奇天烈エレキテル その2. (2009.11.07) (1999.3.15書き始め) 

目次
 
2. 電気についてのデジタルな話
2-1. 計測器に使う入出力デジタル信号の話
2-2. 無電圧接点出力(リレー接点)(2000.05.6)(2004.06.15見直し)
2-3. TTLって??(2003.12.05追記)
2-4. 立ち上がり信号? 立ち下がり信号?(2000.05.13)
2-5. スレッショルド(Threshold)=しきい値(2000.10.21)
2-6. パルス幅?(2000.10.21)
2-7. 入力インピーダンス? 出力インピーダンス?(2003.12.05)
2-8. トリガ(Trigger)信号
2-9. ファイア(Fire)信号
2-10. リセット(Reset)信号
2-11. フォトカプラ、フォトアイソレータ(Photocoupler、Photoisolator)
2-12. 現実的なパルス信号入出力回路
 
 
3. 電気のキーワード説明 
3-1. 電子計測機器のキーワード
 (現在更新予定中!)
 
 
 

 
 
 
 
2. 電気についてのデジタルな話
 「奇天烈エレキテル その1」では、主に電力(エネルギー)について述べてきました。
「その2」では、電気を使った情報の通信に主眼をおいて述べてみたいと思います。
情報通信というと、我々のもっとも身近な所ではコンピュータがあり、電話があり、テレビがあり、ゲームがあります。
これらの通信はほとんどがデジタルという手法を用いています。
 
■ 信号としての電気
 我々の計測を生業としている世界では、計測機材としてコンピュータはもとより測定装置(オシロスコープや、信号発生器、信号遅延装置)をたくさん使います。
これらの装置を結びつけているのが電気信号です。それらの信号は、約束に従って双方の信号の取り決めを行っています。
 
   電気信号の伝達はどのようなものでしょうか?
 
基本的には電気を流す、流さない、電圧がかかる、かからないということで情報の伝達を行っています。
 「その1」で述べた電気は、電力という観点から述べていてモータを回したりランプを点灯させたりで電圧にも100V、200V、3000Vなどの電気量が出てきました。
しかしデジタル信号は比較的低い電圧で、しかも電気もそれほど食わないというのが特徴です。電気で使っているデジタル信号は実は単純なもので、そのパルス信号が高速化になったり、一度にたくさんのデータを送受信するため複雑になってきていると考えた方がわかりやすいと思います。
 
■ デジタル信号は、2つだけの情報
 電気を使ったデジタル信号は実に単純な情報であり、「Yes」と「No」という二つの情報しか持っていません。この簡単な情報が、現在では高性能のコンピュータを走らせ、インターネットを運用し、自動車を作り、鉄道を走らせているのです。
この「Yes」と「No」の二つの信号を、2進法という数学的な論理に置き換えてコンピュータが進歩しました。
コンピュータでは、これをbit(ビット)と呼んでいます。
 我々の業界(計測システムを扱う業界)では、電気信号の受け渡しをどういった形で渡せば互いの装置がうまく働くかということに、結構な時間と労力をかけています。ほとんどの場合、我々の電気知識がないからなのですが、ある装置から信号を送って別の信号が受ける場合、送る側の電気信号はどのような信号で送っているのかを知っておくことは重要です。5Vのパルス信号なのか、50Vの信号なのか、-5Vに振れる信号なのか、それとも電圧が全くでない接点だけの信号なのか、電流がどのくらい流れるのか、パルス信号で立ち上がる場合どれだけの時間で立ち上がるのかなど、知っておかなければならないことは結構あります。
そうしたことを理解して、受ける側も送ってきた電気信号を確実に受けなければなりません。
 計測技術に関わっている人たちが、このような電気信号について結構悩んでいるので(それにわたしも昔は随分悩んで来たので)、この機会に我々素人が陥りやすい箇所をふまえて述べてみたいと思います。 
 
 
 
 
2-1. 計測器に使う入出力デジタル信号の話
 
■ 単純な伝達
 デジタル信号の本質は、信号を通すか通さないかの「ON」か「OFF」の二通りしかありません。模式的に書くと左図のようになります。AからBへ情報を伝えるのか伝えないのか、この二つの判断をしてある時間内に決められた数だけの信号を作って伝えるわけです。
 ですから、デジタル信号を作る電子素子をスイッチング素子とも呼んでいます。スイッチング素子には、リレー素子やトランジスタ素子、MOS-FET素子、TTL素子、C-MOS素子、ECL素子などがあり、それぞれ特徴を持っています。この詳細は後で述べます。 
 
■ 複雑な伝達
 これらのスイッチング素子を多数組み合わせて情報の量を作ったり、流れを作ったりしています。たとえば、二つのスイッチング素子を組み合わせてどんな情報の流れができるか考えてみましょう(左図)。上の図は二つのスイッチング素子を直列に並べた場合、下の図は並列に並べた場合を考えます。
 直列に並べた場合は、BのスイッチとCのスイッチが同時に「ON」にならなければAの情報はDに流れないのです。このような論理をデジタル電気用語では「AND」論理と呼んでいます。
 スイッチング素子が並列に接続されている場合は、Bの素子が「ON」になっても、Cの素子が「ON」になってもいずれの場合もAの情報はDに流れます。このような論理を、デジタル電気用語では「OR」論理と呼んでいます。
 このようにして、いろいろな条件に応じてこうした論理スイッチが組み合わさってデジタル回路が構成されているわけです。
 デジタル回路の基本は、まさにこのスイッチの組み合わせです。AND回路では、例えば、果物の検査装置で、重さが200gで赤いリンゴのみ合格とする回路を作ったときに、重さ(Bのスイッチ)と赤い(Cのスイッチ)という条件の二つが揃いONになった時に情報が伝わって合格となります。
 また、警報装置で、二つの扉がありそのいずれかの扉が不法に開けられた時警報がなる回路を作ったとすると、一つの扉の警報スイッチ(Bのスイッチ)ともう一つの警報スイッチ(Cのスイッチ)のどちらかがONになっても情報が伝わるようにします。これがOR回路です。
 このように、デジタル回路は、ANDやORをたくさん組あせて入力に対して希望する出力を伝えるようにしています。
 
■ コンピュータについて
 デジタル装置の代表であるコンピュータも実はこうしたたくさんの電気スイッチとスイッチを保持するためのメモリで構成されています。そのスイッチは恐ろしく小さく精緻に出来上がっています。それも考えられないくらい高速の同期信号に従ってスイッチを入れたり開けたりしているのです。コンピュータの心臓部である中央演算処理装置(CPU、MPUと呼ばれている。代表的なものはインテルのPentium4)は、2GHz(1秒間に20億回)のパルス信号(クロック信号)によって内部スイッチを切り替えています。0.5ns(ナノ秒)という時間の単位です。0.5ナノ秒というは、1秒間に30万キロ走る光が15cmしか進まない距離です。この同期信号に従って32系統(32ビット)の信号線からの「Yes」、「No」信号を一斉に処理するわけです。1つの信号線で「Yes」、「No」の二つの情報を扱いますが、二つの信号線ではこれらの「Yes」、「No」組み合わせで合計4通りの情報を扱うことになります。これが32系統(これをコンピュータ用語で32ビットと言っています)になると42億9500万通りの組み合わせが可能になります。
 この辺の話はとても複雑で私も良くわからないので、詳しくは触れませんが、コンピュータは超高速で働くスイッチの塊と理解して差し支えありません。スイッチの塊が高度な計算をしたり、図面を描いたり、映像を表示したり、飛行機を動かしたりしているのです。このスイッチも、初期の頃は真空管、機械式リレーから始まり、トランジスタ、IC(集積回路)へと発展してきました。
 
 
 
2-2. 無電圧接点出力(リレー接点) (2000.05.06)(2004.06.15見直し)
 信号伝達に一番よく使われるのが、リレー接点です。リレー接点は、スイッチの接点を電磁ソレノイドコイルの力で接点を閉じたり離したりする素子です。リレー接点の特徴は、以下の通りです。
 
■ リレーの特徴
1. 電気的に完全に切り離されたスイッチ素子
2. 比較的高い電圧、電流を流すことができる
3. 接点に極性がない
4. スイッチ応答の遅れが10ms程度あり、トランジスタ素子に比べると遅い。
5. 機械的なスイッチングなので接触したとき接点のバウンドが起き、“チャタリング”という症状が出る
 
リレーは、水路の水門を開いたり閉じたりして水の流れを制御するのと同じようなことを電気的に行っているものです。リレー素子そのものは接点ですから電気を流したり止めたりする働きがあります。別の言い方をしますと回路を閉じたり開いたりする働きをもちます。従ってこの素子自体は電圧を作ったり電流を起こしたりすることはありません。あくまでも右から左へ電気を流すか流さないかを決めるだけのものです。
 
■ シーケンス回路
 リレースイッチは、機械的にスイッチが閉じるものですから、1秒間に5回程度のスイッチングが限度でそれ以上のパルス信号を作ることは苦手です。ですから、このスイッチは、比較的低速の制御回路(シーケンス回路)に使われます。シーケンス(Sequence)とは、連続した流れ、連鎖という意味の英語で制御回路でよく使う言葉です。例えば、タンクの中の温度が40度になったら冷水を入れて30度まで冷やすとか、品物が通過したらそれを振り分けるとか、そうした一連の決められた流れを電気的に行う場合に電気回路を組むわけですが、その回路のことをシーケンス回路と呼んでいます。
 
■ リレー素子の動かし方
 リレーの模式図を左図に示します。制御を受け持つ信号(制御信号)には比較的低電圧の6VDCから24VDCが使われます。大型制御盤では商用電源(100VAC)を使用することもあります。これは別途直流電源を作らなくてすむメリットがあるからです。リレーの種類によってはコイルに流す電源が直流(DC = Direct Current)用のものと交流(AC = Alternate Current)のものがあります。DC用のリレーに交流を流すとベルのように接点部が発振してしまいます。模式図からもわかると思いますが、制御信号として電源がコイルに流れるとコイルの電磁誘導作用により接点を動かすための可動部が動いて接点を閉じます。接点を閉じるのに時間が5-10ms程度かかります。従って、この遅れ時間を考慮した回路の設計を行う必要があります。
 下の図は、リレーを使った応用例です。乾電池程度の低電圧信号で、100VACの大電力負荷を制御できるというのがリレースイッチの特徴です。点灯スイッチを押すと、乾電池からの電気でコイルに電流が流れリレー接点を「ON」にして負荷回路が閉じ電流が流れます。点灯スイッチは手動ボタンでも良いですし、別の機械からのスイッチ信号でも良いわけです。例えば、ドアにスイッチを設けておいて、ドアが開いたときに100Wのランプが点灯するとか、1秒間に2回程度の割合でスイッチをON・OFFさせるタイマーを点灯スイッチの代わりに接続して100W電球をフラッシャー(点滅点灯)として使うこともできます。
 また、負荷をモータに代えたり、電熱器に代えたりして使用することも可能です。
 下の例は、点灯スイッチがONしたときにリレーもONになるリレースイッチですが、逆に点灯スイッチがONしたときにリレーがOFFになるリレースイッチもあります。前者をN.O.「Normally Open、常時開」タイプといい、後者をN.C.「Normally Closed、常時閉」タイプといいます。また点灯スイッチ一つで複数のリレーを動かす多接点リレーもあります。
2-3. TTLって?? (2003.12.05追記)
 電気信号の話をしていると、TTL信号(ティーティーエルしんごう)という言葉を良く聞きます。
「データを取り始める起動信号はTTL信号で行います。」という具合です。
このTTLというのは何でしょう?
TTLというのはTransistor Transistor Logicという英語の略語です。砕いて言えばトランジスタ技術を使った電気信号の規格のことで、この規格を基にしていろいろな働きのあるICチップ(AND、OR、NOTなどの論理回路チップ)を作って共通化してデジタル回路を作りやすく使いやすくしようというものです。同じようなデジタル信号ロジックの規格にはC-MOS(シーモス)とかECL(イーシーエル)という規格もあります。しかし我々が一般的に使っている電気計測装置ではTTLというのが一番なじみやすい規格です。
 
■ TTLは5Vの信号伝達
 TTLの取り決めで我々にわかりやすいのは、 
(1) 使用電源電圧として5V±5%を使う
(2) 信号の「H = High」は、2.4V〜5.0V、「L = Low」は0V〜0.4V。
    (0.4V〜2.4Vは中間の値で信号として扱わない)
(3) 信号周波数 30MHz程度
   (中にはより高速の200MHzに対応するアドバンスドショットキTTLもある)
(4) 使用する電流は1つの素子当たり10mAと大きな電流を必要とし、乾電池やバッテリでは使用が不安。
   しっかりとした電源が必要。
(5) 入力部は、相手がLow信号の時相手に1mA程度の電流を流している。Highの時にはほとんど流していない。
(6) 出力部は、自分がLow信号の時には電流が流れず、トランジスタのスイッチとして働きます。
   従って、次段の素子からの電流が流れ込みます。
   流れ込む電流は、自分のトランジスタの性能によって決まり、約16mAとなる。
   自分がHigh信号の時には、外部に自分の電流を最大35mA程度まで流すことができる。
(7) 入力部に接続する場合1mA以上の電流が流せるような回路を構成しておく。
 右図をご覧下さい。なにやら難しい回路ですが、TTLを知るためにはどうしても避けて通ることができないので敢えて掲載します。
 信号を伝えるというのは一方向的なものではなく、相手の信号(電圧、電流)を受け入れていることがわかります。
 
■ TTLインバータ素子の回路
 左に示した回路は、TTL素子のインバータ(反転素子)と呼ばれているものです。下の三角形の図が論理回路を表していて入力部Aと反対の信号を出力部Yから出力するものです。この回路には左に示したように4つのトランジスタ(Q1〜Q4)が使われています。
 
【TTL素子の入力】
 入力部Aは、トランジスタQ1を介して信号を受け付けます。A部の電圧は、電源Vccが4KΩの抵抗を介して電圧がかかっています。その値はトランジスタQ1の電圧ドロップ分を見込んで4.4V程度です。
 左図のようにリレーのスイッチなどでA部の入力をLow信号とした場合、リレーには、TTLインバータ素子から4KΩの抵抗を介して約1mAの電流が流れ込みます。逆いうとこの素子の入力部Aから外部に約1mAの電流が流れることになります。入力部がリレーのスイッチ素子であれば話は簡単ですが、この部分に40KΩのような高い抵抗がつきますと、A部は電圧が下がらないためにYの出力がHighに変わらないという問題が出てきます。理由はQ1トランジスタには4KΩの抵抗が入っているので40KΩの抵抗をQ1トランジスタの後に接続すると分配の法則によってA部には4V程度の電圧になってしまうからです。従って、入力部Aに接続するスイッチ回路は数百Ω以下に抑える必要があります。
 
■ TTL素子の出力
 インバータ回路は、トランジスタQ1が常時ONになっていて、A部がLowになると、Q2のベースに印加される電圧は電位が下がるためQ2はOFFになります。Q2がOFFになると、Q4のトランジスタのベースには電圧がかかりませんから、Q4もスイッチとしてはOFFとなります。トランジスタQ3は、Q2がONの時はONになっていますから、Q4のスイッチOFFによって、Yには130Ωの抵抗を介して5V(性格にはトランジスタQ3の電圧降下分を考慮して4.5V)の電圧出力(すなわちHigh)となります。Y部の出力電圧は130Ωの抵抗を介して最大35mAの電流を流すことができます。
 
■ インバータ回路の入力がHighの時
 この回路の入力部がHIgh、もしくはオープンで開いていたらどうなるでしょうか?オープンというのは上図のA部に接続されているリレーが開いている状態です。
 Q1は、いつもONの状態ですが、A部を介して外部に電流が流れないのでQ2のトランジスタベースは電圧が加わりONの状態になります。これが、A部の入力がLowの時と違う点です。Q2のトランジスタがONになると連鎖的にQ4のトランジスタもONになり、Q2のONによってQ3のベースに加わる電圧が変わりOFFとなります。 従ってA部がHighの時は、Q4のトランジスタがスイッチとなりこれが閉じてY部はLowとなります。この時、Q4はスイッチですから次段からの電流を吸い取って流すことができます。この時の流してよい電流は、Q4のトランジスタの性能によって決まり、約16mAです。
 
【上記説明に対し2003.10.26付けでT.Mさんより適切なコメントをいただきました。このコメントを下に上記記述を書き改めました。T.Mさんありがとうございます。彼のコメントは[訪問者からの声 No.384]に記載されています。(2003.12.05)】
 
 
2-4. 立ち上がり信号? 立ち下がり信号?(2000.05.13)
 電気信号の伝達は、TTL(Transistor Transistor Logic)に代表されるように電圧の高低(High、Low)で決まることが前項の説明でわかりました(実際には電流が流れることにより電圧値が変わり信号情報としています)。電圧の高低の維持を確実にするために、TTLではしっかりと電流を流さなくてはならないこともわかりました。信号を伝達する際に、信号がLowからHighに変わる時、電圧は0Vから5Vに上がるためこれを立ち上がり信号(Active High信号)と呼んでいます。また逆に5Vから0Vに下がるときには立ち下がり信号(Active Low信号)と呼んでいます。デジタル信号では、状態を表す信号が大事な時と、信号が変わる時が大事な場合の二通りが考えられます。
 高速度カメラを含めた計測装置では、信号を取り込むタイミングがもっとも大事で、信号をもらっていつ撮影をしたらよいかとか、照明装置であるフラッシュ光源をどのタイミングで発光させるかなどが論議されます。この場合の信号で大事なことは信号の状態ではなく信号が変化するタイミングなのです。
 
 ■実際の事例に見る立ち上がり信号
 左の図は、金づちを用いたガラスを割る瞬間現象の撮影を行う時に使うタイミング装置の事例です。この事例では、金づちがガラス面にあたる瞬間に金づちの下面とガラス上面に設置されたアルミ箔が電気スイッチの働きをなし、回路が閉じます。このときトリガ信号取り出し口からは0Vから電源電圧まで上がるトリガ信号が作らます。この低い電圧から高い電圧に変わっていく信号を「立ち上がり信号」と言っています。
 こうしたトリガ信号はクセノンフラッシュランプを発光させる時のタイミング入力信号(トリガ入力信号)として使われます。実際の応用では、トリガ信号がきれいではなく、どの信号のレベルでトリガをかけるのか問題になります。また、信号を波形整形して別の信号、例えばTTL信号にしたり、フォトカプラ-(フォトアイソレータ)と呼ばれる素子で電気絶縁をしたりしてフラッシュなどの電気計測機器に合う形に直す必要もあります。
 
■実際の事例に見る立ち下がり信号
 右の図はガラスに「くさび」を入れて上から金づちで叩いて亀裂破壊を起こさせる事例です。予め亀裂が走る部位に導電性の塗料で線を描いておきこれに電圧をかけます。くさびでガラスに亀裂が走り導電性の線が寸断したときに回路が開いて電圧が落ちます。このときの電圧の下がる信号を「立ち下がり信号」と呼んでいます。
 右図では、最初の状態では電源からの電圧は抵抗を介して閉回路になっていて、トリガ出力部は電源電圧がかかっています。「くさび」によって導電性塗料の回路線が遮断され電圧が加わらなくなるため電圧は0Vに落ちます。実際の応用ではトリガ信号はきれいでない場合が多くノイズ成分を除去して必要なタイミングで計測装置に信号を渡す必要があります。また、信号を波形整形して別の信号、例えばTTL信号にしたり、フォトカプラ-(フォトアイソレータ)と呼ばれる素子で電気絶縁をしたりしてフラッシュなどの電気計測機器に合う形に直す必要もあります。
 
■ デジタル回路の「クロック」
 コンピュータや、デジタル回路を用いた装置では良く『クロック = clock』という言葉を耳にします。人間の社会の営みの多くは(都会であればあるほど)、時間と共に行動しています。会社の出社時間が何時何分であるとか、会合は何時にやるとか、電車には何時何分に乗るとかいった具合に時間のタイミングで組織も個人も行動しています。コンピュータを含めたデジタル回路の多くは装置の中に『クロック』を内蔵しています。このクロックの作る発振周波数で回路のいろいろな部位を動かしたりトリガ信号を受け付けています。
 従って、極端な話、クロック周波数が1Hz(1秒間に1回)であった場合、トリガ信号が入ってきても最大1秒間は回路は何も動作できないことになります。
 
 
 
 
2-5. スレッショルド(Threshold)=しきい値 (2000.10.23)
 スレッショルドという言葉は日本人にはなかなか言いづらい言葉です。パルス信号は「ON」と「OFF」の二通りの信号しかないことを前に述べましたが、では、どの信号のどの時点で「ON」とし、どの時点から「OFF」とするかの区切りを決める必要があります。我々の世界でも物事を二つに分けるときに基準になる値を設けていますがスレッショルド値はこれと一緒です。「テストで80点以上は合格」という具合に一つの目安を設けるわけです。その区切りの値を電気の世界では、「閾(しきい)値」英語でThreshold = スレッショルド という言葉で言い表します。
 TTLと呼ばれるパルス電気信号の取り決めにもスレッショルド値があり、「1 」になる信号は、2.4V以上(5.0Vまで)で、「0」になる信号は0.4V以下(0Vまで)となっています。従って、その間の電圧、0.4V〜2.4Vはどっちつかずの情報となってしまいます。TTL信号ではしっかりとした電圧状態になるように回路を組まなくてはなりません。TTL規格の素子を使って回路を組めばどっちつかずの信号が作られることはありません。問題は、TTL回路に外部から信号を入れてやるときの方法です。
 
 
 
 
 
2-6. パルス幅 (2000.10.23)
 パルス信号を作るとき、パルス巾をどのくらいにしたら良いかということに悩みます。パルスの巾は決定的に重要な要素ではありません。信号を認識する場合、その多くはパルスのエッジ(立ち上がりや立ち下がり)が重要な意味を持ちます。強いて言えば立ち上がりと立ち下がりの時間で最小のパルス巾が決まると言っていいと思います。
 パルス巾が論議されるのは以下のような電気信号が要求されるときです。 
 
1. 一定のパルス巾を作ってその間に別系統から信号が入っても受け付けないようにする。
2. パルス巾を規定することにより受け付ける回路にノイズ対策を施した回路を付加することができる。
3. クロックを作るときの設定パルス巾によって最高周波数が規定される。
 
 
 
 
 
2-7. 入力インピーダンス? 出力インピーダンス?(2003.12.05)
 上のTTL信号の所でも触れましたが、電気素子が働く場合に、その素子を動かすために必要な入力電力と、素子が外部に出すための出力電力を素子の抵抗で表すことがあります。出力インピーダンスとは、その素子が外部に対して取り出すことのできるの電力を、素子のインピーダンスで言い表したものです。インバータTTL素子の場合、出力インピーダンスは130Ωになっています。つまりインバータTTL素子は、外に5V、130Ω、つまり38mA程度の電流を流してやることができるのです。入力インピーダンスとは、素子が外部から仕事を受けるときの抵抗値でインバータTTL素子の場合、4KΩになっています。つまり、この素子は5V、4kΩで電流が外に流れることによって信号を受け付けますから電流値は、1.2mA程度になります。
 
 
 
2-8. トリガ(Trigger)信号
 
 
 
2-9. ファイア(Fire)信号
 
 
 
2-10. リセット(Reset)リセット信号
 
 
 
2-11. フォトカプラ、フォトアイソレータ(Photocoupler, Photoisolator)
 
 
 
2-12. 現実的なパルス信号入出力回路
 
 
 
 
 
 
C-MOSって何?
 
 
デジタル装置

 
 
 

 
 
【参考文献】
『Getting Started in Electronics』 Forrest M. Mims, III Radio Shack
『役立つエレクトロニクス知識200』 白土義男 1989.12.21 日本放送出版協会
『IC利用工作のノウハウ』 白土義男 1981.10.20 日本放送出版協会
『ディジタルIC工作のたのしみ』 白土義男 1984.12.20 日本放送出版協会
『便利な電源』 丹羽一夫 1979.11.20 日本放送出版協会
『新版 電気の技術史』、1992.12.18 山崎俊雄、木元忠昭 共著、オーム社
 
  
 
 
 
 
 
 
 
3. 電気のキーワード説明
 
3-1. 電子計測機器のキーワード
 (現在更新予定中!)
TTL
MOS
ECL
IC
入力インピーダンス
出力インピーダンス
立ち上がり・立ち下がり信号
スレッショルド
オープンコレクタ出力
メイクコンタクト信号
無接点信号
トランジスタ
フォトトランジスタ
フォトカプラー
フォトインタラプター
光ファイバー
半導体レーザ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3-2. 電気機器
 
白熱電球
照明器具
ヒータ(抵抗加熱、アーク加熱、誘電加熱)
電磁石
モータ
信号機
通信機(真空管の発達、電力増幅、発振)(真空管から固体素子)
 
 
 
 
 
 
 
3-3. 電気信号計測機器
 
テスター
デジタルマルチメータ
オシロスコープ
テレビモニタ
コンピュータ
 
3-4. 電源
 
AC-DC電源
スイッチングレギュレータ
 
 
 
3-5. パソコン通信
モデム
RS232C
RS422
SCSI
イーサネット
GPIB
カレントループ
バス
 
 
 
 
3-6. メモリ
ダイナミックRAM
スタティックRAM
プログラマブルROM
ビット・バイト・ワード
 
 
 
 
 

 

 

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