氏は中央研究所の所長を兼任、1976年より1982年まで社長)が目にして、越智氏の人となりをすぐさま見抜いて大抜擢しました。5ヶ月後の1973年11月には、研究員やプロセスのすべてを各工場から中央研究所に結集させ大きなプロジェクトとして発足させました。
 当時(昭和48年、1973年)のソニーの会社事情と言えば、シャープが開発した4ビットマイコン内蔵の電子計算機の爆発的な売れ行きのあおりを受けて、6年前の1967年(昭和41年)に開発して主力製品となっていた電気計算機「ソバックス = SOBAX = Solid State Abacus、電子ソロバン」の売れ行きがぱったり止んでしまった時期でした。創業以来の危機に直面した時期だったそうです。岩間副社長は、そんな時期にソニーアメリカから呼び戻され再建を託されます。彼は、伝説的なトランジスタ技術者として社内外に知れ渡った有名な人だったそうです。トランジスタが発明された当時、増幅素子としてラジオに使うにはノイズが多く、補聴器以外に使い道のない電子素子という定説を覆し、トランジスタの性能を向上させ、超小型のトランジスタラジオ開発の成功に導いたのが若き電気エンジニアの岩間氏だったのです。彼が副社長として日本に戻った当時、ソニーは経営のどん底にあり、新しい核となる商品が咽から手が出るほど待ち望まれていた時期でした。岩間副社長(ソニー中央研究所所長)は、核となる商品の一つとして越智氏が自発的に進めたCCDの開発を一大プロジェクトとして指定したのです。
 彼らのプロジェクト目標は、8ミクロンの窓を持った20万画素(525画素x381画素)の撮像素子の開発でした。この最終製品の前段階として、昭和51年(1976年)に7万画素素子を開発し、引き続き12万画素の開発を続けていきます。製品開発は、歩留まりの向上、ゴミとの戦いだったと言います。当時の素子の歩留まりは1/3,000以下だったそうです。12インチのウェハーから8.8mm x 6.6mmの素子がおよそ1,000個程度できます。歩留まりが1/3,000ということは、3枚のウェハーからたった1個のCCD素子しか作れないことになります。彼らが手がけるCCD開発のプロジェクトは、彼ら自身にCCDの製造技術がなかったために一から出発をせざるをえず、完成させるまでに200億円の投資を行ったそうです。5年の実用計画に対して6年3ヶ月を要し、最初の顧客である全日空に初号機を納めます。
 社長の岩間氏は、製品も完成していない時に全日空に開発途上のCCDカメラを売り込み、注文を取ってしまいました。目標があった方が拍車に開発がかかるだろうという社長の思惑があったそうです。この件は、別の文献では全日空側が商品に対してすごい乗り気で、ソニーを説き伏せたような紹介がありましたが、テレビ番組ではソニー側から強力なお願いをしたように紹介されていました。いずれにせよ、全日空も空の路線拡大に競争会社と激しいしのぎを削っていたので、目新しいサービス商品が欲しかったのだと思います。そのCCDカメラが、1年の納期を経て1980年(昭和55年)6月1日に全日空のジャンボジェット機に搭載されました。納品したカメラは、12万画素で、価格は1台30万円。13機のジャンボ機にコックピットと前後輪脚にそれぞれ1台ずつ取り付けられました。合計52台の納品だったことになります。
岩間社長は、その3年後の1983年、ガンのため63才の生涯を閉じます。全日空のジャンボ機に搭載され、世に初めて固体撮像素子が出てこれからという矢先でした。ソニーは、この成功の後、2kgの重量を切るレコーダ一体型カメラ(カムコーダ)の開発に乗り出します。1985年1月には、最初の8ミリビデオカメラCCD-V8を発表しました。画素は25万画素でした。これでソニーは市場を独占することになります。1987年にはカメラの画素を38万画素に上げました。
 1989年に発売した「パスポートサイズ」のHandycam TR-55は、2/3インチ25万画素のCCDで、これにはオンチップ・マイクロレンズが取り付けられていました。これは直径7umの世界最小のレンズで、このレンズをつけたカメラは70年代半ばの試作機から比べ20,000倍の感度向上を達成しました。岩間社長はその成功を見ることなく他界されました。
 
 
 
 
【CCD素子のキーワード】 (2007.04.09)
  CCDの性能を理解するには以下のキーワードが不可欠です。 
 下の図が固体撮像素子の模式図です。固体撮像素子は、精度の良いシリコン平面板に微細加工を施してシリコンのホトダイオードを作りあげ、一つ一つ埋め込んであります。このホトダイオード1つを1画素(または1ピクセル)と言っています。
 
▲ 画素(pixel):
 画像を構成する単位です。デジタル画像は、すべて画素(がそ、ピクセル、pixel)のモザイクによって構成されています。画素が多いほどきめ細かい画像が得られます。もちろん、画素の内容(白黒なら濃度 = 8ビット、12ビット、16ビット、カラーなら色情報)が多ければより一層きめ細かい画像が得られます。従来は、640画素x480画素あれば十分な画像と言われましたが、最近では1000x1000画素を越える画像が一般的になっています。
 
▲ 画素サイズ(pixel size):
 1画素の大きさです。1画素の大きさにはこれと言った規格がなく、メーカーがまちまちに規定している感じを受けます。たとえば、あるCCDでは12x12umであったり、9.4umx9.4umであったり7umx7umであったりという具合です。画素サイズが小さい場合の利点は、顕微鏡などの撮影の場合、高額な顕微鏡をあつらえて拡大撮影したときに、CCDの画素サイズが小さいとキメの細かい画像を得ることができます。また画素サイズが小さいと、限られた寸法の撮像素子面上にたくさんの画素を入れ込むことができたり、同じ画素数であるならば小さい撮像素子にすることができます。これは製造メーカーにとって、製造上(歩留まりの観点から)有利です。画素サイズが大きいメリットは、受光部が大きいので感度が良くなることです。高速度カメラや高感度カメラには画素サイズが大きいものが使われ、16umx16um、25umx25um、40umx40umのものが作られています。
 なお、画素サイズは正方形のものが計測用では一般的ですが、放送用には縦長の画素サイズが使われています。こうしたカメラを計測用に使う場合には注意が必要です。
 
▲ イメージサイズ(image size):
 1画素のサイズ(Ph、Pv)が決まって画素数(Mh、Mv)がわかっているとその掛け合わせでイメージサイズ(Ih、Iv)がわかります。
 
        Ii = Pi x Mi  ・・・(Rec -2)
          i = h、v (横方向、縦方向)
 イメージサイズは、その大きさを表す場合、一般的に1インチ型、2/3インチ型、1/2インチ型、1/3インチ型という言い方で呼び、この呼称でだいたいの大きさがわかるようになっています。この呼び方は対角線の長さではなく、電子管時代の呼び径を踏襲した言い表し方です。大きいイメージサイズの撮像素子を使うメリットは、画素サイズを大きくすることができるためたくさんの電荷を蓄えることができ、相対的に感度の高い素子とすることができます。また、カメラレンズも作りやすく性能の良い通常のレンズが流用できます。イメージサイズが小さい素子のメリットはコンパクトなカメラができる可能性があることと、製造上、同じ大きさのウェハーからたくさんの撮像素子が出来上がるのでコストが下がり安価になることです。
 私のように映像を計測手段とした仕事に従事していますと、固体撮像素子はできるだけ大きいものがうれしく感じます。撮像素子が1インチ程度のものですとニコンFマウントのニッコールレンズが使用でき、広い範囲を撮影する際にも焦点距離の短いレンズを用意しなくてすみ、また画素も大きいため感度の高い素子となります。レンズメーカーも小型撮像素子用のレンズを作るのは難しいと言っています。
 例えば1/3インチサイズ(4.89mm x 3.66mm)のCCDでは、768(H)x 494(V)画素のものが出回っていますが、この素子の1画素当たりのサイズは6.37um相当となります。この値はすごい意味をもっています。結論から言いますと、小さくて高解像力撮像素子を満足するレンズ製作は理論的に極めて困難です。その理由は英国の物理学者レーリー(Reyleigh)が導き出したレーリーの回折限界で説明されるように、光の特性上結像面に光がうまく結ばずに光が回り込んでボケがでてしまうというものです。レーリーの導き出したボケ量(許容錯乱円)dは、以下の近似式で表されます。
 
     d = 2 x λ x F   ・・・(Rec -3)
         d:許容錯乱円
         λ:波長
         F:レンズ絞り
 
この式によりますと、λ = 550nm、F = 5.6でd = 6.16umとなり、レンズをF5.6以上に絞り込むとレンズが撮像素子に負けてしまいます。従って、今後はむやみに細かな画素を持った小さな撮像素子は出てこないように思われます。ICの製造技術は驚くほど進歩して小さな画素の製造など簡単に行えるようになりました。しかし、レンズが悲鳴を上げています。撮像素子のイメージサイズが大事な理由の一つがこのレンズとの相性なのです。
 
▲ 受光サイズ:
 実際に光を受けるフォトダイオードの大きさです。1画素サイズそのままの大きさが受光部になるものはフルフレームトランスファ型CCDだけで、他の多くのCCDは転送回路などが配置されるため受光サイズは小さくなります。
 
▲ 開口率(fill factor):
 1画素面は全てを受光部としているわけではなく画素の中のある部分をホトダイオード部としているため撮像素子に入射する光をすべてホトダイオードで受けられるわけではありません。この受光部面積と、素子面積の比を開口率(Fill Factor)と呼んでいます。CCD撮像素子は、数種類のタイプのものがありますが、その中の最もよく使われているインターラインライントランスファ型CCD(電子シャッタ内蔵のCCD)では、同一平面内に受光した電荷を電気信号として取り出すための転送部を配置しなければならないために、開口率が小さくなります。フレームトランスファー型CCDは電荷の転送を画素を使って転送するために、つまり素子上に電荷を転送する専用の道がないために開口率を100%にすることができます。解像力を述べるとき、画素数よりもこの開口率が大きく影響を及ぼすことがあります。
 
▲ 受光電荷容量(dwell capacitor):
 1画素に光を蓄えることができる能力を受光容量とか受光電荷と呼んでいます。当然、画素サイズが大きいものや開口率が大きいものほど受光電荷量が大きくなります。 この受光容量に関してはCCDカメラ素子は色々なタイプのものが出回っていてそれぞれに特徴があって簡単に言い表せないのですが、フレームトランスファタイプのCCDカメラで電子冷却を備えている素子ほど受光容量は多く、インターライントランスファ型のように受光面積が小さいものほど受光容量は小さい傾向にあります。この受光容量の度合いは画像の濃度情報に影響を与えます。受光容量の大きいものは16ビット(65,500階調)のものがあり通常は8ビット(256階調)です。シリコンによるフォトトランジスタは、基板の熱によって電荷をランダムに発生してこれがノイズとなります。光によって蓄えられた電荷と熱電子によって運び込まれるノイズによって信号と雑音信号の比(S/N比)が決まりますが画質の良いCCDはこのS/N比がよくノイズに影響されないキチンとした信号成分を取り出すことができます。撮像素子のノイズは熱電子の他に、アンプ雑音(受光部で検出した光電荷を増幅するときに生じる初段トランジスタ発生ノイズ)、リセット雑音(読み出しのリセットをする際に発生する雑音)、光ショットノイズ(入力光そのもののノイズ)などがあります。物理学用で使われるフレームトランスファ型のCCDは16ビットのものが多く、高速度カメラ用には8ビットのものが一般的です。
 
▲ 量子効率(Quantum Efficiency、QE):
 1つの光子(hν)で1エレクトロンの電子が発生することを量子効率100%と言います。計測用CCDなどで、光子エネルギーが論議される分野では、重要な性能要素です。
詳細は、■QE(Quantum Efficiency、量子効率)を参照を参照してください。
 
 
 
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【CCD撮像素子の種類】

 CCD型固体撮像素子は、いろいろな進化、発展を遂げてきました。
現在の所、受光方式、転送方式の違いによって以下の5種類のものがあります。
 

I. インターライントランスファー型(IT-CCD)  -  現在、一般的なもの

II. フレームインターライントランスファー型(FIT-CCD) - 放送局用として使われているもの

III. フルフレームトランスファー型(蓄積部なし)(FF-CCD) - CCDの初期のもの

IV. フレームトランスファー型(蓄積部あり)(FT-CCD) - フレームトランスファ型の改良版

V. 全画素読み出し(プログレッシブスキャン)型 - インターライントランスファの改良型(インターレースを行わないもの)

   (ただし、これは1.のIT-CCDのジャンルに組み入れられている)
 
 
 8mmビデオカメラやビデオカメラでは、ビデオ信号に変換しやすい1.のインターライントランスファー型CCD(IT-CCD)が使われ、放送局用のビデオカメラには2.のフレームインターライン型CCD(FIT-CCD)が使われています。400万画素などのデジタルカメラや計測用の高解像力カメラには3.のフレームトランスファ型CCDカメラ(FF-CCD)が使われます。
 最近は、プログレッシブスキャン型CCDカメラ(Progressive Scan、全画素読み出し方式CCDカメラ)が開発されて、放送規格にとらわれないデジタルカメラやハイビジョンカメラに多用されるようになりました。上図にCCD素子の概念図を示します。
 
 CCD撮像素子の特徴は何れのタイプも受光した電荷を一つ一つバケツリレーのように転送していく方式です。
 
 
 
 
 
■ フルフレームトランスファー型CCD
 III.に示したフルフレームトランスファー型CCD素子は、上の図を見てもおわかりのように構造が比較的シンプルであり受光部も大きく取れ、撮像素子面に占める受光部(開口率)が大きいのが特徴です。開口率が大きいというのは、被写体の空間情報に連続性が得られ、被写体情報に欠落がない画像が得られます。受光部が大きいのは、光をたくさん受けますので感度が良くなります。また構造がシンプルなのでたくさんの受光部を作ることが可能で、1024x1024画素とか、2048x2048画素、4096x4096画素のCCDが開発されています。計測用のCCDカメラにはできるだけ開口部が大きく、明るく、S/Nが良く、高解像力で、ダイナミックレンジが大きいカメラが求められますので、このタイプのものが使われます。天体観測用のCCDカメラもこのタイプのCCDカメラが多いようです。
 フレームトランスファ型CCDは、CCDの中では最もシンプルな構造で製造も簡単ですが、インターライン型のように受光した電荷を転送する転送部を別に設けていず、受光部がそのまま転送部の役割も果たすので、受光された電荷は垂直の画素(受光部)を跨ぎ(またぎ)ながら転送されていきます。このときにカメラレンズを通して光が入り続けると転送中に電荷が増え、結果的に像が縦方向に流れたようになります(スミア現象)。従って、フレームトランスファ方式では受光が終わったら撮像面をメカニカルシャッターのようなもので遮光し転送を行うか、蓄積時間時にストロボのような短時間発光をする照明を用いてシャッタリングをする必要があります。
 以下に、わかりやすいフレームトランスファ型CCDの受光・転送メカニズムを説明します。
 
 
■ フレームトランスファ型CCDの受光・転送メカニズム説明 (2007.03.28)(2007.09.01追記)
 
 
 
 上図に、フレームトランスファ型CCD撮像素子の受光メカニズムを概念図として示します。光を雨粒と見立てました。光を電荷に変えて転送するメカニズムをバケツリレーに見立てました。
 FT(フレームトランスファ)は、CCDの最初のタイプです。構造がシンプルなので、CCDの仕組みを理解するには一番良いタイプだと思います。現在のCCD素子はこのタイプのものとは違いますが、基本的な考え方は同じです。
 また、実際のCCDは、上の模式図とは違って、レンズで受光し光電変換した電荷を転送する方式となります。ですが、ここでは便宜的にメカニカルな機構に置き換えて説明します。
 
【模擬図の説明】
 CCDは、光の雨を受けるバケツ(画素)がたくさん配列されたものと見なすことができます。バケツが512x512個並んで雨を受けていることを想像すれば良いでしょう。バケツが大きければたくさんの量を溜めることができます。また、長い時間をかけてバケツをかざしていれば、相当な量を蓄えることができます。長い時間をかけてバケツをかざすことは、カメラの露出時間を長く取ることを意味します。
 
【受光 - 光の雨】
 バケツが光の雨を受けているときは、バケツをリレーする機構部は停止しています。ずっと光の雨を受け続けています。光の雨を受けるバケツには実は少々問題があって、長い時間受けているとバケツで受けた光の雨が漏れ出たり、回りのバケツやリレー機構部から水が漏れ入ってきます。漏れる度合いは、バケツ(CCD)の大きさや性質によって違いますが、通常ですと1秒程度で現れます。これはCCD用語(トランジスタなどの固体素子)では熱ノイズと呼んでいるもので、本来の受光による光量電荷ではなく、画像に悪影響を与えます。光の雨が非常に微弱ですと揺らぎとよばれる特殊な光の性質によりショットノイズというものも現れます。これはフォトンを扱う領域で現れます。
 光の雨による電荷(signal)と漏れ入る電荷(noise)の量は、計測カメラなどでは公表されていることが多く、S/Nという言い方で示されいます。S/Nが40dBですと、ノイズが信号に対して1/100であることを示しています。60dB程度の性能があれば1/1000(1:1000)であるので、とても優秀なバケツ及び送り機構であると言えるでしょう。また、別の計測カメラではこの不純成分をダークカレントノイズ(暗電流ノイズ、dark current noise
)という言い方で表し、2e-/pisel/sというような表記がなされます。これは、1ピクセル、1秒当たり2エレクトロンノイズが入ることを示しています。10秒露光すると20エレクトロンの電荷が貯まることになります。
 
【バケツの種類】
 さて、バケツですが、バケツには光の雨を受けるものと、光の雨は受けずにバケツリレーを担って受光した光の雨を受けてそれを運ぶものの二つがあります。前者は画素と呼ばれているものであり、後者は水平転送部と呼ばれるものです。転送部は垂直転送部と水平転送部の二つがあり、整然とバケツリレーを行います。垂直転送部は、初期の頃のものは受光バケツが行っていました。受光と転送の二つの機能を受け持ちます。これが今回説明してるものです。水平転送部は、右の図では左端の少し大きめに描かれたもので上に蓋が乗っているものです。この模擬図では、垂直転送をメインに描き表しているので、水平転送のセル(バケツ)は一つしか描かれていません。しかし、実際のところ水平転送部はこの図から見て奥行き方向に水平方向分の画素列数だけ転送用のバケツがあります。
 
【フレームトランスファ】
 受光が終わると、CCDは画像を転送するプロセスに移ります。この時、多くのフレームトランスファ型CCDでは撮像素子の前をメカニカルシャッタで遮光します。なぜなら、フレームトランスファでは光の雨を受けたバケツそのものを使ってバケツリレーを行うので、雨よけをしないと、バケツリレーをしている間にも雨が入ってきてうまくないからです。
 
【水平転送の仕組み】 まず、最初に水平転送部(左図の一番上の図、左端)のバケツが下がります。光の雨を受けたバケツからのリレーを行いやすくするためです。水平転送部のバケツが下がったら蛇口機構部(遮断板)が下がってバケツの底に設けられている排出孔から光の雨に相当する電荷が開け渡されます。
 
【バケツの昇降】
 バケツが上がったり下がったりする仕組みが実は、フレームトランスファの真骨頂です。これは、実際のCCDでは、電位を上げたり下げたりしてこの機能と同じことをしています。パナマ運河の水門を開け閉めして水位を上げたり下げたりして船を運航させるのを想像すれば良いかと思います。CCDの原語であるCharge Coupled Device のCharge Coupled というのが、実はこの電圧の上げ下げによる光量電荷の転送を意味しています。 
 
【転送の仕組み】
 水平転送部に電荷を開け渡した1番目(左端の水平転送部のセルから数えて右方向1番目)のバケツが空になると、バケツは下がります。1番目のバケツが下がるのを見計らって、2番目のバケツの蛇口機構部(遮光板)が下がり、電荷が1番目のバケツに移ります。
 
 2番目の電荷が移し終わると、以下同様に、次のバケツの電荷を受け取って、順繰りに電荷を若い番号のバケツに移し替えて行きます。
 
 垂直画素のバケツの電荷がすべて1画素分若いバケツに移し替えられると、1番目のバケツは水平転送部に明け渡すタイミングを見計らいます。と言いますのは、水平転送部は垂直転送部から下りてきた1水平画素分の電荷を休みなく出力段に送り続けていてとても忙しいからです。
 例えば、512画素(水平)x512(垂直)のCCDがあったとすると、右に示した垂直転送部は512列水平に並ぶことになり、それぞれの1番目の画素が512個同時に水平転送部に移ります。水平転送部では、512回バケツリレーによって電荷を転送します。水平転送部が転送している間に、垂直転送部では上で示したような機構によって1番目のバケツに次の電荷が来るように準備します。512x512画素の場合には、垂直と水平の画素数がちょうど同じなので、垂直転送部の初期段階は同じ画素数となります。しかし、転送の終わりになってくると垂直成分に残っている画素が少なくなってくるので、短時間で垂直転送部から水平転送部に移す作業が終わり待ち時間が多くなります。
 
【転送のタイミング】
 フレームトランスファ機構を見てみると、一種のオートメーション工場のようです。古い言い方をすればベルトコンベア工場のようです。転送部は絶えずバケツが上下していて、蛇口機構でバケツの中身を転送するかどうかのタイミングを図っています。CCD撮像素子は、このようなベルトコンベア機構と同じような電子回路があって忙しく立ち働いているのです。忙しく立ち働くというのは電気をたくさん食うことにもなります。絶えずベルトコンベアが動いているのでそのための駆動電源が必要になるのです。
 
 CCDカメラから電荷を取り出す場合、デジタル回路ではクロックによって理路整然とバケツリレーを行っています。例えば、100kHzのクロックで512x512画素を読み出したとすると、1クロックに1画素の転送を行いますから、
 512画素x512画素 / 100,000 Hz = 2.62秒  ・・・(Rec -4)
1枚の画像を読み出すのに2.6秒かかることになります。クロックを1MHzにすれば、0.26秒となります。クロックを速くしてバケツリレーを速く行わせると、これは容易に想像できることですけれど、バケツ内のデータが暴れて飛び散ったり他のバケツに入り込んだりします。つまり画像の画質が悪くなります。CCDは、電子制御によってデータ転送を行っているとは言え、一般のバケツリレーと同じような現象が起きます。従って、貴重な画像データをきれいに送るには、慎重にゆっくりと送らなければなりません。その意味で、天体観測用のCCDカメラなどは、転送に1分程度の時間をかけてゆっくりと転送をしています。
 フレームトランスファ型CCDでは、高速データ転送が難しい理由がこれで理解できると思います。またこのタイプでは、受光が終わって転送を行う際に遮光をしなければ余計な光が紛れ込んでしまいます。メカニカルシャッタを素子に付けなければならないという点においても、高速撮影が苦手なことが理解できます。従ってこのタイプでは、5 - 10コマ/秒程度の撮影が最大となります。
 
 
 
■ 蓄積部を持つフレームトランスファー型CCD
 IV.の蓄積部を持ったフレームトランスファー型CCDは、III.の蓄積部なしのフルフレームトランスファー型CCDに比べて蓄積部への転送を速く行うことができます。この機能をもたせたのは、CCDの特徴の一つであるスミア(スメア)を除去する目的がありました。蓄積部は、アルミの遮光幕で覆われているので、蓄積部から水平転送部へ送る時間をゆっくりにしても外部からの余分な光を十分に遮ることができます。したがって、このタイプでは、フルフレームトランスファ型CCDで必要であったメカニカルシャッタの装備は必ずしも必要でなくなり、30コマ/秒の撮影が可能になりました。ただし、このカメラの場合、縦方向成分の500画素から1000画素程度を一気に蓄積部に転送しなければならない関係上、これが転送時間の限界となっています。転送のタイミングは、カメラが受光を終わって読み出しを始める垂直ブランキング期間に転送する事が多く、この期間がだいたい1ms〜2ms(1/1,000秒〜1/500秒)です。この時間では、強いスポットが被写体にある場合に依然としてスメアが出てしまう可能性があります。
いずれにしても蓄積部のあるフレームトランスファ型CCDの転送は、それほど速く機能させることができません。蓄積部のあるフレームトランスファ型CCDは、撮像素子の半分が遮光膜で覆われているので外見から一目でそれとわかります。CCD素子の初期の頃には、このタイプのものが作られましたが、スメアが現れるのでインターライントランスファ型CCDの完成とともに作られなくなりました。
 
 
■ インターライントランスファー型CCD
 I.のインターライントランスファー型CCD(IT-CCD)は、CCDの代名詞とも呼ばれる代表的なものです。このタイプのCCDは、「電子シャッタ」が行えるという画期的なものでした。もちろん開発の目的は、電子シャッタではなく、CCDカメラの特徴であるスミア(スメア)低減の目的で開発されました。電子シャッタは、VOD(Vertical Overlfow Drain)という機能を追加することで完成します。
 インターライントランスファー型CCDは、歴史的に見ると最後の方に開発されたもので、1986年には、露出時間をサブミリ秒まで制御できる電子シャッタ機能が付加されました。シャッタ機能は、我々計測屋にとってはとても好ましい機能です。通常の市販のCCDカメラでは1/10,000秒(100us)程度のシャッタ機能が設けられ、計測用のCCDカメラでは1/1,000,000秒(1us)から0.1us(100ns)のシャッタ機能を持つものも市販されています。
 CCDカメラを市販化しようとした1980年代前半は、放送規格(NTSC規格)がテレビ規格の標準でしたから、これに準拠させようとして、すなわち525本の走査線で、30枚/秒の撮像ができるように設計が行われ、そして改良につぐ改良を経て良好な製品ができるようになりました。インターライントランスファー型CCDは、そうした高速取り込み(30フレーム/秒)ができるものとして開発されました。
 インターライントランスファー型CCDの撮像原理は、【CCD撮像素子の撮像、転送原理】で詳しく触れています。
 このタイプのCCDから派生したプログレッシブスキャン型CCDカメラ(インターレース方式ではなく全画素を一気に読み出す方式のカメラ)が、工業用、計測用、コンシューマー用のデジタルカメラに受け入れられるようになっています。
 当初、2/3インチから始まった撮像面サイズも、放送局用のCCDカメラは別として、1/2インチ、1/3インチと小型化が進み、現在では1/4インチが主力製品となっています。画素数も、1982年当時は20万画素(480V x 400H)であったものが、100万画素を越えるものが市販化されるようになりました。1画素の大きさも、発売当初は、13um x 22um程度でしたが、5um x 5um以下のものまで製品化されるようになりました。
 
 
 
■ フレームインターライントランスファー型CCD
 II.のフレームインターライントランスファー型CCD(FIT-CCD)は、インターライン型でありながら蓄積部を兼ね備えたCCDであり、初期のインターライン型よりさらなるスミア(スメア)現象防止のために開発されました。テレビ放送などで、夜間撮影で街路灯や車のヘッドライトの強いスポットがカメラに入ると上下に縦の輝線が走る現象を見られたことがあるかと思いますが、あれがスミア現象です。もっともこの現象は2000年前半頃までの話で、最近ではほとんどこうした現象は見られなくなりました。この不具合を持った放送局用のカメラはもう使われていないということです。携帯電話についているカメラや安価なデジタルカメラには現在でもこの現象が現れることがあります。この不具合は、画像を垂直転送部で転送する場合に1/60秒かけて転送するので、その間に強い光の迷光が転送部に入り込んでそのためにおきる現象です。この現象をおさえる手だてとして、垂直転送部に留まっている時間を少なくして速やかに蓄積部に移す方式が考えだされました。それがフレームインターライントランスファ型CCDです。通常のインターライン型CCDは、16.67ms(1/60秒)で転送を完了しますが、フレームインターラインタイプのものは240us程度にすることができ、1/69.4倍(1.4%)に時間を短縮できるので、転送中に光が当たるのを短くすることができます。フレームインターラインは、このようにスミア低減に効果があり、高級CCDカメラ(放送局用CCDカメラ、ENG = Electronic News Gathering カメラ)に採用されています。放送局用カメラは、現在2/3インチのFIT-CCDが使われ、画素数が40万画素から60万画素が使われています。
 
 
■スミア/スメア(smear):  (2007.04.09追記)
 スミアとは、CCD撮像素子に起きる特有の現象で、光の漏れ込みによって画像の明るい点を中心に画像縦方向に縞状の強い輝線が走るものです。スミアの発生は、受光した電荷の垂直転送を行う際に順送りに電荷を転送することに起因しています。インターライントランスファー型CCDでは、垂直転送部に遮光処置を施して、入射光の影響が極力出ないように作られています。しかし、それでも100%完全というわけにはいきません。現実には受光部と垂直転送部の境界部分で遮光が完全でなかったり、撮像素子面で光が多重反射して側面から光が侵入したり、遮光幕も完全ではかったりとわずかな光の混入は避けられないのです。
 シャッタ機能を使って非常に短時間のシャッタを働かせたり(これは相対的に受光部に入る光が強くなることを示しています)、感光部の一部に輝度の高い部分がある場合、遮光を施している垂直転送部にもわずかですが影響が出てきます。通常のインターライントランスファ型CCDは、垂直転送部を1/60秒かけて画像を転送しています。つまり転送部には最大16.67ms時間分電荷が留まっていることになります。たとえ電子シャッタ機能によって1画素に1/10,000秒(100us)の蓄積を与えても、転送部で16.67msの足止めをかけられるため、光の漏れが0.01%程度あったとすると、以下のような計算によって、
 
   0.01/100 x 16,667/100 = 0.0167  ・・・(Rec -5)
 
見かけ上、1.67%もの余分な光を拾ってしまいます。これが10usのシャッタ時間だと16.7%、1usのシャッタ時間だと100%を越えてしまう、つまり露光時間に得た光量より転送時間で入射した光量の方が多くなってしまう計算になります。
 画面の中にスポットのような明るい輝度の被写体がある場合も同じような現象が起きます。明るい輝度のものは100%近い飽和電荷量でセル(画素)に電荷を蓄えます。これがインターライントランスファー型CCDで転送部に移されても読み出し期間中わずかながらも遮光漏れが生じると、本来あるべきハズのない部分に光が被るようになり、視覚上無視できない像となって現れてしまいます。初期に作られたCCDには、スメアを持ったものが多くありました。現在のカメラはスメア対策を施してあるので、よほど安価なCCDでない限りスメアを認めることはなくなりました。しかし、極限的なカメラの使い方をするとスメアが現れます。以下にその参考例を示します。
 右の写真は、計測用のCCDシャッタカメラ(インターライントランスファ型CCD)で撮影したサンプルです。白熱電球のような非常に輝度の高い被写体を電子シャッタを使って撮影する場合、1/1000秒程度までであれば特に画像に支障がでることはありませんが、電子シャッタを短くしていくと像が垂直方向に流れてしまいます。右の写真の#4は、100ナノ秒というとても短いシャッタを設定したときの画像です。(計測用のCCDカメラではそれができるのです。)100ナノ秒に露光をセットして撮影すると、非常に明るい白熱電球自体でさえも露光時間が短いため撮影されず、代わりに1/30秒の転送時間中(33.3ms = 100ナノ秒の333,000倍も長い露光時間中)に強い光が撮像面に入り続けるため(なにせ、100ナノ秒で露光を行うので相当強い光を撮像面に入れないと適正露光が得られないので)、結果として垂直方向に画流れが起る画像となってしまいます。 
 また別のタイプのCCDであるフレームインターライントランスファー型CCDは、インターライン型でありながら蓄積部を兼ね備えたCCDで、転送部に電荷が留(とど)まっている時間を最小に抑えて速やかに蓄積部に移すタイプのものです。このタイプは放送局用のENGカメラに使われているものです。通常のインターライン型CCDは16.67msで転送を完了しますが、フレームインターラインタイプのものは240us程度で蓄積部に移すことができます。こうすると、垂直転送部に留まっている時間を1/69.4倍(1.4%)に短くすることができます。フレームインターライン型CCDは、このようにスミア低減に効果があり高級CCDカメラ(放送局用CCDカメラ)に採用されています。しかし、この値は、スポーツ放送を含めた一般的な撮影には許容できる時間となるでしょうが、1usを扱う科学技術計測分野では依然スミアが出てしまう危険性があります。
 スミアは、CCD固体撮像素子を使う以上避けて通ることができない特性です。通常の画面では検知しにくくはなっていても、現実には数%のオーダーで転送中に余分な光を被って画質に悪影響を与えていると考えて良いと思います。メーカではこの点を憂慮して迷光が垂直転送部に入らないようにCCD製造工程の製造精度を上げたり(マスク合わせ誤差の低減)、受光部に効率よく光を集めるマイクロレンズを使って光を画素方向に集中させる工夫をしています。
 
 
■ブルーミング(blooming)(2000.09.16)
 bloomとは、もともとは花びらが広がるという意味です。CCDの画素に明るいスポットが当たると周辺まで光が回り込み(電荷が隣の画素にあふれ出し)にじむような現象になることをブルーミングと言います。
CCDは、構造上垂直方向に電荷が漏れやすいので光量漏れは縦方向に広がります。従って、丸いスポット輝度でもブルーミングが激しいと縦長となります。(下の右写真、天体写真の星を参照。)
 ここで気をつけなければならないのは、ブルーミングはスミアと違うということです。ブルーミングは受光部に飽和光量以上の強い光が入射して溢れだすもので、スミアは垂直転送時に入ってはいけない光が漏れ入る現象のことです。スミアの方が縦線が長くなります。
 ブルーミングを避けるには、受光部(ホトダイオード)の下部、基板面に対して、垂直縦方向に強い光によって溢れ出た余剰電荷を捨て去る構造(VOD = Vertical Overflow Drain)を組み入れて、ブルーミングの改善を施す方法があります。現在のCCDカメラは、この方式を採用して大きな効果を得ています。VOD構造は、大きな副産物も生み出しています。VOD部にある時間タイミングで掃き出しパルスを与えて、ホトダイオードに蓄えられた電荷を逐次掃き出しを行って必要時間分だけの電荷を蓄えるという「電子シャッタ」機能を付加できたことです。したがって、最近のCCDカメラは、初期の頃に比べてほとんどブルーミング現象が起きなくなりました。
 初期の頃のカメラ、つまりフレームトランスファ型CCDは、100%の開口率であるため余分な光を排除するドレインを作ることができないため、オーバーフローした電荷が右の写真のように垂れるように上下の画像に流れ込んでしまいます。天体観測用分野では、現在でもこのタイプのカメラが使われているので、ブルーミングは撮影を行う上で気をつけなければならない要素となっています。
 
 
 
■ VOD(Vertical Overflow Drain) 構造 (2008.05.07)
 CCDの開発の歴史をひもといてみますと、CCD撮像素子開発はスミアとブルーミングとの闘いだったような気がします。こうした現象をいかに抑えるかがCCD性能向上を計る上で大きな課題だったといえます。これを低減させるために、いろいろなタイプのCCDが作られてきた印象を受けます。
 ブルーミング低減の一つの方式として、受光部に溢れ出た電荷をグランドに速やかに流し去る方法が考えだされました。これがオーバーフロードレインという方法です。これは洗面所やお風呂の浴槽にあるオーバーフロードレインと同じで、あふれそうになる水を槽内の排出孔から強制的に流し去る構造と類似しています。そうしないと溢れ出た水が周りにまき散らされて水浸しになってしまいます。ブルーミングとはそういう現象なのです。
 オーバーフロードレイン構造は、初期は撮像素子の画素の横に溝を掘って排水溝を作っていました。これをLateral Overflow Drainと呼びました。しかし、この方法は、素子の受光面を掘割してドレイン回路を作るので、受光部面積が圧迫されてしまいます。
 この方法に対して、ドレイン部を素子の垂直方向に配置して受光部下部の基板に余分な電荷を直接排出する構造が考え出されました。受光部の底にドレイン孔を設けて、電荷を浴槽の下から抜いてしまおうというのがVODです。こうすれば、素子面をドレイン部(排水溝)で取られることがなく広く使うことができ、感度低減を回避することができます。また、このドレインは、水位の高さ調整を任意に行うことができ、受光槽が溢れるレベルよりも下に設定しておけば回りの槽に電荷が溢れる出ることはありません。ドレインの高さは必