更新日時:2007年 9月 7日 金曜日 - 5:43 AM
レーザライトシートの作り方について  (2005.12.26)(2015.07.02更新) 
 
 
 
銅蒸気レーザ光源を使った高速度写真サンプル(Oxford Lasers Ltd社提供)
高速噴流体に蛍光トレーサを入れレーザライトシート手法により、7000Hzで 10パルスの多重露光。 粒子が流れて見えるところが速度が速い。
撮影:Prof. Katz - Johns Hopkins University
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■ ライトシート(Light Sheet)

 ライトシートは、光の膜(カーテン)のようなものである。透明な流体の断面を可視化するために使われる。
この光源は、流れを光の膜によって断面を浮き上がらせ、流れの様子を観察する手法としてレーザの発展とともに普及した。
日本での大きな普及を見たのは、1985年、東京大学生産技術研究所村上周三教授による建物模型の風洞実験の研究あたりからである。
彼らの研究に、アルゴンイオンレーザ(4W連続光源)を用いたレーザライトシートが登場した。
 
 ライトシートは、レーザが普及する前から使われていた。
ライトシートの考え方は、窓から射し込む日射しで理解することができる。
室内のホコリがトレーサとなって舞い立つホコリの動きで空気の流れを知ることができる。
通常の光は散乱光であり、小さいホコリはいろいろな所から反射される光によって自らは周囲の明るさより明るくならない。
そのためにホコリは光に埋もれてしまい人の目で見ることができない。もちろんカメラでもみることはできない。
しかし、きれいに整った平行光にして小さなホコリに当てると、周囲が暗い場合、今まで見えなかったホコリが見えるようになる。厚い雲で大空が覆われた暗い大地に雲の隙間から地上に射し込む光が筋状に見えることも同様の理屈である。
一条の光が(周囲は暗い)地上のチリによって浮き上がって見えるようになる。
映画館の映写機から投射される光や、液晶プロジェクタの光も比較的整っているため室内のホコリによってその光路を知ることができる。灯台の光や、サーチライト、自動車のヘッドランプも点光源から放射される光も比較的整った光であるため、モヤの中や霧の中では光路を浮き上がらせる。
 
 ライトシートは、きれいな光をさらに厚さ方向に絞り込んで薄い膜にしたものである。
レーザを使わないライトシートは、つまり、レーザが発明される前までのものは、細長いハロゲンタングステン電球を使っていた。この長いランプに沿ってシリンドリカルレンズを這わせ、細長い光を放射方向に集光させ、薄い光源像を作って光の膜としていた。
こうしたライトシートの光源には、1kW程度のハロゲンランプが使われていた。
 下の左図がハロゲン電球を使ったライトシートの原理図である。
このほか、簡単なライトシート装置には、細長い白線をリバーサルフィルムで撮影し、これをスライドにしてスライドプロジェクタを使って投影し簡易ライトシートを作る方法がある。
現在では、液晶プロジェクタを利用して、フォトショップ(画像ソフト)などで白線画像を作り、これを投影させてもライトシートができる。
しかし、これらの光の膜は光源の輝度が低いために十分な明るさを得るには至らず、また、高速で推移する被写体の場合、これを撮影するには高速シャッタを切らねばならないため、こうした応用には暗すぎる光源である。
 
 
 

■ ライトシートにレーザが使われる理由

 レーザの発明以来、光の膜(ライトシート)を作る光源として注目され、良好な結果が得られた。
レーザは、光エネルギー密度が高く、ビーム状で放射されるのでシート光を作るのに非常に都合が良く、ライトシート用の光源として最適であった。
 レーザがいかに強いライトシートを作ることができるのかを比較するために、1kWのハロゲンを用いたライトシートと4W出力のアルゴンイオンレーザによるライトシートについて、その明るさを比べてみる。
 ハロゲンタングステン電球は、1kWの電気入力に対して約9%が可視光に変換される。
従って、90Wの光エネルギーが30cm程度の細長いタングステンフィラメントを介して放射する。残りの910Wは熱として光と一緒に放出される。
90Wのうちの7200分の1程度が前面に照射され、残りはライトシートの光束としては関与しない。
(この条件は、f500mmのシリンドリカルレンズを背中合わせにして、500mmの位置にランプを置き、反対側の500mmの位置にライトシートの焦点を置く光学設計とし、f500mmのレンズの口径を25mmとしたときの値である。左図参照)。
 さらに、フィラメント(約φ4mm)をそのまま前面投影しても厚いライトシートにしかならないので、ライト部もしくは光学系で1/4程度に絞って厚さ1mmのライトシートを作るとすると、シートに関与する光量は1/4となる。
総合すると、1kW電気消費による90Wの光は3mW程度のシート光となる。
 方や、4Wのアルゴンイオンレーザは、4Wそのものが光エネルギーでありφ1mmのレーザビームが一直線に前面に放射されるので、光学系で半分の光量ロスがあったとしても2Wの光量で0.5mm程度のライトシートを作ることができる。
両者の比は、670倍に相当する。
 以上のような簡単な光量の試算比較により、アルゴンイオンレーザによるレーザライトシートは、従来の白熱電球(1kWの棒状ハロゲンタングステン電球)に比べ桁違いに明るいシートが得られることが理解できる。
レーザライトシートの本格的な導入は、アルゴンイオンレーザ(ビーム径約1mm、出力4W、連続光源)からスタートした。
 
▲ LED( = 発光ダイオード)によるライトシート
 発光ダイオード(LED = Light Emitting Diode)をシート光にする着想は、興味あるものである。
LEDは点光源と見なすことができ、3Wを越える高出力のLEDが登場しているので、これを使ってライトシートを作ることができる。
コピー機やスキャナーなどにもLEDを直列に並べて細長い光源(スリット光源)として使われている。
これに光学系を与えてライトシートにすればそこそこ使えるのではないかと考える。
結論から言うと、LEDを使ってライトシートを作ることはできる。
しかし、シートクォリティの点で(薄くて強い強度の膜面を作る観点からみて)、レーザによるライトシートにはるかに及ばない。
簡便な観察装置として使うには利用価値はある。
 
▲ 蛍光灯によるライトシート
 蛍光灯は発光効率が良く、細長い発光体であるのでライトシートとして使えそうである。
しかし、発光がφ30mmの筒面での面発光であるため、1mm厚以下の膜面を作らなければならないライトシートでは余分な光をカットする必要があり、効率の悪いものになってしまう。
従って、細長い蛍光灯を用いたライトシートはほとんど実用化されていない。
ライトシートに使う光源は点光源、もしくは線光源でなければ効率が悪いのである。
 
▲ 高速度カメラとレーザライトシート
 レーザライトシートの出現により、強くて薄い光の膜ができるようになり、高速度現象にも短いシャッタ(1/1,000秒程度)でカメラ撮影ができるようになった。
しかしながら、1,000コマ/秒程度の高速度カメラを使う場合、一般のCCDカメラと違って高速度カメラの感度が低くて露出時間が短いために(1,000コマ/秒では1/1,000秒以下の露出時間となるために)、出力の小さいレーザでは目的を達することができなかった。
レーザライトシートの先鞭をつけたアルゴンイオンレーザにおいても1,000コマ/秒の撮影どころか100コマ/秒の撮影でも暗くて撮影できないことがあった。
強い光のレーザライトシートであっても高速カメラで撮影できない理由として、以下の原因が挙げられる。
1. カメラの感度が低い。(高速で取り込むカメラは、一般的に感度が上げられない傾向がある。)
2. 使用するカメラレンズ及びカメラ光学系が暗い。
3. レーザシートを拡げた場合(視野を広くとる場合)、シート光の強度が低くなる。
4. レーザの出力が小さい。(数十mW程度では暗い。)
5. トレーサが小さすぎたり、反射特性が悪い場合、シート光の散乱光を効率よくカメラに反射できない。
今までたくさんのレーザがライトシートの光源として使われて来ているが、高速度カメラに適したレーザは、
  ・銅蒸気レーザ
  ・YAG(パルスモード)レーザ
  ・半導体(赤外)レーザ
などのパルスレーザに限られている。
出力の小さい連続発光レーザを使う場合は、カメラの前に光を増幅するイメージインテンシファイア(I.I.、Image Intensifier)を使うことを余儀なくされている。 
  
 
 
【レーザライトシートに使われたレーザ】
上の理由により、ライトシートにはレーザ、それもピークエネルギーが高いパルスレーザが適役であることが理解できる。
レーザライトシートに使われたレーザの特性を以下に記す。
レーザの詳しいことは「レーザについて」を参照されたい。
以下の説明では、ライトシートを作る上で参考になるレーザの特性を簡単に紹介する。
 
● ヘリウムネオンレーザ(He-Ne):
 ヘリウムネオンレーザは、1970年代から1980年代にかけて普及した赤色(632.8nm)の連続光源ガスレーザである。
出力が3mW〜100mWと低いため、レーザライトシートとしての活躍はなかった。
単色性が強く(線巾が狭く)コヒーレントが強かったのでホコリなどでたやすく干渉縞が出て、得たい画質に影響を与えた。
 
● アルゴンイオンレーザ:
 アルゴンイオンレーザは、1970年代から2000年にかけて普及した緑色(499nm、511nm)の連続光源ガスレーザである。
出力が100mW〜16Wと強いため、レーザライトシートとして一躍脚光を浴び、ビデオカメラ(30コマ/秒録画)用光源として普及を見た。
連続発振なので、高速度カメラと組み合わせて使うには光が弱く、高速度カメラにイメージインテンシファイア(I.I.)を付けないと撮影できない問題があった。
2010年代より市販に出て来た高速度カメラは感度が高くなったので4W程度のグリーンレーザでも対象物によっては1000コマ/秒程度の高速度撮影ができるようになった。
グリーンレーザは固体グリーンレーザと呼ばれアルゴンイオンガスレーザとは構造が異なる。
YAGレーザの範疇に入るレーザで、コンパクトで消費電力が少ない。2010年以降のグリーンレーザはこのタイプのもの(固体グリーンレーザ)が主流になっている。
 アルゴンイオンレーザは、パルスレーザ(銅蒸気レーザ、YAGレーザ)の台頭とともに、高速度カメラ用レーザライトシートの位置をそれらに譲るようになった。
アルゴンイオンレーザは、電力を多く必要とし(三相200V、30A)、冷却水(2Kg/m2、15リットル/分)も必要としたため、特に夏場では使用制限を受けた。
  
● 銅蒸気レーザ:
 銅蒸気レーザは、1970年代から2000年にかけて普及したパルス発光の緑色(510nm、570nm)の金属蒸気レーザである。
出力が10W〜30Wと強く(ピークエネルギーは1,000,000倍ほど高い)、20nsのパルスで10,000Hzの発光ができたため、高速度カメラを使用する際にはイメージインテンシファイア(I.I.)を装着しなくても十分な光量が得られた。
ヨーロッパ、米国を中心に高速度カメラ用のパルス光源(レーザストロボ)として脚光を浴びた。
レーザのビームクォリティも高く0.2mm程度の薄さにレーザシート光を作ることができた。
干渉縞も出にくく画像用光源としての光の質は上等であった。
 このレーザも、アルゴンイオンレーザ同様、パルスレーザ(YAGレーザ)の台頭とともに、高速度カメラ用レーザライトシートの位置をそれらに譲るようになった。
銅蒸気レーザは、発振光率が良いので電源や冷却水に関してアルゴンレーザほど多くの電力と水を必要としなかったが、保守に多額の費用がかかった。保守部品として、金属銅、ネオンガス、オプティカルウィンドウ、サイラトロン、キャビティチューブ(発振管)の定期的な交換が必要であった。
 
● Nd:YAGレーザ:
 ヤグレーザ(Nd:YAG)は、上に述べたガス(金属)レーザと違って、発振媒体が光学結晶(ロッド)である。
ガスレーザよりもビームクォリティが悪かったにもかかわらず、扱いの良さから人気を得て発展し、1990年後半から2000年以降はレーザの中心的役割を果たすようになった。
 YAGロッドの基本発振波長は、1.064umと赤外にあり、可視化光源としては不向きである。
この基本発振に非線形光学結晶を介在させて、基本発振の1/2、もしくは1/3の波長、即ち、532nmの緑、もしくは355nmの紫外光を得ている。
YAGレーザ開発当初は、15Hz程度の発振しかできなかったが、高速でスイッチングできるAOM(Acoustic Optical Module、音響光学素子)の改良が進み、励起光源に高速でスイッチングできる半導体レーザが使われるようになって、高周波、高出力、可視光域のNd:YAGレーザが出現した。YAGレーザは、パルス発振も連続発振も可能である。
 YAGレーザ発展の理由として、このレーザの広い活用分野があったことは否定できない。
活用分野の中で、特に高温加工(溶接)と医療分野(メス)ではマーケットが大きく、YAGレーザが大きく成長した。
 高速度カメラの分野でも、高周波発振、高エネルギー密度(光量が大きい)という利点が活かされ徐々に活用範囲を拡げている。
上に述べたガスレーザと違い保守にもそれほどの費用を必要とせず、電源も冷却も許容範囲で利用できる。
特に冷却に関しては、装置内部に冷却装置(クルマの水冷のようなシステム)を持っていて使いやすいものになっている。
 YAGの欠点は、ビームクォリティが悪く(ビーム拡がり角 = beam divergenceが大きい)、薄くて高輝度のレーザシートを作ることが難しいことが挙げられる。
また、レーザ出力のピークエネルギーが高いので被写体から反射した迷光がカメラの撮像素子に集光し、焼きキズを作りやすい。
YAGレーザの場合、1発あたりのエネルギーが100mJの出力であっても、4nsと発光時間が短いため発光のピークエネルギーは、50MWにも達する。
このエネルギーは、集光すれば分子を簡単に切り離す力を持っている。
 
● 固体レーザ:
 固体レーザは、上記のNd:YAGが代表的なものであるが、歴史的にはガラスレーザ、ルビーレーザなどが開発された。
レーザが最初の発振されたのもルビーレーザである。構造が簡単でレーザ発振が行いやすかったというのが理由のひとつである。
2000年代に入って光学結晶技術が進歩しレーザに適した光学ロッドが作られるようになり固体レーザが進歩した。
光学結晶にはYAGの他に、YLF(イットリウム・リチウム・フッ化物)、YVO4(イットリウム・バナジウム酸塩)、YAlO3(イットリウム・アルミ酸塩)などがある。
ロッドを励起する光源もキセノンフラッシュから赤外半導体レーザに変わりコンパクトで高効率のレーザができるようになった。
5Wクラスまでのレーザライトシートには固体グリーンレーザを用いたものが使われるようになっている。
発振媒体が固体であるため、熱により媒体が膨脹したり歪むのでレーザ品質はそれほど高くない。
  
● エキシマレーザ:
 エキシマレーザは、紫外線発光を伴うガスレーザである。
励起するガスが有毒で、発振波長も紫外線であるため、使用に際しては十分な注意が必要なレーザである。
化学種の励起発光を伴う研究目的や、熱を伴わない微細加工ができるため樹脂の微細加工、IC製造上の光源として利用されている。
流れの可視化でも、蛍光物質が紫外レーザ光を吸収して蛍光を発する( = LIF、Laser Induced Fluorescence)ことから注目されて利用されている。
油(潤滑油)や燃料などの有機物には蛍光を発するものが多いため、燃料噴霧研究や潤滑研究にも利用されている。
高周波発光はできず、10 - 30Hz程度のパルス発光であるため、高速度カメラ用の光源としては不向きである。
パルスレーザであるため、ピークエネルギーが高く使用に際しては注意が必要である。
運用コストも、電源、冷却水、サイラトロン、バッファガス(フッ素化合物)など高価である。
 
● 半導体レーザ:
 半導体レーザは、1990年代後半から脚光を浴びているレーザである。
非常にコンパクトで電力などのユーティリティも簡単にすむので使い勝手が良い。
しかし、赤外発光で出力の高いレーザは開発されているものの、可視光域では出力の高いレーザは市販されていない。
従って、高速度カメラ用の光源としては、発振波長が850nm近辺の近赤外光源になるため、赤外に感度を持った白黒CCD(MOS)高速度カメラが使用される。
パルス変調は50kHz程度まで可能である。
 赤外域の半導体レーザをライトシートにする応用は2000年あたりから普及している。
しかし、可視光域(赤→緑)での高出力半導体レーザは今のところ市販されていない。
また、半導体レーザは、他のレーザに比べてビームクォリティが桁違いに悪く、薄くて明るいレーザライトシートを作ることは現時点では期待できない。
 
 
 

■ 簡単なレーザライトシート

 レーザは、単色光で直進性が良いビームであるため光学系が組みやく、レーザライトシートも比較的簡単にできる。
最も簡単なレーザライトシートは、ポリゴンミラーやガルバノミラーを使うやり方である。
このやり方は、レーザをミラーで振って空間をスキャニングし、擬似的にレーザ膜を作るものである。
この場合、膜の厚さはレーザビーム径になる。この手法によるライトシートは、レーザがスキャニングされる周期よりも現象がゆっくりしたものでなければならない。
高速で推移する現象に低速スキャニングによるライトシートを照射すると、シートが作られる間に現象が刻々と移動してしまうため、像が歪む。
 スキャニング手法を使わない最もシンプルなレーザライトシート光学系は、球面レンズとシリンドリカルレンズを組み合わせて作られる。
球面レンズはレーザビームを拡げる働きを持ち(ビームイクスパンダ)、シリンドリカルレンズは一方向だけの屈折をもつレンズのため、拡がったレーザビームを縦長にすることができる。
球面レンズで円錐状に拡がったレーザビームを縦長にしてライト膜を作るのがシリンドリカルレンズの役目である。
両者のレンズの焦点距離とそれぞれの配置によってシートの厚さや、シートの有効エリアが変わる。その関係式を以下に述べる。
 
 
 

■ イクスパンダとシリンドリカルレンズ

 一般的なレーザライトシート光学系のレイアウトを下に示す。
 
 
 
 
レーザライトシートは、シートの側面から見るとビームイクスパンダ(焦点距離f1)のみの拡がりで撮影エリアが確保される。レーザビームの拡がりθ1は、レンズの焦点距離f1とレーザのビーム径(d)で決まる。
 
     θ1 = 2tan-1(d/2f1)  ・・・(1)
 
ビーム拡がり角(θ1)に投射距離(a + b)を加味したものがレーザシートの照射エリア(H)となる。
 
    H = 2(a + b) tan(θ1/2)  ・・・(2)
   
 
 レーザシートの膜厚(t)は、シリンドリカルレンズ(f2)によって収束するレーザビームの収束角(θ2)と、シリンドリカルレンズの収束ポイントから離れた位置(χ)で決まる。
 
     t = 2χ tan(θ2/2)・・・(3)
     θ2 = 2 tan-1[a d (a -f2) / 2 a f1 f2]・・・(4)
 
シリンドリカルレンズによってレーザが収束する位置(b)は、シリンドリカルレンズの焦点距離(f2)とシリンドリカルレンズの置かれた位置(a)によって決まる。
 
     b = a f2/(a - f2)・・・(5)
 
 基本的に、f2に焦点距離の長いシリンドリカルレンズを用いた方が、広い範囲(χ)に渡って膜厚の均一なシートが得られる。しかし、f2の長いシリンドリカルレンズを使うと、集光する位置(b)が長くなり、同時に集光点での膜厚が厚くなる。
 集光点(b点)のシートの膜厚(t)を以下に述べる。
 
 
  
 
 

■ ビーム拡がり角(ε)とレーザシートの厚さ(t)

 レーザシートによって得られるレーザシートの厚みはどのくらいまで薄く、しかも密度の高いものができるのであろうか。
 
 
 
 
 
 レーザシートの最小膜厚(t)は、レーザの持っている固有の拡がり角(ビームダイバージェンスε)とレンズの組み合わせ(f1、f2)で決まる。このうち、もっとも大きな影響を与えるのがビームダイバージェンスεである。膜厚tを求める式は以下で表される。
 
    t = ε(b - f2) f1 / f2  ・・・(6)
    t = ε(f1 f2 / (a - f2)  ・・・(7)
 
ビームダイバージェンスεは、YAGレーザで4mrad程度であり、アルゴンレーザで0.4mradである。YAGレーザは、アルゴンレーザに比べレーザの拡がりが一桁大きい。従って、YAGレーザでサブミリの膜厚を作るのは簡単ではない。
   
● ビームダイバージェンス(Beam Divergence)
 レーザは、どこまでも直線的にビームが進むかと言えばそれは間違いで、発振器から放出されたビームは徐々に拡がって進んでいく。
半導体レーザなどは、最初から点光源のように放射状に拡がる。
ビームの拡がり角は、レーザによって異なる。
同じタイプのレーザでも異なる。拡がり角を表す単位にラジアンを用いる。
この値では単位が大きいため1/1000に単位を代えてミリラジアン(mrad)で表す。
一般的な傾向として、ヘリウムネオンガスレーザが0.4mrad、アルゴンイオンレーザが0.5mrad、YAGレーザが4mradである。
半導体レーザは、桁違いにダイバージェンスが大きく、ビームクォリティも悪く、可視光での高出力なものが無いのでレーザシートを作る際には十分な検討が必要である。
 ビームの拡がり角になぜミリラジアンが使われているのかと言えば、ビームの拡がりは放射した距離にtan(拡がり角)を掛けると拡がり巾が求められ、拡がり角が100mradまでは、tanε=εと置き代えても0.033%の精度で合う。
5mradではまったく問題ない。
この近似により、距離に拡がり角を掛けるだけで拡がる範囲が簡単に求まる。
 5mradのレーザは、1,000mmで5mm拡がるという具合である。
ビームの拡がり具合(ビームダイバージェンスε)は、レーザの発振する共振器と深い関わりがある。
発振器は、レーザの発振する根本の光学系である。
 
 
 
 
 

■ 集光ビームの集光近傍のビーム曲線

 上の説明では、ビームの集光近傍の曲線には触れずに中心部のスポット径を近似式で簡単に示した。
レーザの集光ビームの形状は、レーザ発振器(キャビティ)の共振器の原理から決められている。(下図参照)
レーザは、発振器で光が増幅されるのが原理原則であり、その増幅に1対の反射鏡が使われている。
一般にレーザ発振器では、キャビティ(共振長=b)の半分の焦点距離を持つミラーが両端に配置されていて、キャビティ中央部のエネルギー密度が一番高く設計されている。
レーザ発振器に1対の平面鏡が使われずに、1対の球面鏡が使われるのは共振を起こさせやすいためである。
平面鏡では、両者の平行度の精度が極めて高く要求され、アライメントが少しでも狂えばレーザの発振はできない。
それに対して、球面鏡を使えば双方の鏡の位置が少しずれていても光のポンピングが行いやすくレーザ発振を起こしやすい。
共振器の設計はいろいろなやり方があるが、一般的に1対の球面鏡が使われる理由がここにある。
球面鏡を用いた発振光学系のことを、安定して発振できるという意味で安定共振器(stable cavity)と呼んでいる。
 
 
 
 
 こうしたキャビティのレイアウトによってレーザが発振するのであるが、発振時のビーム曲線はマクスウェルの方程式で導かれる。
レーザキャビティ内部で起きているビームの曲線が、とりも直さず外部に放射され再び集光されたときの集光ビーム曲線となる。
マクスウェルの方程式はとても難解で私にはよくわからない。
その曲線は、双曲線形状であり、ベル電話機研究所のG.D.Boyd、J.P.Gordonの研究報告(1961)によると以下の近似で表されるという。
 
 
   ω0 = √(λb/2π)  ・・・(8)
   ω = ω0√[1 + (2z/b)2]  ・・・(9)
    ω0: 共振器内の中心部でのビームスポット最小径
    λ: レーザ発振波長
    b: レーザ共振器の共振長
    z: レーザ共振器の中心位置からの距離(レーザ発振方向)
 
 
 上式は、Zが十分に大きければビームは以下の円錐体に近接する。
    χ2 + y2 = ω2 = ω02{1 + (λ/ω0π)2z2} 〜 (λ/πω02  ・・・(10)
     χ、y: レーザ発振方向(縦方向 = Z方向に直交する平面軸)
 
この円錐体の半頂角が以下に近似し、ビーム拡がり角εの根拠となっている。
    ε = 2 tan-1(λ/πω0) 〜 2 λ/πω0 = 2√(2λ/πb)  ・・・(11)
 
この式は、ビームの拡がりは共振器の発振長(b)が長いほど低く、また、波長が短いほど低いことを示している。
ここで述べた式は、安定共振器について導き出した式であるため別の共振器を使ったレーザには当てはまらず、発振器の設計(レイアウト)によって変わる。
固体レーザ(YAGレーザ)ではロッド自体が共振器なのでもう少し複雑な式になると思われる。
従って、ここでは一般的な事として述べるにとどめる。
共振器の別のレイアウトである非安定共振器(unstable cavity)では、ビームダイバージェンスが向上する。
非安定共振器の名前が示す通りセッティングに精度を伴うが、ビームクォリティが向上するので、マイクロマシニングなどの微小加工をするレーザや、薄くて強いレーザライトシートを作るときに採用される。
一般的に、ガスレーザでは、共振長が長いものの方がビームダイバージェンスが良い。
固体レーザ、特に半導体レーザでは共振長が短く共振器も狭いためビームクォリティは悪い。
 
 
 

■ ビーム改善光学系

レーザには固有のビーム拡がり角εがあり、この拡がり角によってレーザライトシートの厚み(t)が決まることは理解できた。
レーザビームの拡がり角εを改善すればシート厚を薄くでき、しかも密度の高いライトシートが可能になる。
YAGレーザを使った集光ビーム改善光学系のレイアウトを示す。
下図は、レーザライトシートではなく、離れた位置(1,000mm)からできるだけ高密度のエネルギーを得る目的で構築した光学系であるが、f3のレンズをシリンドリカルレンズにすれば集光スポットを膜厚と見なすことができる。
 
 
 
 
 
上の図に描かれているレーザは、1パルス100mJの代表的なNdYAGレーザで、ビーム径がφ5mm、ダイバージェンスε=5mradのものである。
 このレーザビームを、拡大光学系を使わずに直接 f=300mmの集光レンズを使って集光させると、レンズ焦点距離300mmの位置に集光される。
そのスポット系は、ε*300mmであるから、
 
   5/1000 x 300mm = φ1.5mm  ・・・(12)
 
となる。これがf=1000mmの焦点距離の長いレンズでは、
 
   5/1000 x 1000mm = φ5mm  ・・・(13)
 
となるため、レンズ焦点距離の長いもので高密度のエネルギーを集光することは期待できない。
レーザライトシートにおいても5mm厚のシートとなる。
 
 そこで、上のレイアウトのようにビームの集光度を上げるため10倍のビームイクスパンダ(f1:f2=50:500=1:10)を形成し、1000mm離れたターゲットに集光させるために、f3=1000mmの光学系を使う。
10倍のビームイクスパンダを使うことにより、ビーム拡がり角εは1/10に抑えることができ、ターゲットに集光するビームは、φ0.5mmとなる。
 この光学系をレーザライトシートに応用した場合にも同様の値となり、f3レンズをシリンドリカルレンズに代えたレイアウトでの膜厚は0.5mm程度にすることができる。
 この値が不満な場合は、f3を短い焦点距離のレンズとすれば、薄い膜厚が得られる。
しかし、それは中心部だけであり、焦点距離が短いために焦点中心から離れた位置では膜厚が急激に厚くなる。
 F3を長めにして(集光していく角度を狭くして)、なおかつ薄くするには、ビームイクスパンダの倍率をさらに上げる必要がある。
 
 
 
 

■ 撮影レイアウト  (2007.07.07)

 今までに述べたレーザライトシートを使って実際にカメラで撮影する場合、どのような構成で行っているのであろうか。
低速度で撮影するカメラの場合は、レーザシートは連続光のものを使い、シート面をカメラに対して垂直にセットして撮影するのが一般的である。
高速度カメラを含めた計測用カメラでレーザシート法を用いるときは、連続光によるライトシートでは光量が足らないために、強いパルスレーザ、例えば、YAGレーザ、銅蒸気レーザ、半導体レーザを使う。
下図に代表的なカメラシステム構成を示す。カメラの撮影タイミングとパルスレーザの発光タイミングを合わせるために少々複雑な機器構成を必要とする。
この機器構成のタイミング精度は、1us以内に抑えられている。
こうした計測システムで流れの可視化を行い、PIV(Particle Image Velocimetry)という画像処理手法によって計測が行われている。
 
■ PIV(Particle Image Velocimetry)
 PIVとは流れ場のベクトルを画像から求める手法であり、2枚の画像(それぞれが撮影時間の異なったもの)を用いて両者の画像の差違から移動した方向を求めるものである。
従来は、一枚の画像に多重露光をさせて粒子の軌跡を撮影し、この画像から粒子の移動を判断して流れの方向を計測していたが、これだとうまく粒子の追跡ができないために、最近では2枚の画像を使って粒子の動きをとらえるようになった。
画像の追跡は「相関法」(そうかんほう、correlation method)という画像処理手法を用いている。
2枚の独立した画像から相関を求める処理を相互相関法と言い、1枚の画像で軌跡を追う方法を自己相関法と言う。
 画像相関法というのは、注目する2枚の画像のエリア(例えば、20画素x20画素)を比べて両者の画像がどちらの方向にどの程度移動しているのかを求めるものである。
PIVでは、粒子を画面全体に渡って追跡することはしない。あくまでも決められたエリアのなかでその場がどのような流れを作っているかを見るだけである。
粒子を追っかけていく手法は、PIT (Particle Image Tracking)と呼ばれていてPIVとは区別している。
 2枚の画像で相関を取るために、2枚の画像はできるだけ相関のとれるものが望まれる。これの意味するところは、
 
    ・2枚の画像の撮影間隔が十分に短くて、計測するエリア内で移動が抑えられていること(数ピクセル〜10ピクセル程度)。
    ・画像に移動の特徴が十分に認識できるものであること。
 
である。
対象物の移動が速いときは2枚の画像では相関がとれないために計測ができないことになる。
したがって、2枚の画像は必要にしてかつ十分な時間間隔であることが必要となる。
たとえば、500mmの範囲で秒速10m/sで推移する流れを撮影したとする。カメラは640x480程度のカメラとする。
そうすると、カメラ1画素は0.78mmに相当し、粒子は、1画素分を1/12,800秒で進む。4画素の移動は1/3,200秒となる。
3,000コマ/秒で撮影できる高速度カメラを使えば直接撮影してもPIV計測は可能である。
しかし一般のカメラでは30コマ/秒かせいぜい100コマ/秒程度の撮影しかできない。
したがって、以下に示すような2枚だけのペアを短い時間間隔(1/3,000秒〜1/200,000秒)で撮影する手法が考え出された。
 
 
■ 撮影のタイミング
 上の図は、計測カメラ(Redlake社のMegaplus、MotionProX-4)を用いた撮影レイアウト図である。
このシステムでは、レーザライトシート光学系と光源(レーザ)に加え、時間タイミングを制御するタイミングパルスジェネレータを用いている。
タイミングパルスジェネレータは、カメラに撮影信号を送りパルス光源に発光信号を送る働きをする。
 カメラはPIV撮影のできるカメラが望まれる。
PIV撮影ができるカメラの最低必要条件は、電子シャッタ(それも全画素一斉にシャッタが起動するグローバルシャッタ)が行えるもので、しかも、画像の転送を挟んでそれぞれの画像で露光が設定できるものでなければならない。
つまり、ライトシート光源のパルス光は、カメラの画像転送直前に発光してペア画像の一番目を撮影し、カメラが画像を転送した直後に2番目の発光を行う。
この両者の間隔は1us〜1000us(1/1,000,000秒〜1/1,000秒)であり任意に設定が行えるものでなければならない。
 ほとんどのPIVカメラについて言えることであるが、PIV撮影での露出時間は上図チャートに示すようにペア画像の電子シャッタ時間がそれぞれ異なっている。
つまり、一番目の露光時間は短く設定できるのに対し、2番目の露光時間は固定となっていて、カメラ画像を転送するための時間となっている。
例えば1/60秒で画像の転送を行うカメラであれば2番目の露光は1/60秒で固定となる。
1番目の露光は、電子シャッタの働きにより任意に設定でき、一般の計測カメラで10us(1/100,000秒)、高速度カメラで1us(1/1,000,000秒)の設定ができる。
 電子シャッタは、露光が始まるまで受光した電荷を絶えずドレン(グランド)に掃き出している。
そして、撮影開始と同時に掃き出しを止めて露光を始め、設定した露光時間に達すると数マイクロ秒で転送部(もしくは蓄積部)に電荷を一斉に転送する。
転送部に移った一番目の画像は転送を開始する。
光を受ける受光部は空になり2番目の受光作業が整う。
この時、2番目の露光は短い露光をしたくても転送部に先の1番目の画像が入っているために、露光を手短に終えて受光を終えた電荷を転送部に移ることはできない。
前が詰まっているのである。
従って2番目の露光は1番目の画像が転送し終わるまで待たされることになり、そのまま露光時間となる。
 この問題(一番目の露光は短くできるのに2番目の露光は固定という露出時間が異なる問題)は、光源にパルス光源を使うことにより解決している。
PIVでは実際の露光をパルス光源によって行うために、パルス光源がシャッタと同じ働きをする。
したがって、撮影はパルス光源によるストロボ発光を活かすために暗い部屋で行うのが通例である。
レーザ光だけを透過させるバンドパスフィルタをレンズに取り付けて撮影する場合は、この限りではない。
 2枚の画像の時間間隔は、2発のパルス光源の発光間隔で決まる。
カメラが1枚目の撮影を終えて転送部に移すまでに数マイクロ秒かかるので、2枚目の発光はそれ以降でなければならない。
PIV計測に特化したカメラでは1マイクロ秒以下で転送部に移すものもある。
一般的に3マイクロ秒が転送部への移行時間であるので、2枚の画像間隔は1/333,333秒が最小となる。
タイミングパルスジェネレータは、2番目の発光タイミングを3マイクロ秒〜1000マイクロ秒で任意に設定するために使う。
 
・トレーサを入れた流れ動画像のPIV解析。(画像320x240画素)
・左が原画像の動画で右がPIV処理をした動画像(QuickTime、圧縮シネパック)。
・画像は連続画像。
・解析ソフト: IDT社ProVision。
・インターネットに載せるために画圧縮させたため、画像はあまり良好ではないが、流れのベクトル画像(右図)は良好に解析できている。色のついたベクトルは強い相関(流れ)を示している。
 
 上の動画は、簡単な連続画像(320x240画素)をPIV画像処理ソフトで処理した結果である。
PIV解析では、何度も言うようにパーティクル(粒子)1個1個を細かく追跡しているわけではない。
指定された範囲の中で画像パターンがどの方向に移動しているかを数学的に処理して移動方向と移動量を求めている。
したがって、この手法では画像の移動パターンが顕著に現れるような画像が理想であり、上の動画のような二値化画像でも十分に解析可能となる。
 
 
 
 

■ トレーサ(Tracer、追跡粒子)  (2007.07.07)

 流れの可視化画像処理では、トレーサの選択が重要な計測要素であり計測精度を決定する。トレーサは、以下の性能を持つものが望まれる。
 
   1. 流れの場に追従する軽いもの。(比重、大きさ、耐久性)
   2. ライトシートによって浮き上がる反射特性の良いもの。
   3. 人体、環境にやさしいもの。
 
 こうした条件と研究対象にあわせて、いろいろなタイプのトレーサが試され使われてきた。
以下に述べるものは、今まで使われてきたトレーサの中の一部である。
蛍光を発するものや、樹脂を中空にしたもの、金属の粉や液体をミストにする方法などいろいろな微粒子がトレーサとして考案されてきた。
トレーサは、トレーサとして開発されたものは極めて少なく、一般に出回っている微小粒子を流用したものが多い。
塗料などのつなぎ剤に使われる材料が多く使われてきた。
 
 
 
 
■ 液体 流動パラフィン(Liquid Paraffin)
常温で液体になっているパラフィン。
建造物の流れの可視化、エアコン、自動車室内の空気の流れの可視化に使用されている。
流動パラフィンの使い方は、加熱して蒸発させミスト状にして使用する。
スモークワイア法は、流動パラフィンをエナメル線で蒸発させて行っている。
流動パラフィンと銀箔を混ぜニクロム線(径0.6mm〜1.0mm)に筆で塗布する。
銀箔を混ぜるのは熱伝導を良くして流動パラフィン(Liquid Paraffin)の持ちを長くし、かつ一定の位置からスモークを発生させるため。
また、ライトシートによる可視化にも都合が良い。
スモークの発生はスライダックの電圧で調整する。
ニクロム線の径は小さい方がきれいな流線が発生する。
風速0.1m/s〜5m/sまでが適当。
 
■ 液体 パラフィン系(グリコーゲン)
スタジオ、舞台などのスモークとして使われている粒子である。
空気の流れの可視化に利用される。
スモーク粒子:0.25〜60ミクロン
液使用量:専用液(パラフィン系)2.5リットル/毎時(最大)
 
■ 液体 グリセリン、プロピレングリコール
φ3um〜φ5um程度の粒子が発生する。
空気の流れの可視化に利用される。
 
■ 液体 シリコン SSI(Silicon Oil Particle Scattering Imaging)手法
燃料の噴霧研究用に使用。
燃料(Oソルベント:C12H26 21.4% + C13H28 51.6% + C14H30 22.0%)に5%シリコンオイルを混ぜて使用。
シリコンオイルを少量混ぜることにより燃料が霧化されて撮影できなくなってもシリコン粒子が霧化された燃料の近傍に残る。
シリコン粒子は、レーザシート光で散乱され撮影に十分な強度が得られる。
光源は銅蒸気レーザを使ったレーザライトシートが適当。
シリコン粒子がトレーサとなって霧化状況をレーザシート手法で可視化できる。
また、噴霧から燃焼に至る過程では燃焼温度によりシリコン粒子が気化するため燃焼過程ではレーザシートの散乱が生じない。
この性質を利用して、燃焼の起きない窒素雰囲気と燃焼が起きる空気雰囲気についてSSI手法による撮影を行い着火パターンの特定まで言及可能。
撮影速度は、20,000コマ/秒。
 
■ 気体 水素気泡
水素で作るシャボン玉。
空気の流れの可視化に利用される。
シャボン玉に水素を入れるのは危険が伴うので、ヘリウムを使うことが多い。
水の中で電極を入れて電気を流すと電気分解により水素の気泡を発生。
この原理を利用して水の流れの可視化に使われる。
 
■ 樹脂
三菱化成製 MCI GEL、CHP 20P (白色微小粒子、75um〜105um)
液体の流れの可視化に利用。
 
■ 樹脂 中空マイクロバルーン
エクスパンセルとして知られる塩化ビニリデン/アクリロニトリルの熱膨張性中空真球粒子。
空気の流れの可視化に使われる。
平均粒径φ70um
平均密度 0.025
 
■ 樹脂 ナイロン SP-500L Toray
ナイロン12で作られた真球粒子。酸化チタンコーティングが施されて反射特性が向上。
水のトレーサとして使用。
比重1.08
平均粒径φ50um(5umの微粒子もある。)
ナイロン粒子は、この他にダイアミド(150um)、オルガソール(50um)などがある。
これらの粒子は、塗料のつなぎ剤として作られていて、塗装後焼き付けることにより
ナイロン粒子が溶けて膜が作られ強い塗装保護膜となる。
 
■ 固体 樹脂 フロービーズ(真球状粉末樹脂)
医学人工心臓の流れの可視化に使用。
水との相性良い。
低価格。
フロービーズは、真球状で流動性、分散性に優れている。
塗料の艶消し、接着剤、インキの改質剤、ゴムのはく離剤として使われているものを流用している。
平均粒子6、12、10、15、180、360、600、850um
密度0.918 - 0.958
材質:高密度ポリエチレン、着色も可能。
 
■ ガラス グラスバブルズ(Glass Bubbles)(=マイクロバルーン)
ガラス製中空バブルで粒径は約177um。
塩の粒子の1/4程度。
比重が0.15(g/cc)。
色は白色。
塗料のつなぎ材として開発された。
用途は爆薬のスラリー、接着剤のパテ、補修パテなど。
熱については600℃まで安定。
エンジンの吸気、排気の流れの可視化に利用。
光源はアルゴンレーザ4W。
1000コマ/秒程度まで撮影可能。
 
■ 固体 プラスチック 液晶ギャップスペーサー
液晶に使われているスペーサをトレーサとして利用。
液晶のスペーサーはセル・ギャップを一定に保つために重要。
粒子径は、5ミクロン。
材料はプラスチックやシリカが使われている。
粒径精度が厳しいので高価。
 
■ ホコリ
空気の流れの可視化に利用。
学術的には使われないが、レーザシートを当てると可視化される。
通常の撮影ではよく見えるが高速度カメラには反射輝度がたらないため写らないことが多い。
 
■ 発泡スチロール
簡単なトレーサ。
細かいものは入手しづらい。
静電気を持つので静電除去処理をして使う必要あり。
空気や水面の流れの可視化に利用。
 
■ タバコの煙/線香の煙 
簡単なトレーサ。
空気の流れの可視化に利用。
タバコの煙の粒子は細かいので、拡散してしまうと写らない。 
 
 
 
 
 
 
 
■ 蛍光粒子
ポリスチレン真球粒子に蛍光染料を染み込ませた粒子。
水の流れの可視化に使用。
平均粒径: 200-400um。
比重: 1.03
 
■ 蛍光剤 ローダミン
レーザ励起蛍光法(LIF)蛍光剤ローダミンB(Rhodamine)。
アルコールに混ぜて使う。0.3mg/リットル。
色素レーザの色素として使われる。
製造元 Kodak
 
■ 蛍光色素 エオシンY(eosin yellowish, eosin Y ws、iC20H6Br4Na2O)
YAGレーザの第二高調波532nm用のトレーサで黄色の蛍光を発する。
水溶性。
インジェクタなどの連続噴霧されるノズルから出る液滴の噴霧状況をYAG単発レーザを使って可視化する目的に使用。
蛍光剤エオシンYを10g/リットルの割合で溶解。
蛍光剤を入れることにより、液滴によって多重散乱した光の影響を除去することができる。
すなわち、多重散乱した光は緑色で、本来のレーザシートは黄色になるためバンドパスフィルタを用いると光の分離が良好になる。
 
■ 液体 ケトン
燃料噴霧の可視化に使用。
ケトンを燃料に添加。
燃焼場に紫外レーザを照射してケトン分子を励起。
λ=400nm近辺の青色発光を拾って撮影するLIF(Laser Induced Fluorescence = レーザ励起蛍光法)。
銅蒸気レーザを使った10mJ/パルス、1KHz、λ=255nm。
 
■ 蛍光 2,3ブタンジオン
LIF燃料蛍光剤。ガソリン燃料の可視化に使用。
燃料は、ガソリンそのものではなく、ガソリンの沸点に近い2,2,4-トリメチルペンタン(沸点99℃)を使用。
トレーサは、燃料と沸点の近い2,3ブタンジオン(沸点87℃)を使う。
混入体積割合は2%。蛍光波長はλ503nm。
レーザは、KrFエキシマレーザを使用。
 
 
 
 
■ 金属 アルミ粉
一番簡単なトレーサ。
水の流れの可視化に利用。
水にアルミ粉を混ぜて撮影する。
古くからある手法でライトシートを用いずそのままフィルムカメラや映画カメラで撮影していた。
 
■ 金属 微小球状粒子
Micro Spherical Feather
材質は酸化シリコン(SiO2)。この材質をφ5.5umのサイズにし、形状も中空にして球状にさせている。
従来のExpancelのφ20umに比べ格段に小さい。
高温に耐え、球状であるため反射特性がよく、中空・球状であるため軽い。
また非常に微小なのが特徴。
バーナー火炎(furnace)に入れてPIVを行っている。
問題点は5.5umと小さいため撮影装置の解像力が要求されること。
 
■ 金属 シリコンカーバイド、二酸化チタニウム
燃焼用の火炎トレーサとして使用。
 
■ 金属 硫化亜鉛粒子
医学分野の動脈の流れの可視化に利用。曲がった血管の流れがどのように流れていくかの可視化に実績。
その他、剪断応力の影響の検証にも使用。
Nd:YAGレーザ + 3倍高調波、10MW、10nsの強い光をトレーサに照射。
紫外光により燐光を発する。発光寿命は1.1秒。
蛍光硫化亜鉛粒子径: 15um。
比重4.1g/cc(水より重い)。
蛍光は微弱であるためI.I.を使用。
 
■ 金属 酸化チタン(.5um)白色顔料
液膜の可視化。
酸化チタン(.5um)は白色顔料。
 
 
 
 

 
 
 
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