その1. シュリーレン撮影法
 - Schlieren Photography
(2017.05.07更新)

衝撃波動画 (高山和喜先生提供)

 
 
 シュリーレン撮影法は、気体や液体(もしくは透明体)の密度差を目に見える形で表す可視化手法です。
 
 エンジン燃焼時の混合気の混ざり具合や燃料の流れ、翼の気流の可視化、放電の熱流動、熱伝達、対流、衝撃波、ビル風の可視化、など、流れの可視化研究に非常によく使われています。
これらの研究を行っているところは、まず間違いなく凹面鏡や水銀ランプ、レーザ光源、ナイフエッジ、カメラを持っています。
 
上の動画(QuickTime 動画)は、アジ化銀の水中爆破の様子をシュリーレン(シャドウグラフ)法により100,000コマ/秒で撮影したものです。
水中での衝撃波伝播の様子がよくわかります。
この映像は、東北大学衝撃波工学センター(高山和喜教授)(1994年)の協力を得て撮影しました。
 
 シュリーレン撮影とともによく行われているのが『シャドウグラフ(Shadowgraph)』法です。
シャドウグラフは、読んで字の如く影絵写真です。シュリーレン手法が開発される前に使われていました。
火花点火の光源(スパーク光源)が開発されて、衝撃波の研究にシャドウグラフ法が使用されてきました。
当時のシャドウグラフ撮影は簡単な撮影法であり凹面鏡も凸レンズもつかわずに火花点火の点光源とスクリーンだけを用い、両者の間に対象物(弾丸)を挟むような光学的レイアウトで撮影していました。
 
 シュリーレン手法とシャドウグラフの違いは、シュリーレン法がナイフエッジで主光束をカットするのに対し、シャドウグラフ法はナイフエッジを使用しません。
シュリーレン手法は、微小な密度ムラを敏感に可視化することができます。
 
 
 
 
【シュリーレン法】
 シュリーレンという言葉は、ドイツ語の“Schliere”から来た言葉で、空気やガラスの中にできる光学的なムラという意味です。
レンズや鏡のムラを調べるために、ナイフエッジを用いた光学的な手法を考え出したのはJean Bernard Leon Foucault(フーコー:1819 - 1868)で、1859年のことです。
これをドイツ人物理学者August Joseph Ignaz Toepler(1836 - 1912)が5年後の1864年に応用して、流れの可視化に成功しました(『流れの可視化ハンドブック』流れの可視化学会 編、1986年)。
英国人William Henry Fox Talbotは、1851年に大気中の火花放電を使って瞬間写真撮影に成功し、8年後には、弾道研究に瞬間光源を使ったシュリーレン手法を導入しました。
 
 
 
長年、高速度撮影の技術アドバイスをしてきますと、大学研究室や研究機関の研究者たちから、
思うようにシュリーレン撮影ができないという話をたくさん聞きます。
一番多い相談は、
 
ピントが甘い、きれいな写真が撮れない
 
という相談です。
 
1960年から1970年代のお客様は、シュリーレン装置を扱う製造業者からシュリーレンレンズとカメラ(銀塩感光フィルムカメラ)、ナイフエッジ、点光源装置を1式で納品されていましたので撮影は問題なく行えました。
しかし、1980年代になって高速度カメラや通常のビデオカメラが一般的になり昔のシュリーレン装置に取り付けて使い出したため、これら映像機器をユーザ自身で組み上げなくてはならなくなって、上述したような問題が出てきたものと思われます。
シュリーレンについて書かれた本はそれほど多くありません。
朝倉書店が出している『流れの可視化ハンドブック』(流れの可視化学会 編、1986年、 \24,000)は、シュリーレン撮影を原理から定量化まで図や写真を多く使ったもっとも詳しい説明のある書物です。
図書館などでこの本を調べてみて下さい。なければ書店に問い合わせて注文されると良いかと思います。それほど価値がある書物だと思います。
 
ですが、光学知識がそれほど深くない人にはちょっと難しい書物でもあります。
このウェッブサイトでは、私の体験を通して失敗したことや、多くの事例を通して現実的なお話をしようと思います。 
 
基本的なシュリーレン撮影法光学レイアウトを上の図に示します。
シュリーレン光の流れは、図の中の上から下に進みます。
まず点光源を作ってこれをきれいに拡げます。
広げた光束をコリメータレンズで平行光束にしてこの光束に対象物(可視化したい物体)をくぐらせて、再度コリメータレンズを使って平行光束を収束させカメラ、もしくは像を写すスクリーンに導きます。
平行光束が被写体を通過するとき、密度の差に応じて平行光に乱れができそれが不均一な像(シュリーレン像)となります。
シュリーレン撮影のキーポイントは、一般的な撮影と違って、被写体を写し出すのに「透過平行光束」を使うことです。
きれいな平行光を被写体に通過させて、微少な密度変化を可視化させるというのがミソです。
 
 下の写真が、シュリーレン写真のサンプルです。
  
米国ロチェスター工科大学Andrew Davidhazy教授ホームページより提供
By courtesy of Prof. Andrew Davidhazy of Rochester Institute of Technology
http://www.rit.edu/~andpph/exhibit-3.html
上の写真の注目すべきところは、ろうそくの炎と揺らぎを同時に撮っていることです。
どうやって撮っているんでしょう?
それと右の写真は、カラーシュリーレン。
密度の変化の無いところが青、
そして、密度により揺らぎが左右に振れると赤と緑に加色されます。
 
 
 
 
■ ピントが合わない
 
 シュリーレン撮影は、
 
1. 点光源の平行光学系 (点光源とそれを拡げる光学系、平行光束を作るコリメータレンズ)
2. 集光光学系 (平行光束を集光させるコリメータレンズとナイフエッジ)
3. カメラの撮像光学系 (平行光束を集光させるコリメータレンズとカメラレンズで作られる光学系)
 
の3つを同時に満たさなければならない光学系です。
シュリーレン撮影法で陥りやすいミスは、
 
・平行光だから撮影はどこでもピントが合っているだろう。
・カメラレンズなんか無くたってピントは合うだろう(撮影はできるだろう)。
・スクリーンを張って一番よく見えるところにスクリーンを置いて、これをカメラレンズで見れば撮影できるのではないか。
 
というものです。
たしかにどれも正しそうに見えます。しかし、この条件は、平行光線が絶対に平行であることが条件です。
現実には、シュリーレン光は平行光線になってはいないのです。
きれいな平行光線であるためには、以下の条件をクリアしなければなりません。
 
・ 光源がしっかりした点光源でないと平行光にならない。
・ コリメータ(凹面鏡、凸レンズ)が精度よく作られていないと平行光にならない。
・ コリメータ(凹面鏡、凸レンズ)の位置が正しくないと平行光にならない。
・ コリメータ(凹面鏡、凸レンズ)の間の大気やガラス窓被写体に密度ムラがあると平行光にならない。
・ シュリーレンは、被写体(透明媒質)の密度変化を可視化するものだから、
  当然部分的に平行光になっていない(光屈折した部位がある)。
 
これからわかるように、カメラに入ってくる集光された光は実はかなり散乱されていることがわかると思います。
シュリーレンでは平行光の主光束(メインの光)をカットしてしまいますから、散乱光そのものです。
ですから、被写体をとらえるカメラレンズは平行光束だから無くてもいいという考え方を捨てて、
カメラレンズを使ってしっかりピントを合わせをしなければならないわけです。
 
 私が、初めてシュリーレン光学系に出会ったのは40年近くも前(1978年)のことです。
大学の燃焼研究室に納入するφ150mm凹面鏡(1組2枚)と150W水銀灯(点光源)を使った高速度カメラ(米国Cordin社Dynafax350)装置を担当しました。Dynafax350は、最高35,000コマ/秒の撮影ができる224枚撮り(記録時間6.4ミリ秒)のロータリーミラータイプのカメラです(詳細は「歴史背景とトピック - ロータリーミラー式カメラ」を参照して下さい)。このカメラは、内部光学系が長く、カメラレンズから入った光束がフィルム面になかなか到達せずに大変な苦労をした記憶があります。
このシュリーレン光学系を使った高速撮影で、
 
・ピントが合わない
・光束がうまくフィルム面に到達しない
 
という問題に直面しました。この体験を通じて、
  「ピントについては、シュリーレン撮影ではどこでもピントが合う」
と言われている通念はウソで、カメラレンズのフォーカスをしっかりとらなければならないことを学びました。
 
 シュリーレン撮影は、実は、平行光にあまり神経質にならず(現に被写体で屈折して平行光束にはならない)、被写体とカメラの間の撮影距離を取って撮影のための結像光学系をしっかりと作ればよいことがわかります。こうしておけば、少々点光源が甘くても、また、コリメータ光学系の精度が悪くてもピントが合うのです。
 
平行光束に神経を使うよりも、撮像光学系に神経を使え。
 
これがアドバイスの第一です。
 
 カメラレンズとシュリーレンレンズ( = コリメータレンズ、特に第二 = 出口のレンズ)によってできる像について考えてみましょう。
下の図が被写体と凹面鏡の作る像の関係図です。シュリーレン光は、被写体を平行に透過する光だけが射出側の凹面鏡に到達して反射されると思いがちですが、実は、被写体部分で密度差があり、その密度差のために被写体を透過した平行光は屈折します。
従って、射出側の凹面鏡で反射される被写体からの光束は散乱光束と考えなくてはなりません。
下の図の例で説明します。被写体を凹面鏡から a だけ離れた位置に置きます。
a が凹面鏡の焦点距離より短い位置にあるときは、被写体像は凹面鏡の反対側 b の位置にできます。これは虚像です。
凹面鏡を覗くと、鏡の奥に被写体像が見えています。鏡の奥にホントの像が無いのに、あたかも像があるように見えるので虚像と呼ばれる所以です。凹面鏡の虚像は、ほんとうの被写体よりも大きく見えます。(反対に凸面鏡を使うとその虚像は小さく見えます。)その大きさの度合い(この度合いを倍率と呼びMで表す)は、
 
M = b / a
です。
 a が焦点距離の半分の位置(a = f/2)にあると、 b は -f の位置、すなわち、鏡の奧の焦点距離の位置に虚像ができます。このとき虚像の大きさは、2倍になります。
 
ここで言いたいことは、
 
対象物(被写体)は、ゼッタイに凹面鏡の焦点距離fより近くに置け
 
ということです。焦点距離fより遠くに置くとまずいことがおきます。
 
 以下に、その関係式を述べます。
 
 
 a(被写体の位置) 
 b(像の位置) 
 虚像/実像 
倍率 M(b/a)
1/4 f
-1/3 f
虚像
4/3
1/2 f
- f
虚像
2
3/4 f
-3 f
虚像
4
9/10 f
-9 f
虚像
10
-
11/10 f
11 f
実像
10
12/10 f
6 f
実像
5
15/10 f
3 f
実像
2
2 f
2 f
実像
1
凹面鏡(焦点距離f)の被写体位置(a)と像位置(b)の関係
 
  
 
 先に、被写体を凹面鏡の焦点距離fの位置より近くに置けと言いました。
上の表の水色の表が被写体を焦点距離fより遠くに設置した場合の関係です。
この場合、像は実像としてカメラを置く側に結像します。
実像ですからそこに紙やスクリーンを置けば像が見えます(人間の目では見えません)。
また、カメラレンズ無しのカメラの結像面(フィルム面やCCD撮像面)をそこに置けば像が得られます。
ただし、その実像はかなり遠いところにできています。
 
「流れの可視化ハンドブック」を見ると、私が述べていることとは反対の事が書かれています。つまり、
 
    被写体を凹面鏡の焦点距離fの位置より遠くに置け
 
と。結論から申し上げますと、これを書いた人は、シュリーレン業者が納入したシュリーレン用のカメラレンズを使用している人です。シュリーレン像を感度よくとるには、被写体をできるだけ遠くに置いて密度差による屈折巾を大きく必要があるからです。私どものように、通常のカメラレンズ(Nikonレンズ、Pentaxレンズ、Cマウントレンズ)や使い勝手を優先したズームレンズを使っている人には、絶対あてはまらない事柄です。これは肝に銘じて欲しいと思います。
理由を以下に述べます。
 
 
【被写体を焦点距離より遠くに置いた例】
 
 上の図の「凹面鏡結像図2」を参考に以下のことを考えてみましょう。
2000mmの焦点距離をもつ凹面鏡を使って、凹面鏡から3000mmの位置に被写体を置きます。
上の表から凹面鏡によってできる実像は、焦点距離の3倍、つまり6000mmの位置にできます。
凹面鏡の位置から6メートルの位置にフィルム面をおけば、そこでピントが合います。
しかし、6mも離れた位置にカメラを置くのは現実的ではありません。
カメラは通常凹面鏡の焦点距離(ここでは2000mm)近傍に配置するからです。
その理由は、点光源像がこの凹面鏡の焦点距離(今回は2000mm)の位置に集光するため、
この位置にカメラをおいた方が光を有効にフィルムに収めることができるからです。
シュリーレン撮影では、点光源像、被写体像の二つの像の成り立ちを撮像面(フィルム面、CCD面)について考える必要があり、この二つの条件を満たしたものが最適な光学レイアウトとなります。したがって、点光源像を撮像面に有効に写すには凹面鏡の焦点距離近傍に置くのがベストです。
 また、6メートルも離れた位置にカメラを置いたのでは、200mmの被写体が400mmに大きくなってしまい、一辺40cmのフィルムを使わないとすべてを納められなくなります。
 
 そこでカメラレンズの登場です。被写体像が凹面鏡によりカメラ側に実像を結ぶときのカメラレンズの働きは、カメラの位置より遙か後方に結ばれた像を近くに結ばせてフィルム面に結像させることです。
 
上の例「凹面鏡結像図2」の続きです。
 カメラレンズを置く位置を凹面鏡から下流の位置2000mm程度に起きます。ここはシュリーレンの平行光束が集まる凹面鏡f=2000mmの焦点位置です。
凹面鏡の上流3000mmに置かれた被写体は、下流の6000mmの位置( b )にできるので、カメラレンズにとっては、レンズの後方4000mm(b - f)にできることになります。
カメラレンズの焦点距離(fc)と実像ができる位置 c は、以下の式で求まります。
 
1/(b - f) + 1/c = 1/fc
 b - f = -4000
(最初の像の位置がレンズの手前にあるときは+、後方にあるときは-の符号をつけます)
 
1/c = 1/fc + 1/4000
 
この関係式を下の表にまとめました。
 fc 
 c 
被写体倍率 Mo( = 2c / 4,000
100
97.6
0.0488
200
190.5
0.0953
300
279.0
0.140
400
363.6
0.182
凹面鏡による実像撮影の関係表
カメラレンズ(fc)による最終像の位置(c)と像の倍率(Mo)
(2001.05.06 K大学M先生より指摘を受け被写体倍率を修正)
 この表をよく見てください。cの値です。cの値はfcより大きくなっていませんね。つまり、
 
フィルム面の位置は、どのレンズを使ってもレンズ焦点距離よりも短くなっています。
 
 上の文の意味は、一般のレンズではこの位置関係での結像はできない、ピントが合わないことを示しています。下図にその説明図があります。
ニッコールレンズやペンタックスレンズ、Cマウントレンズなどのカメラレンズは、自然界を撮影する関係上、レンズは無限遠以上の撮影はできないようになっています。つまり、カメラレンズの無限遠(∞)の位置がカメラレンズが一番フィルム面に近い位置、言い換えると、レンズがフィルム面に対して焦点距離の位置にある時なのです。通常のレンズはどのようにしてもレンズをこれより近くに持ってくることはできません。
 これが、私が "被写体は凹面鏡の焦点距離よりも近くに置け"と言っている理由です。
 
 被写体と凹面鏡の位置がどうしても焦点距離より遠くなるレイアウトになってしまう場合は、
市販のカメラレンズを使うことをあきらめてシュリーレン用のレンズを買い求めて下さい。特注を請け負う会社で作ってくれます。
こうしたレンズは撮影距離(∞)という考えがないレンズですからピントが合うようになります
 
 
 
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■ シュリーレン法の原理
 それでは、実際のシュリーレン装置について、細かく見ていきましょう。下の図は、一般的なシュリーレン撮影を構成しているそれぞれの部品についてのレイアウトです。
 
 
 
 
■ 結像の原理
 先にも述べましたが、シュリーレンの像には、
 
・点光源像
・被写体像
 
の二つがあることに注意して下さい。
 点光源像は、(2)のピンホールから始まって、(3)(4)(5)(6)(7)を通してナイフエッジで集結する像です。
点光源像の倍率は、第一凹面鏡(4)と第二凹面鏡(5)が同じ焦点距離であるかぎり等倍になります。
つまり、ナイフエッジ(7)が置かれる位置の点光源像は、ピンホール(2)からでた点光源と同じ大きさになっているはずです。
実際には被写体のところで密度差が生じて屈折しますから、ナイフエッジ部(点光源の像位置)は乱れた光束が集まることになります。
点光源像はナイフエッジ部(7)で収束し、カメラレンズを通って撮影面に投影されます。点光源像は、撮影面には結像されるのではなく投影されます。
 ナイフエッジ部にできる点光源像は、カメラレンズの直前に置かれているために撮像面には決して再び像を結びません(もっとも、再び像が結ばれれば撮像面では点になってしまうので使いものになりません)。
このことから、撮像面にできる点光源像の大きさ(φL)は、以下のような関係式から導き出されます。
 
 結論は、点光源像の撮像面での大きさは、使用するカメラレンズ焦点距離の1/10となります。
ナイフエッジ、カメラレンズと光源像の関係
 (2001.05.06 K大学M先生より指摘を受け被写体倍率を修正)
 
 
 上図の考察は面白い関係を提供しています。
つまり、シュリーレン点光源像は、ナイフエッジの位置(m)によらず使用するカメラレンズの焦点距離の1/10の大きさになる
という関係を教えてくれます。
2/3インチのCCDを使う場合CCD撮像素子の大きさは8.8mmx6.6mmなので、f = 66mmのカメラレンズを用いれば素子に内接するシュリーレンの円形の像が得られることになります。
従って、カメラレンズにf66mm - f100mm程度のズームレンズを用意しておけば、希望する撮影倍率のシュリーレン撮影ができることを教えています。
 
 
ナイフエッジからレンズ中心までの距離(mm)
fc
カメラレンズ焦点距離(mm)
φ L
撮像面にできる点光源像径(mm)
10
25
2.5
 
50
5
 
100
10
 
200
20
 
300
30
20
25
2.5
 
50
5
 
100
10
 
200
20
50
25
2.5
 
50
5
 
100
10
 
200
20
100
25
2.5
 
50
5
 
100
10
 
200
20
ナイフエッジからの距離(m)とカメラレンズ焦点距離fcと
点光源像径(φL)の関係
 
カメラ
イメージサイズ
適正レンズ焦点距離(fc)
Roper CR/HG カメラ
8 x 6 mm
60 - 100mm
Ultima 40K(Kodak HS4540)
10.2 x 10.2 mm
100 - 150mm
MEMRECAM Ci
4.9 x 3.6 mm
35 - 60mm
E-10 16mm高速度カメラ
10.2 x 7.4 mm
75 - 130mm
ウルトラナック
14 x 14 mm
150 -180mm
35mmライカカメラ
36 x 24 mm
240 - 430mm
35mm高速度カメラ
24 x 18 mm
180 - 300mm
4 x 5インチカメラ
127 x 102 mm
1000 - 1620mm
高速度カメラと適正カメラレンズ焦点距離(fc)の関係
 
上の表は、高速度カメラをシュリーレンに使用した場合の適正レンズを示しています。
焦点距離の短いレンズを使うと小さく写り、長いレンズを使うと大きく写ります。
 
 
 
●被写体像
 
 光源像の大きさが決まったら次は被写体像のピント位置です。
これは、■ピントが合わないという項目でさんざん述べてきましたので、そちらを見て下さい。
大事なことは、何度も言いますが、凹面鏡の焦点距離以内に被写体を置け、遠い場合にはシュリーレン専用のカメラレンズを使え、ということです。
  
虚像の位置 (b)
カメラレンズ 焦点距離
被写体倍率 Mo
被写体(100mm)の像面での大きさ
1,000
25
0.025
2.5
 
50
0.051
5.1
 
100
0.11
11
 
200
0.22
22
3,000
25
0.025
2.5
 
50
0.051
5.1
 
100
0.10
10
 
200
0.21
21
9,000
25
0.025
2.5
 
50
0.050
5.0
 
100
0.10
10
 
200
0.20
20
凹面鏡(f=1,000mm)による虚像撮影
カメラレンズ(fc)による最終像の大きさと像の倍率(Mo)
 
 
 虚像の位置 (b)
カメラレンズ焦点距離
被写体倍率 Mo

被写体(200mm)の像面での大きさ

2000
25
0.013
2.6
 
50
0.025
5.0
 
100
0.051
10.2
 
200
0.11
22.0
6000
25
0.012
2.4
  
50
0.025
5.0
  
100
0.051
10.2
  
200
0.10
20
18,000
25
0.013
2.6
 
50
0.025
5.0
 
100
0.050
10.0
 
200
0.10
20.0
凹面鏡(f=2,000mm)による虚像撮影
カメラレンズ(fc)による最終像の大きさと像の倍率(Mo)
 
 
 虚像の位置 (b)
カメラレンズ 焦点距離
被写体倍率 Mo

被写体(300mm)の像面での大きさ

3000
25
0.008
2.4
 
50
0.017
5.1
 
100
0.034
10.2
 
200
0.69
20.7
9000
25
0.008
2.4
 
50
0.016
4.8
 
100
0.034
10.1
 
200
0.068
20.3
27,000
25
0.008
2.4
 
50
0.017
5.0
 
100
0.033
10.0
  
200
0.067
20.1
凹面鏡(f=3,000mm)による虚像撮影
カメラレンズ(fc)による最終像の大きさと像の倍率(Mo)
 
 上の表は、興味深いデータです。
どのような凹面鏡を用いようとも、被写体を虚像ができる位置(つまり、凹面鏡の焦点距離内)に配置すれば、カメラレンズによってできる撮像面の大きさは、
カメラレンズの焦点距離(fc)によって決まると言うことです。
そして、点光源の像も同じカメラレンズを使って、ほぼ同じような大きさで撮像面に投影されることです。
 
 
 
 
■ 点光源[シュリーレンシステム構成図(1)]
 
 点光源は、きれいなシュリーレン写真を得る上で大切なものです。理想の点から放射される光束は、焦点位置に離して置いた凹面鏡(もしくは凸レンズ)によって平行光束になります。平行光束を何故きれいに作らなければならないかというと、被写体(透過物体)の密度差によって屈折光ができる可視化精度を高めるためです(シュリーレン法は、平行光束を作らなくてもきれいな点光源からの収束、発散光があればきれいなシュリーレン撮影はできます)。理想の点光源であればあるほど微小な密度変化も可視化できるようになります。
光源は、高速度カメラで使用するためには、交流放電ランプではなく直流放電ランプを使用します。交流ランプは電源周波数で点灯を繰り返しているため高速度カメラ用として使用するとフリッカー(ちらつき)がでてしまいます。
 
 
 点光源は、できるだけ小さなピンホール(φ2mm〜φ0.5mm)を使ってそこに集め、そこから発散した光を凹面鏡でとらえるようにセットします。
点光源として理想のものは、光密度の高い放電光(クセノンランプ、水銀灯)やレーザです。フィラメントランプでも使えないことはないのですが、光量が大きい割には輝度が小さく、フィラメントの一部を取り出してピンホールを通すとかなり暗くなり、かなり効率の悪い光源になってしまいます。
レーザが高価であった時代は、発光効率(消費電力に対する発光の度合い)が高い水銀灯やクセノン光源が使用されていました。水銀灯は、しかし、緑色のスペクトルが強いのでカラーシュリーレンには不向きでした。
 
 レーザが安定して供給されるようになった1980年以降、シュリーレン光源と言えばレーザと言われるようになりました。レーザが広く使われるようになった理由は、
 
・ビーム輝度が高い
・直線性が良いため光学装置の設定が楽
・出力が安定している
 
などが上げられます。ただし、レーザは干渉性が高く光路にホコリなどがあると干渉縞を出しやすいので干渉性を緩和するための措置を取る必要があります。この処理には、顕微鏡レンズでピンホールにレーザ光を集光させ、余分な光をカットする方法や、レーザビームを一度拡げ再びピンホールに集めて干渉性を緩和させる方法があります。
 
【シュリーレン撮影用点光源に使用されるレーザとその特徴】 
● ヘリウムネオンレーザは、単色光(λ=632.8nm)で干渉性がとても強いので注意が必要です。
 
● アルゴンレーザ、λ=488nm、λ=514.5nmの主波長の他に、出力の小さな波長が2波長の合計4波長が出ています。この波長を全部出力するマルチライン出力を選ぶと干渉の少ない光源となります。ただ、AOM(Accoustic Optical Module)と呼ばれる音響光学装置(音響により光を屈折させ、マイクロ秒単位の偏向ができる光学結晶素子)を使ってレーザ光をシャッタリングする場合には、シングルライン(単一波長)にしないとAOMでのシャッタリングが正常に機能しません。
 光ファイバーを用いる場合も、干渉縞が強く出て点光源像が均一に拡がらないので、光ファイバーから出た後均一な投影像になるような工夫が必要となります。
 
● 銅蒸気レーザは、λ=511nm、λ=578nmの2波長が出力されているため干渉性が低く、光ファイバーを用いても良好な点光源となります。アルゴンレーザなどを光ファイバーに導くとファイバー内で干渉がおきてアバタの強い光になってしまいますが、銅蒸気レーザはそのアバタができにくく400umのファイバーを使用すれば、ファイバー出口で良好な点光源となります。銅蒸気レーザの特徴の一つであるパルス発光30nsという短い発光時間はとても魅力で、すべての動きをピタリと止めてしまう威力を発揮します。光エネルギーも強烈で、シュリーレン手法よりもレーザライトシート光源として使用されるケースが多く見られます。
 
● 固体グリーンレーザは、1990年代になってアルゴンレーザに置き換わる形で現れたレーザです。アルゴンイオンレーザが気体レーザであったのに対し、固体グリーンレーザは固体結晶を使っています。コンパクトで電源設備も簡単であり、4W〜8W程度の出力が得られるので2000年以降はアルゴンイオンレーザに置き換わりました。
 
● YAGレーザは、1990年以降高速度カメラ用光源の主流になっているものです。連続発振やパルス発振が可能で取り扱いが良いことからレーザライトシートやシュリーレン光源として使われるようになりました。
 
● 半導体レーザは、他のレーザと違って直線性とビームの拡がりが良くないので、半導体レーザが放射される光の特性を考えて点光源を作る必要があります。光ファイバーを用いる方法もあります。
半導体レーザの出力の高いものは赤外が多く、肉眼ではとらえがたいので注意が必要です。
 
 
 【光ファイバーによるレーザ点光源の作り方】
 アルゴンレーザ光を光ファイバーに導いて射出ファイバーからの光を見ると均質な光源とならないことが多くあります。これは、レーザが本来干渉性をもった(位相のそろった)光であり、ファイバー内部で全反射を繰り返す度に干渉が起きてファイバから出るときはかなりアバタのある光となるためです。
 左図に光ファイバーを用いてアルゴンイオンレーザ光を点光源にする光学系を示します。
一番左のコンポーネントが光ファイバの挿入コネクターです。ここにアルゴンイオンレーザから導き出された光ファイバを挿入します。この光はある拡がりと不均質な光です。この光をレーザ集光レンズを使って集光させピンホール(50um〜200um)に入れ込みます。あまり小さいピンホールは、光量が弱くなるし、強いレーザを入れることができません。一番右の遮光ダイアフラムは、シュリーレンレンズ(凹面鏡、凸レンズ)の口径にはみ出した場合の光をマスキングする働きがあります。(1999.5.30)

 
■ コリメータ光学系(平行光を作るレンズ、凹面鏡と凸レンズ)
  [シュリーレンシステム構成図(4)(5)]
 
 平行光束を作るコリメータ光学系は、凹面鏡もしくは凸レンズを用います。
 シュリーレン法で感度を上げる(ここでいう感度とは、微小な密度変化に対して可視化できる能力を言う)には、このコリメータ光学系の焦点距離(f)の長いものほど良いとされています。また、感度について言えば、点光源が小さいほど(ε)、また被写体の位置(a)が第二(出口)凹面鏡(もしくは凸レンズ)から離れていればいるほど屈折角が大きくなり感度の良好なシュリーレン像が得られます。ただし、前にも述べたように a を凹面鏡の焦点距離 f よりも遠くにとると市販のレンズではピントが合わなくなるので注意が必要です。
 
 コリメータレンズは、点光源の位置からコリメータの焦点位置に置きます。こうすると点光源像は平行光束になります。平行光束であるかどうかのチェックは、部屋を暗くし白い紙を使い、コリメータレンズから出た光束がコリメータレンズの口径と同じ大きさで進行しているかをチェックします。像が大きくなっていると点光源はコリメータレンズの焦点距離より近くに配置されています。逆に小さくなるようですと点光源はコリメータレンズの焦点距離より遠くに配置されています。
 
 凹面鏡は、大口径のものが比較的安価に作れるのでφ200mm以上の口径に使用されます。凸レンズは点光源の光束が透過しますのでレンズ材質に脈理などの欠陥部が無いものが求められます。凹面鏡に比べ球面収差、色収差が出やすい欠点があり価格も高価になります。しかしシュリーレン光学配置をコンパクトにできるので、可視化エンジンの燃焼観察をする場合などに使われます。凹面鏡は、凸レンズと違って色収差、球面収差がなく反射光を扱うので大口径に適しています。凹面鏡は基本的には放物面鏡で仕上げその上にアルミの真空蒸着を施し、酸化を防ぐため、その上に二酸化珪素の蒸着強化膜で覆っています。一般に、鏡の口径と焦点距離は、口径の10倍で、口径比はF10となります。この値は、
 
tan θ/2 = 1/20 
  (θ:点光源の拡がり角)
 
となりますから、点光源の拡がり角度、ナイフエッジへの集光角度( =θ)は、5.725°となります。
 この値は、面白い情報を提供しています。
光源から発するを集める力は、コリメータの光学系の口径比(通常F10)で決まるので、カメラレンズにこれ以上明るいレンズ(例えばF1.2とかF2.8)を使用してもカメラレンズで明るさをかせぐことはできません。
つまり、明るい(大口径)レンズをカメラに使ってもF10までは意味がないということです。
 また、シュリーレン撮影の場合、カメラレンズの絞り機能は働きません。カメラレンズの絞りを絞っていくと絞りバネにより光束が遮られ(ケラレ)てしまい撮像面に届く像が小さくなってしまいます。従って、シュリーレン撮影で光量を調整するときは、
 
・露出時間で調整する
・点光源像をピンホールの穴径、輝度で調整する
・カメラレンズの前部にND(Neutral Density : 光を均一に減衰させるサングラスのような)フィルタを使用する
 
などの処置をする必要があります。
凹面鏡の面精度は、使用する波長の1/10以下のものを使用します。
 
 
【凹面鏡と光軸の角度(η)】
 
凹面鏡を配置する際には、点光源から第一凹面鏡が作る角度、及び第二凹面鏡からナイフエッジが作る角度はできるだけ狭い方が望ましく、角度がありすぎると円形である点光源像が楕円になります。
これは、凹面鏡から出た集光光束を90°に振らすと振られた方向の成分は全くなくなりその垂直成分だけが反射される線上の光源像となります。
扁平率は、振れ角をηとすると、
 
cos η
 
で表されます。
一般的に7°以内に振れ角を調節せよと言われていますから、この場合、cos η = 0.99255 で0.745%の楕円となります。
光源やカメラが大きくて凹面鏡を大きく振らなければならない場合は、光路の途中に平面鏡を入れて光を折り曲げる必要があります。
凸レンズではこのような縦横の扁平は起きにくくなります。凸レンズでの光学レイアウトは透過型なので平行光束は凸レンズの光軸に沿って配置するのでその心配がありません。凹面鏡は反射型なので点光源もカメラ(ナイフエッジ)も光軸を傾けざるを得ないのです。
 
 
 
 
■ 平面鏡[シュリーレンシステム構成図(3)(6)]
 平面鏡は、点光源から第一凹面鏡までの光路(及び第二凹面鏡からナイフエッジ部の間)に入れ光学的空間をコンパクトにすることができます。材質も、反射鏡の材質も精度も凹面鏡と同じものを用います。光束光路を曲げる働きをするものですから平面鏡の大きさには十分注意を払います。凹面鏡の出入り口近傍に配置するほどまた、光路の曲がりが大きいほど大きな平面鏡が必要です。
 
■ ナイフエッジ[シュリーレンシステム構成図(7)]
 ナイフエッジ部は第二収束光で集光した点光源像の主光束をカットし、被写体で屈折・散乱した光のみを透過させて屈折・散乱した光で像を作るためのものです。昔は剃刀の刃面で主光束をカットしていたのでこの名前の由来がありますが、最近では、円形状のピンホールのものや、逆に中心部を遮光する円形状のものがあります。またナイフエッジ部にカラーフィルターを配置して光束の曲がりによって彩色が施されるカラーシュリーレン手法もあります。カラーシュリーレン法を行うには、点光源が白色光でなければならず、この場合にはクセノン光源(もしくはクセノンフラッシュ)が用いられます。
 ナイフエッジは、点光源の像位置に入れて調整をしながら主光束を切る必要があるため、光束に対して前後方向、上下方向、回転方向に調整のできる微動台に取り付けることが大事です。コリメータ光学系の所でも触れましたが、凹面鏡を使用するシステムでは、点光源像の集光する位置が縦方向の像と横方向の像では違うため、ナイフエッジを前後方向に調整します。調整の目安はナイフエッジで主光束をカットしていったとき、画面全体が一様に暗くなる位置が最適な位置となります。ナイフエッジをカメラ位置の下から上方向に切っていったとき、撮像面の像が上から切れていくようだとナイフエッジは点光源像位置より前で切っていることになり、反対に同じ方向から切れていくと点光源像より後ろで切っていることになります。
 被写体は運動している方向成分の密度差ができるため、運動している方向の反対方向からナイフで切っていくとシュリーレン像の感度が良くなります。例えば、横方向に衝撃波が進む撮影では、ナイフエッジを縦位置にして衝撃波が進行する方向とは逆方向から切っていきます。熱対流による空気の上昇の可視化の場合にはナイフエッジを水平位置にして上方向から下に向かって切っていきます。エンジン燃焼のような放射状に拡がる撮影では、円形で中心部が遮光できるものが望まれます。
 
■ カメラ[シュリーレンシステム構成図(8)]
 あらゆるカメラが使用できます。しかし前にも述べましたが、被写体の位置とレンズの選択を誤るとピントが出なくなりますので注意が必要です。
私が経験したシュリーレン光学系とカメラの組み合わせ種類を以下に述べます。
 
カメラ
コリメータレンズ
点光源
応用
35mmニコン
(ライカサイズフィルムカメラ)
凹面鏡φ150mm
水銀灯
熱伝達
16mmボレックス
(映画カメラ)
φ200mm凹面鏡
クセノンランプ
麻酔薬
16mm E-10
(映画フィルム高速度カメラ)
φ200mm凸レンズ
アルゴンレーザー
噴霧
Cordin Dynafax350
(フィルム式ドラムカメラ)
φ100mm凹面鏡
水銀灯
燃焼
HSV-200
(VHS式高速度ビデオカメラ)
φ200mm凸レンズ
クセノンランプ
燃焼
HSV-400
(VHS式高速度ビデオカメラ)
φ200mm凸レンズ
クセノンランプ
燃焼
Kodak HS4540
(メモリ式高速度カメラ)
φ200mm凹面鏡
銅蒸気レーザ
ガス噴霧
ウルトラナック
(イメージコンバータ式超高速度カメラ)
φ200mm凹面鏡
銅蒸気レーザ
高圧噴霧
IMACON468
(I.I.式超高速シャッタカメラ)
φ300mm凹面鏡
アルゴンレーザ
超高音速流体
 
 
 
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