更新日時:2008年 6月 22日 日曜日 - 6:57 PM
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光と光の記録 --- レンズ編  (2004.06.23)(2008.06.22更新) 
 
レンズについて
 
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 ■ 目次
 
■ レンズの働き(Lenses)
■ レンズのいろいろ(Lenses)
  ▲ レンズとレンズマウント
  ▲ 一眼レフカメラ用交換レンズ
  ▲ CCTV用(Cマウント)交換レンズ
  ▲ ズームレンズ
  ▲ 大判カメラ用レンズ
  ▲ 顕微鏡レンズ
  ▲ 望遠鏡レンズ
  ▲ その他
■ 光を集める作用(Light Collection)
  ■ 近軸光線(Paraxial Rays、ガウス光学 Gauss Optics)
  ■ 球面レンズの曲率半径と焦点距離の関係
  ■ 焦点距離と画角(Focal Length, Angle Of View)
  ■ 撮影倍率 (Magnification)
  ■ ピント調整(フォーカシング、Focusing)
■ 絞りの作用(Diaphram)
  ■ 絞りと集光ボケ(Diaphragm, Image Blur)
  ▲ イメージサークルと絞り
  ▲許容錯乱円(きょようさくらんえん、Allowable Image Blur)
  ▲ レンズ解像力の数値的表現
  ▲ 光が集まる焦点位置
  ▲ 絞り作用が効くレンズ、効かないレンズ
  ▲ テレセントリック(Telecentric)配置
  ▲ 絞りの位置 - 入射瞳、射出瞳 (Entrance Pupil、Exit Pupil)
  ▲ 絞りの位置による像の歪み
  ▲ 特殊な光源を使った撮影での絞りの効果
  ■ 焦点距離と口径(Focal Length and Optical Diameter)
  ▲ F値の由来
  ▲ Fストップと開口数N.A.(Numerical Aperture)
  ▲ N.A.の前提条件 - アプラナート(aplanat)
  ▲ F値の光伝達能力
  ▲ 絞りの光量調節機能
  ▲ Fナンバー、Tナンバー
  ▲ 明るいレンズ(Fast Lens, High Speed Lens)の由来
  ▲ Fナンバーと有効Fナンバー
  ▲ 絞りと周辺光量
  【Cos4乗則】
  ▲ 焦点深度(しょうてんしんど、Depth of Focus)、
     被写界深度 (ひしゃかいしんど、Depth of Field)
  ▲ 過焦点距離(かしょうてんきょり、Hyper-focal distance)
■ 像を結ぶ作用
  ■ ピンホールレンズ(Pinhole lens)
  ■ 完全結像光学系(Perfect Optical Instrument)
  ■ 鏡とレンズ(Mirrors and Lenses)
  ■ 凸面鏡(Convex Mirror)
  ■ 凹面鏡(Concave Mirror)
  ▲ 非球面鏡(Aspheric Mirrors)- 放物面鏡、楕円面鏡、双曲面鏡
  ■ 凸レンズと凹レンズ(Convex Lenses and Concave Lenses)
  ■ 単レンズの種類(Kind of Lenses)
   1. 球面レンズ(Spherical lens)
   2. 非球面レンズ(Aspherical lens)
   3. シリンドリカルレンズ(Cylindrical lens、円筒レンズ)
   4. トロイダルレンズ(Toroidal lens、円環レンズ)
   5. フレネルレンズ(Fresnel Lens)
    ▲ 灯台のランプハウス
   6. グリンレンズ(GRIN lens = Gradient Index lens)
   7. ゾーンプレート(Fresnel Zone Plate lens = FZP、回折レンズ
    ▲ 回折光学素子(DOE = Diffractive Optical Element)
 
  ■ 薄いレンズ、厚いレンズ
  ■ 二枚のレンズを使った場合の結像の関係
  ■ 実際のレンズの機能と役割
   【ペッツバール(Petzval)と写真レンズ】
   【光線追跡】
■ レンズの収差(Aberrations)
  ▲ 色収差 (Chromatic Aberration)
  ▲ 球面収差 (Spherical Aberration)
   ■ アプラナート(aplanat)
   ■ アッベの正弦条件(Sine Condition)
   ■ 単レンズの球面収差
  ▲ 非点収差 (Oblique Astigmatism)
  ▲ コマ収差 (Coma)
  ▲ 歪曲収差 (Distortion)
  ▲ 像面湾曲 (Curvature of Field)
   ■ ペッツバール和(Petzval sum)
   【ザイデル (Philipp Ludwig von Seidel:1821-1896)】
   ■収差の補正されたレンズ
■ 写真レンズ(Photographic Lenses)
  ■ 写真レンズ開発の歴史
  【ツァイスとアッベとショット】
   ■カール・ツァイス
   ■エルンスト・アッベ
   ■オットー・ショット
  ▲ 写真レンズの基礎の確立と光学ガラス製造の確立 : ドイツとイギリス
  ■ 光学ガラスチャート
   ▼ BK7
  ■ 光学ガラスの特徴 - ガラスって?
  ■ 代表的な写真レンズ - ガウス、トリプレット、テッサー
   ■ ガウスタイプ(Gauss)
   ■ トリプレットタイプ(Triplet)
   ■ テッサータイプ(Tessar)
   ■ 至宝のカメラレンズ - 映画カメラに使われるツァイスレンズ
■ レンズの解像力(Resolving Power)
  ▼ 濃度によるレスポンス、周波数によるレスポンス
  ▼ アナログとデジタル(Analog vs. Digital)
  ▼ デジタルとは
  ▼ フィルムのレスポンス、固体撮像素子のレスポンス
  ▼ ナイキスト周波数の考え方
  ■ 開口率(Fill Factor)と解像力
  ▲ MTF曲線
■ 機能別レンズの種類
  ■ 虫メガネ(magnifying glass, loupe)
  ■ メガネ(a pair of glasses)
  ■ 一眼レフカメラ用レンズ
   ▼ フルサイズ撮像素子
   ▼ 広角視野での撮影
  ■ ビデオカメラ用レンズ(CCTV Lenses)
  ■ 大判カメラ用レンズ(Large Format Lenses)
  ■ 紫外レンズ(Ultra Violet Lenses)
  ■ 赤外レンズ(IR = Infra Red Lenses)
  ■ 顕微鏡レンズ(Microscope lenses)
   【対物レンズ(Objective lens)】
   ▼有限補正・無限補正、鏡筒長 = Mechanical Tube Length)
   【接眼レンズ(Eyepiece、Ocular)】
   ▼ 視野レンズ(Field Lens)
   ▼ 視野数(Field of View)
   ▲ ケーラー照明(Koehler Optics)

 
  ■ 望遠鏡レンズ(Telescope Lenses)
   ▲ 無限遠と有限距離(Infinity Optics、Finite Optics)
   ▲ 望遠鏡の倍率(Magnification of Telescope)
   ▲ 簡易望遠鏡 - 双眼鏡(Binoculars)
   ▲ プリズム(Prism)
    ▼ ポロ・プリズム
    ▼ダハ・プリズム
   ▼ 双眼鏡の性能
   ▼カタログ値の説明
   ▼ 望遠鏡の接眼レンズ(Eye Piece、Ocular)
   ▼ 視界(Field of Vision、Field of View、Visual Field)
   ▼ 瞳距離(Eye Relief)
   ▼ 瞳径(ひとみけい、exit pupil)
   ▲ 望遠鏡対物レンズ(Objective)
    ▼ 屈折型望遠鏡(ケプラー式)
     ■ ヤーキス天文台
    ▼ 屈折型望遠鏡(ガリレオ式)
    ▼ 反射式望遠鏡(ニュートン式)
    ▼ 反射式望遠鏡(カセグレン式)
     ・マクストフ・カセグレン(Maksutov-Cassegrain)望遠鏡 
    ▼ その他の反射望遠鏡1(ナスミス式)
    ▼その他の反射望遠鏡2(シュミット式)
    ▼その他の反射望遠鏡3(リッチー・クレティアン式)
  ▲ 反射鏡素材
    ■ULE(Ultra Low Expansion)
    ■ゼロデュア(Zerodur)
    ■ボロシリケートガラス(ほう珪酸ガラス、PYREX)
    ■溶融石英(Fused Silica)
    ■青板ガラス(Soda-lime glass)
    ■金属鏡(Metal Reflection Mirror)
     ▲ 反射鏡メッキ(Front Silvered Mirror)
  ▲ 日本の最新式天体望遠鏡 - すばる(Subaru)
   ▼ AO(Adaptive Optics = 波面補償光学装置、Active Optics)
    ・ レーザガイドスターシステム(Laser Guide Star System)
   ■ CCDカメラ:すばる主焦点広視野カメラ(Suprime-Cam)
  ▲ 宇宙に飛び出した最新式天体望遠鏡
        - ハッブル(Hubble Space Telescope、HST)
   ▼ ハッブルに搭載されている光学カメラ
   ▼ 新しいカメラWFC3
  ■ 光ファイバ(Fiber Optics)
   ▲ モード(Mode)
   【ライトガイドとイメージガイド】
   【ファイバーオプティックプレート、Fiber Optic Plate(FOP)】
   【ファイバーオプティックテーパー、Fiber Optic Taper(FOT)】
   【ファイバーロッド、Fiber Rod、Image Conduit】
■ 特殊なレンズ光学系
  ▲ テレセントリック光学系(Telecentric Optics)
  ▲ 無限遠光学系(Infinity Optics)
  ▲ レーザライトシート(Laser Light Sheet)
  ▲ シュリーレン光学系(Schlieren Optics)
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■ レンズの働き(Lenses) (2004.08.06)(2005.09.20追記)

【光学機器の中心 - レンズ】
 レンズは光を集めて像を作るもので、光学機器の最も基本的な部品です。レンズは、2次元の空間情報を一挙に取得することができる画期的なものです。光学機器では、レンズが一番大切な働きを担っていてもっとも大切な所です。人間で言うと「眼」と同じ働きを持っている所、と考えればその大切さがわかると思います。人の生活で「眼」の働きは非常に大切なものです。光学機器を見てみると、レンズを中心としていろいろなものが周りを固めて器械を構成している感を受けます。それほどレンズは大事なのです。レンズの働きを知ることにより、光の記録がどのように行われるかを知ることができます。
 
【レンズの機能】
 レンズの一番の基本は、光を集めることです。光を上手に集めると、物体の一点から放射された光がふたたび一点に集まるので、像ができるようになります。精度の良いレンズは、ある一点から放射された光を集光する際に一点に精度良く集めることができるので、いろいろな所から出た光をちゃんと分別して別々に集めることができます。これが像を作る作用です。
 
【レンズの出現】
 レンズは、13世紀に作られます。視力補正のための遠視用メガネとしてイタリアで発明されました。当時、イタリアの商業都市ベニス(ベネチア)は、ガラス工業(Venetian Glass)が栄えていてその発展としてメガネが発明されました。
 メガネの発展から、虫メガネ、顕微鏡、望遠鏡と発展し、19世紀になって銀塩による感光材料が発明されると写真撮影用のレンズが急速に発展します。レンズは、人の視力を補正する目的で作られたメガネから、遠い天体を見る望遠鏡、小さなものを見る虫メガネ、顕微鏡などで大いなる発展を見ます。遠いところにある星の観察には、望遠鏡はなくてはならない器械でした。小さな世界にも神秘な現象がたくさんありました。細菌が発見されたのも顕微鏡のおかげです。
 
【カメラの発明】
 19世紀になると、銀を利用した感光材料が発明されます。銀塩感光材料とレンズの組み合わせが、光学器械の歴史を大きく前進させます。これがカメラの発明です。カメラが発明される前、レンズを使って壁に物体を投影させて、それをなぞって風景がや人物像を描くカメラオブスキュラ(camera obscura)という大きな部屋が作られていました。この部屋の中での画家の作業を銀塩感光材料が取って変わるようになり、カメラの時代になりました。カメラオブスキュラの大きな建物が、精緻なレンズをつけた小さな暗箱に縮小しました。
 
【電子カメラの発展】
 1940年代以降、電子工学の発展によってテレビ技術が大いに発展し、無線技術と相まってテレビジョン放送が大きな飛躍を遂げました。それに伴って、画像を電子で撮影し記録するテレビジョン技術とビデオ技術が発展し、デジタル技術とコンピュータの発展の後押しにより、CCDカメラの開発を経てICメモリによるデジタル画像が大いに発展しました。
 
【時代を貫くレンズ】
 今述べたように、記録媒体の幾多の変遷があってもレンズの存在は大きく常に中心的役割を果たしてきました。レンズの役割は昔も今も大きなものだったのです。
 
 
 
 
 

■ レンズのいろいろ(Lenses)

 レンズは、左に示すようにたくさんあります。どうしてこんなにたくさんあるのでしょう? 教科書の多くは、レンズの説明をする際に、両側が膨らんだ両凸の透明ガラスを描いてそれをレンズとしていろいろな説明をします。しかし、現実のレンズは、かくも多様でしかも多種類あるのです。
 レンズの詳しい説明は追って行うとして、現在市販されている(写真)レンズの代表的なものを、使用者の側に立って概括します。レンズ設計者の側に立った説明は、追々行っていきます。
 
▲ レンズとレンズマウント
 銀塩写真の発明以降、様々なカメラが作られ、その撮影目的に応じていろいろなレンズが設計されて作られてきました。これはなんとなく理解できます。もう一つの素朴な疑問として、カメラ取り付けるレンズマウントがなぜまちまちなのか?というのがあります。なぜこのようにたくさんのレンズマウントがあるのでしょう?
 カメラ用のレンズというのは、そもそも専門的な人たちが使っていました。もしくは、カメラに予め取り付けられていたため、交換する必要のないものでした。それが時代が下るにつれて現在主流になっている35mm巾の銀塩フィルムを使ったカメラが普及します。1950年以降、ライカサイズ(現在主流のフィルムサイズ)の一眼レフカメラが使いやすいことから大いに普及し、カメラメーカが独自の交換レンズを作るようになって、カメラに合わせて独自のマウントを作りました。産業用のビデオカメラ用のCマウントのように、ほんのちょっとだけ借用するつもりで使い始めた古い規格のマウントが、市場に押されるようにして一般化して長い間使われ続けているものもあります。
 
▲ 一眼レフカメラ用交換レンズ
 左の写真のレンズのうち、上の段に並んだレンズが、35mm一眼レフカメラに使われている交換レンズです。35mm一眼レフカメラとは、35mm巾の銀塩フィルム(パトローネフィルム)を使った一眼レフレックスカメラ(Single Lens Reflex Camera = SLR)のことで、カメラレンズを通してファインダーで被写体を見ることができます。このカメラは、カメラの頂上部にトンガリ形状のペンタプリズムがあるのが特徴で、ペンタプリズムを通してカメラレンズから通した像を直接見ることができました。それまでのカメラはカメラレンズとは別にファインダがあったのです。ペンタプリズムを持ったカメラは高級カメラの代名詞でした。一眼レフカメラは、レンズを通してファインダ越しに被写体が観察でき視野の確認やピント合わせも楽であったことから、遠いものから近いものまで自由に撮影でき、しかも、広い範囲を撮影するために焦点距離の異なるレンズがたくさん作られて、しかもそれが容易に交換できるようにレンズマウントが統一されていました。カメラ愛好家にとって夢のようなシステムだったのです。
 現在(2008年)では、フィルムの需要が激減してこれら一眼レフカメラもCCD やCMOS 固体撮像素子を使ったデジタルカメラに移行してしまいました。デジタル一眼レフカメラとフィルム一眼レフカメラの関係は、オーディオ世界のCDとLP(アナログ)レコードディスクの関係に似ています。
 
▼ ニッコールマウント(Fマウント)レンズ
 上に示したレンズ群のうち、上段に示したレンズは(株)ニコンが製造販売しているニッコール(Nikkor)レンズと呼ばれるものです。ニコンが一眼レフカメラレンズに採用しているレンズマウントをFマウントと言っています。レンズマウントが統一されていると言ってもそれは同一メーカ内だけの話であって、カメラメーカが違えばマウントが異なります。キヤノンは独自のマウントを採用していますし、ペンタックスもコニカミノルタ(現ソニー)もそれぞれ独自のマウントでレンズを作っています。この事実は、カメラメーカというのはレンズを作るのがメインであって、レンズメーカーにとってカメラはそのオマケみたいな意味合いが強く、レンズマウントを統一しようという機運など端からなかったことを意味しています。
 昨今のコンピュータ機器は、USB規格にしろIEEE1394にしろすべて規格統一のためのコンソーシアムができあがって、まず規格を統一させてそれから切磋琢磨をして競争をするのですが、レンズができあがってきた歴史的な背景を見てみますと、統一をやかましく叫ぶだけのユーザがたくさんおらず、プロ写真家やアマチュアカメラマンが銘々に好きなレンズメーカのカメラを買ってレンズを使っていたという事情に気づきます。
 ニコンのFマウントは、1959年に「ニコンF」と言う一眼レフレックスカメラが開発された時に採用されたレンズマウントで、以後50年近く互換性を維持してきた存在感のあるレンズマウントです。
 
▼ 一眼レフカメラのレンズ
 35mm一眼レフカメラは、1950年にドイツのツァイス・イコン社が開発したコンタックスというカメラで実現しました。カメラの上部に五角形形状をしたペンタプリズムを配置して、カメラレンズをフィルムとレンズの間に配置した反射ミラーで跳ね上げて、ペンタプリズムを通してアイピースで覗き、フォーカスやシャッタチャンスを刻々と追いかけることができるようになりました。一眼レフカメラが出る前は、ドイツのライツ社がライカというレンジファインダー式の35mmカメラを開発(1913年)して一斉を風靡していました。このカメラにはレンズを自由に交換するという設計思想はなく、レンズは固定で、できてもせいぜい2本から3本程度の交換レンズしか利用できませんでした。レンジファインダー方式では、たくさんのレンズを交換した際に、全てのレンズに合わせるフォーカス調整が難しかったのです。
 一眼レフカメラの出現は、それまでのカメラワークを一変させてカメラの活動範囲を驚くほど拡張しました。戦争記録写真にも威力を発揮しました。とは言っても、一眼レフカメラが出たのは第二次世界大戦後ですから威力を発揮したのは朝鮮動乱以降になります。一眼レフカメラを使った写真は戦場からのリアルな映像を全世界に送る重要な任務を担いました。スポーツ写真や報道写真にも一眼レフカメラの機動性はいかんなく発揮されました。一眼レフカメラはレンズのあるべき姿を変え、交換レンズというアクセサリーを拡張しました。交換レンズによって、写真の表現が拡がったのです。
 1970年後半には、ミノルタから自動フォーカスができる一眼レフカメラ「α7000」が開発され、全自動カメラの幕開けとなりました。昨今の一眼レフカメラは、コンピュータの進歩の恩恵にあずかり露光が自動になり、またズームレンズも良いものができたのでレンズを交換する手間もなくなり、シャッタチャンスと構図に神経を使うだけのものとなりました。
 
▼ 一眼レフのズームレンズ
 一眼レフレックスカメラのレンズシステムを見ると、レンズというのは、レンズ1本ですべてをまかなって撮影することは難しいこと教えてくれています。先に示したレンズ群の上段3本のレンズはすべて焦点距離が固定の単焦点レンズと呼ばれているもので、二段目のレンズが、焦点距離を変えられるズームレンズと呼ばれるものです。
 歴史的には、単焦点レンズが作られ、時代を経るに従いズームレンズが作られるようになりました。ズームレンズは1本のレンズで焦点距離が変わるため、カメラを被写体に近づけたり遠ざけたりしなくても、カメラを動かさず希望する大きさで被写体をとらえることができます。映画撮影では、ズームアップ、ズームダウン描写という魅力的な撮影ができることから、ズームレンズは必要不可欠なレンズでした。ズームレンズは映画撮影の要求から発展したと言っても過言ではありません。
 35mm一眼レフカメラでのズームレンズの歴史は、20年ほどぐらいしかありません。理由は、ズームレンズは単焦点レンズに比べて描写が甘いこと、明るいレンズの製作が困難なこと、レンズ設計が難しく個人で買うには価格も相当高かったことが上げられます。しかしながら、レンズ設計にコンピュータが使用されるようになって、複雑で忍耐のいるレンズ設計が短時間でできるようになり、また、非球面レンズの製造やレンズコーティング技術が確立し、それにデジタルカメラの普及も手伝って、ズームレンズの需要が高まりズームレンズの高性能化に拍車がかかりました。現在では、デジタルカメラのすべてにズームレンズが標準装備されています。
 しかし、ズームレンズが普及してもなお単焦点レンズが生き残っているのは、ズームレンズよりも今なお描写能力が優れていることと、明るいレンズの製作ができるため存在価値が十分にあることを示しています。私自身も、映像計測の分野に身を置いていますと、ズームレンズよりも単焦点レンズの恩恵をずいぶんと受けています。計測分野では被写体範囲を頻繁に変えてズーム撮影をする必要がないので、しっかりとした、切れが良くて明るい単焦点レンズの需要がかなりあります。
 一眼レフカメラ用レンズの大きな特徴は、操作性です。携行性に優れ、レンズの絞りやフォーカス合わせ、それにレンズ交換が簡単にできることが何よりも求められました。その結果できあがったのが上の写真に見られるようなレンズ群なのです。最近は、レンズフォーカス、レンズ絞りが電動化され自動で行えるものが一般になりました。
 
▼ 一眼レフカメラのニッコールFマウント
 計測用カメラを扱っているといろいろなカメラレンズを流用します。その中で最もよく使われているレンズがニコンのFマウントレンズ、Nikkorレンズです。
 どうして、このレンズが多く使われるようになったのでしょうか。
 日本の計測カメラメーカのみならず、欧米の計測カメラメーカーも必ずと言っていいほどニッコールレンズのFマウントをつけたカメラを作ります。キヤノンマウントやオリンパスマウントではいけないのでしょうか。実は、この事実の歴史的背景には、計測カメラが主流にはなく亜流の流れであったことがあげられます。これらの分野は、カメラを量産するほどの大きなマーケットではないために、レンズ会社がカメラを手がけなかったのです。特殊なカメラは新興勢力が作ってきたのです。したがって、レンズは市販の安価で入手しやすいレンズを用いたのです。計測カメラを使う計測分野では、ニコンのレンズが圧倒的に浸透していたためそれを流用したのです。
 1960年代から1970年代の大学の研究室や、国や企業の研究機関には研究記録用としてニコンFカメラがありました。ニコンFカメラは、本格的な一眼レフカメラでしっかりと作られていました。その上、ファインダーや交換レンズ、自動巻き上げモータ装置などシステムも豊富であったため、研究目的用に使い道があり、少々高くても研究機関では揃えることができたのです。もちろん交換レンズの品揃えも品質もドイツレンズメーカとはいかないまでも当代随一で、いろいろなレンズを使うことができました。
 こうした理由から計測カメラメーカがライカサイズのニッコールレンズを使うようになり、後発カメラメーカもそれにならうようにして使い出しました。1990年から急速に発達した大画素固体撮像素子による高画質デジタルカメラの出現に至ってもこの傾向は続き、ほとんどの計測カメラにFマウントレンズを装着する現象が続いています。
 下の写真は、計測用のCCDカメラです。このカメラにもレンズマウントはニコン社のFマウントを採用しています。
 
計測用冷却型CCDカメラ Redlake社 Megaplus EC11000
画素 4,008 x 2,672、12ビット濃度、
撮像素子サイズ36mm x 24mm、撮影速度4.6コマ/秒
レンズマウント: ニッコールFマウント
 
 
▲ CCTV用(Cマウント)交換レンズ
 CCTVというのは、Closed Circuit Televisionという意味の略で、産業用テレビという意味合いが強い言葉です。産業用向けのカメラは、CCTVという言い方の他に 、ITV(Industrial TV)という言い方もしていました。これらの言葉の裏には放送用テレビとは別のものという言葉が隠されています。放送局が使うほどの高品質を要求されない、マシンビジョン用、サーベランス(監視)用、学術研究用のテレビカメラという意味が込められています。一般産業用に使われるレンズのマウントは、"C"マウントと呼ばれる規格のレンズが一般的です。
 
▼ Cマウントレンズ
 Cマウントレンズは、もともとは16mmフィルム映画用のカメラレンズとして使われていました。1940年代の話です。16mmフィルムというのは、劇場用の映画フィルム(35mm)の下のランクに位置するもので、小規模の映画、記録用映画、ニュース取材用に使われていたフィルムです。35mmフィルムよりフィルムサイズが小さく経済的なフィルムでした。35mmサイズの上のフィルムに70mm巾サイズのフィルムがあります。これは、大型映画に使われています。16mmフィルムカメラに使われていたレンズマウントは、1インチ口径(25.4mm)に1インチ当たり32山のピッチを切ったネジを持ったもので、これをCマウントと呼んでいました。
 1960年以降、産業用のテレビジョンカメラが開発された時、ビジコンなどの撮像管のイメージサイズが16mmフィルムカメラのイメージサイズに近かったことからこのレンズが使われるようになりました。
 35mm一眼レフカメラ用のレンズはたくさんのメーカが個別にレンズマウントを作っていたのに対し、産業用テレビレンズのマウントがCマウントに落ち着いたのは興味あるところです。おまけに、60年以上も前の規格が現在まで使われているのもとてもおかしな話です。当時のこの分野はそれほどのマーケットがあるわけではなく、特殊な応用分野だったのでレンズを新しく作るのではなく、16mmフィルムカメラ用のレンズを流用したというのが本当の所のようです。
 この分野は、1980年代に入るとVTRやCD、DVDなどの記録装置の発展に追随してはじけるように急成長し、多種多様なカメラが製品化されました。カメラがたくさん作られても、カメラメーカーはレンズマウントに執着することなくCマウントレンズを採用したため、現在もなおCマウントのレンズが使われているのです。
 このCマウントもカメラの小型化に伴って若干の変化が見られます。一つはCマウントの口金を同じにしてフランジバックを短くしたCSマウントと呼ばれるものであり、もう一つは口金サイズを一回り小さくしてメトリック寸法でネジを切ったNFマウントです。すべてが全自動に向かう中、レンズ交換にインチネジを持ったレンズをカメラにねじ込むのは滑稽な話ではあります。
 産業用のカメラレンズは、撮像面が35mm一眼レフカメラのフィルム面よりもかなり小さいため、イメージサークルを小さくとることができレンズ口径も小さくコンパクトに作ることができます。最近は、たくさんのレンズメーカがCCTVレンズを手がけるようになってレンズも安価になりました。電動によるリモートフォーカス、絞り調整、ズーム機能を持つものも多数製造されています。
 メガピクセルカメラの発展は、レンズにも対応を余儀なくされています。メガピクセルの画素が埋め込まれた撮像素子が小さくなるにつれてレンズ焦点距離が短いものが必要になり、4ミクロン程度の画素に像を結ばせるために高解像度のレンズが必要になってきています。
 この分野のレンズは、監視カメラ用や部品検査用などの計測分野に使われることが多いので電子化が進み、自動フォーカス、自動絞りが組み込まれたものが多くなっています。
 
 
▲ ズームレンズ
 ズームレンズは、8mmフィルムカメラの需要、35mm映画カメラの需要から製品化がスタートしました。開発したのは英国のCooke社で、Varoレンズと呼ばれたズームレンズが米国Bell&Howell社のフィルムカメラに取り付けられました。1932年のことだったそうです。1932年といえば、レンズコーティング技術が確立していない時代です。ズームレンズは、レンズエレメントが多いため、開発初期のズームレンズはおそろしく暗くてフレアの多いレンズだったにちがいありません。ズームレンズは、ズーム比を変えるため焦点距離が変わります。焦点距離が変わるとやっかいなことに撮像面上でのピントがずれる問題があります。焦点距離を変えていってもフォーカスが変わらないレンズがズームレンズ設計がもっとも大切な要素で、レンズ設計上一番大きな問題になりました。ズームによって変わる焦点距離に合わせて焦点位置を絶えず一定に保つためのカム機構は設計や製造が難しく、大きいズーム比を持つレンズの設計や広角側(焦点距離の短い)レンズの設計は困難を極めたそうです。ズームレンズは、映画業界の需要が製品を押し上げ、昨今のデジタルカメラの普及で加速を促したと言っても過言ではありません。
 映画カメラ用のズームレンズは、1965年、フランスのアンジェニュー社が画期的なカム送り機構による10倍というズーム比の大きいレンズを設計製作し、映画用ズームレンズの最右翼となりました。以後、20倍、40倍というズームレンズが開発されていきます。
 テレビ放送業界ではズームレンズは常識で、明るくてズーム比の大きなレンズが使われています。とくに中継用のテレビカメラに使われるズームレンズはズーム比が100倍を超えるものがあり、これは焦点距離がf8.9mmからf900mmに相当し、スポーツ中継に威力を発揮しています。こうしたレンズは重量が23kgもあり、レンズにカメラがついているという感じを受けます。最近の放送カメラに使われているズームレンズの性能の良さは、ハイビジョンテレビでスポーツ中継を見られた方ならよく理解できると思います。遠くの撮影位置から選手の顔の表情をリアルに撮影することができ、像の境界での色の滲みがほとんど見られないほど色収差が取られています。
 
▼ 放送局カメラ(ENG = Electric News Gathering)用ズームレンズ
 放送用のカメラは、現場での取材が大前提で待ったなしの取材が多いことからズームレンズが大前提です。また、カメラも高画質のものを採用する関係上、3CCD(R,G,Bの3つのCCDの撮像素子を組み付けたものでフィルタによる単板CCDに比べ高画質)カメラが主流です。このカメラでは、Cマウントレンズは使えません。Cマウントレンズは、レンズのマウントから撮像面まで17.526mmしかなく、3CCDカメラでは撮像素子の前に入射光を三色分解するためのダイクロイックミラーが入っているため、Cマウントのフランジバックフォーカス(=17.526mm)では三色分解光学系が組み込めないのです。従って、レンズ取り付け面(フランジ)から撮像素子の位置までのフランジバックフォーカスが長くて、その間に入るダイクロイックミラー光学系の収差を考慮したズームレンズが放送用(ENG =Electric News Gathering)レンズとなります。放送用カメラに使われている撮像素子は、8.8mm x 6.6mmサイズの2/3インチCCDが使われていて、他のCCDカメラよりも大きい撮像素子であり、広角から望遠までくまなく使うことからレンズも大きめになっています。レンズマウントはバヨネットマウント式になっていて簡単に取り外せるようになっています。このバヨネットは、ソニー式バヨネットマウント(B4マウント)とビクター式バヨネットマウントの2種類があります。放送用のカメラはソニーが熱心で業界に受け入れられたので、彼らが独自に開発したバヨネットマウントのレンズが主流になりました。
 
 
▲ 大判カメラ用レンズ
 大判カメラというのは、35mmフィルムを使ったライカサイズカメラよりも大きいサイズのフィルムを使うカメラを言います。歴史的に見ると、カメラの最初のタイプがボックスカメラとかブローニカメラと呼ばれた大判カメラです。この種のカメラは、6x7(6cmx7cmのイメージサイズ)、6x645、6x6、6x9と呼ばれるブローニーフィルムを使ったカメラや、4x5(4インチx5インチのイメージサイズ)、8x10のシートフィルムを使ったものが一般的です。上に示したレンズ写真の中の下から2段目の右写真が大判カメラ用のレンズです。
 4x5カメラは、学校の入学式や卒業式で集合写真を撮るとき、町のカメラ屋さんが使う木箱の形をしたカメラです。カメラ屋さんが黒布を被ってピント合わせをし、黒い板を差し込んでフィルムを交換します。フィルムが大きいので、このカメラで使われるレンズはイメージサイズが大きいのが特徴です。プロが使うため画質が良くてキレが良いのは当然です。また、このレンズにはフォーカスのためのレンズ繰り出し機構がありません。ピント調整は、カメラについている蛇腹機構でレンズを繰り出してフォーカス位置を決めます。このカメラにはアオリ撮影と言ってフィルム面とレンズ光軸を傾斜させて撮影する機能が備わっています。高いビルを撮影するときに通常のカメラですと遠近感がでてしまいビルが倒れて写ってしまいます。アオリ撮影ではこのような不具合を解消すことができ、幅広い表現による撮影が可能になっています。アオリ撮影の場合にはレンズ光軸に対して光が斜めから入ってフィルム面に斜めに当たることがあります。このような撮影では像を結ぶイメージサークルを広く取っておかないとレンズのケラレによって周辺部が写らなかったり光量が不足したりします。大判カメラレンズはフィルムサイズより2倍くらい大きなイメージサークルを持っています。また、周辺部の光量不足を補う意味でレンズを絞ると周辺部まで均一に光が届くのでアオリ撮影ではレンズを絞って撮影されます。
 歴史的に見ると、カメラレンズはこのタイプから出発しました。このカメラからブローニータイプの長巻フィルムになり、映画フィルムをカセットに詰め替えた35mmフィルムになり、1眼レフレックスタイプに代わって行きました。大判カメラレンズにはレンズシャッタが内蔵されていて、露光はレンズシャッタで行うようになっています。
 
 
▲ 顕微鏡レンズ
 非常に小さなものを見るための対物レンズです。顕微鏡の原点は虫メガネです。屈折率の強いレンズを目の前にかざして見たいものに近づけると、小さなものを楽に見ることができます。レンズを近づける度合いはレンズの焦点距離に依存し、焦点距離が短いほど近くなり、大きく見えます。
 最初の顕微鏡は、焦点距離の短いレンズ1つで使われていました。小さなガラス玉のようなものです。対物レンズと接眼レンズの2つの組み合わせになったのは、レンズの収差が抑えられたレンズができるようになってからです。
 顕微鏡は、1590年頃オランダの眼鏡職人ヤンセン(Zacharias Janssen 1588 - 1628)による発明が最初と言われています。その後、1668年、オランダの博物学者レーウェンフック(Antony van Leeuwenhoek :1632-1723)が、ガラス玉を磨いて作った虫メガネ程度の簡単なものを製作して、赤血球、精子、ヒドラ、ワムシなど微細生物を観察し、それを手で書き写して組織学の創始者となりました。組み合わせレンズによる複合顕微鏡を用いて1665年に細胞を発見者したのは、イギリスの物理学・天文学者のR・フック(Robert Hooke :1635-1703)ですが、彼が製作した顕微鏡は収差がひどく、レーウェンフックの顕微鏡に性能が及びませんでした。
 顕微鏡レンズには、通常のカメラレンズあるような絞りやフォーカス調整機構がありません。光量調節は顕微鏡に取り付けられた光源の光量調節で行います。また、ピント合わせもレンズ鏡筒全体を動かして対象物との距離を調節する方式です。顕微鏡レンズにはズームレンズがありません。性能の良い対物レンズが作れないからです。従って、顕微鏡レンズは、レボルバーという回転ターレットに3〜4本の対物レンズを装着して必要に応じてレボルバーを回転してレンズを交換する仕組みになっています。拡大撮影は微小部を拡大するために暗くなりがちで、できるだけ明るくて解像度の良いレンズが求められます。
▼ 顕微鏡レンズマウント
 顕微鏡のマウントもカメラレンズと同様メーカによってネジ込みサイズが異なります。その規格は、古くは1866年、英国のRMS規格(Royal Microscopical Society)があります。
 その規格というのは、次のような仕様になっています。
 
  ■ RMS(Royal Microscopical Society)規格
   ・口径: 20.32mm(0.8インチ)
   ・ネジピッチ: 0.706mm(36山/インチ)、山の角度55°(Whitworth = ウィットウォースネジ)
   ・同焦距離: 45mm
 
 この規格は、あまりに古いものです。140年も前の規格です。RMS規格はインチネジであり、しかもネジ山がウィットワースという現在のインチ規格以前の規格を採用しています。
 英国の機械産業がもっとも盛んだった頃、工作機械技師であったウィットウォース(Sir Joseph Whitworth:1803-1887)が制定したネジ規格が工作機械の標準となり、明治時代に輸入された工作機械はすべてこのウィットウォースネジが使われていました。ウィットウォースが規格化したネジは、ネジ山の角度が55°で、ネジの形状を丸面(山と谷が丸形状)とし、丸面取りの高さをネジ山の高さの1/6としていました。また、ネジの呼び径は、1インチ、1/2インチ、1/4インチというように半分ずつに割り振っていました。しかし、米国では、強度上の問題と製作上の問題からこの規格が気に入らず、米国の工作機械技師セラーズ(William Sellers:1824-1905)が独自のインチ規格を作ります。これが現在アメリカを筆頭として採用されているユニファイ規格のインチネジとなったのです。ユニファイ規格のネジは、ネジ山の角度が60°、ネジ山の面取りが平形で、面取りの高さとネジ山の高さの比が1/8に改められました。角度を60°にしたのは強度を増したかったからです。面取りを平らにしてネジ山を低くしたのは製作をしやすくさせたかったからです。このユニファイネジはメトリックネジにも影響を与え、ネジの角度60°、面取りやネジ山の高さに関しては、ユニファイネジと同じです。ただし、呼び径がM3(口径3mm)、M4(口径4mm)、ネジピッチ0.5mm、0.7mmという具合にメトリックになっています。確かにウィットウォースネジを見ると、ネジ山が立っている(角度55°)ので精密なねじ込みが行えます。その理由からかどうかはわかりませんが、顕微鏡では今もこの規格が生きています。
 
▼ 日本の顕微鏡メーカの対物レンズマウント
 話がそれましたが、顕微鏡を作っている日本のニコンもオリンパスもこのRMS規格には従っておらず、独自の口径とピッチで対物レンズを作っています。また、RMS規格では口径が小さくて明るいレンズを作るときにどうしても制約を受けてしまいます。ちなみにニコンは口径27mm、ネジピッチ0.75mm、同焦距離45mmで、オリンパスは、口径26mm、ネジピッチ0.706mm(36山/インチ)、同焦距離45mmとなっています。ニコンがメトリックネジでオリンパスがインチネジ、同焦距離は同じ45mmとなっています。
 光学部品を単品で売っている米国のEdmund(エドモンド)、NewPort(ニューポート)、日本のシグマ光機の顕微鏡レンズは、RMS規格となっています。おいそれとニコンやオリンパス規格のマウントが使えないので古い140年も前の規格で顕微鏡レンズを作っているものと考えられます。
 どうにも、規格というのはやっかいですけど、非常に重要なものだと言うことがわかります。
 
      --- 顕微鏡のより詳細な事については、「顕微鏡レンズ」を参照下さい。
 
 
▲ 望遠鏡レンズ
 望遠鏡に使われるレンズは、遠くのものを見るためのレンズです。望遠鏡開発の動機は天文学です。月を見たり惑星を見たり惑星の衛星を発見したりと、天体の観測に望遠鏡は無くてはならないものでした。
 望遠鏡は、顕微鏡の発明に遅れること20年、1609年にイタリアのガリレイによって作られ、英国のニュートンは色収差を排した反射鏡タイプの望遠鏡を1668年に作りました。望遠鏡を発明したガリレオは、メガネ作りが発達していたオランダ人の作った特殊な眼鏡にヒントを得て望遠鏡を作ったと言われています。彼の指向する学術的な意味は天文学であり、光学は手段でした。従って、ガリレオは光学の探究をしていません。
 
▼ 望遠鏡のレンズ組み合わせ
 顕微鏡は、虫メガネのように一つの単玉レンズで拡大ができるものと、対物レンズと接眼レンズの1組の組み合わせで構成されるものから出発しましたが、望遠鏡ではすべてのタイプが対物レンズと接眼レンズの組み合わせで発明されました。
 望遠鏡の基本的な考え方は、焦点距離の長いレンズ(対物レンズ)と焦点距離の短いレンズ(接眼レンズ)の1組で構成され、長い焦点距離の対物レンズで無限遠位置からの物体像を焦点位置に結ばせ、その像を拡大レンズ(接眼レンズ)で拡大して見る、というものです。望遠鏡の場合、遠くのものを近くに寄せて見える大きさの度合いを望遠倍率と呼んでいて、その割合は物体の見える角度、すなわち視角の割合で表しています。小さな視角で入ってくる物体を大きな視角で見ることができれば遠くのものが大きく見えることになります。そのために望遠鏡では対物レンズに焦点距離の長いものを使い、接眼レンズ(アイピース)に焦点距離の短いものを使っています。両者の焦点距離の比で視角の比が決められ倍率が求められます。
 望遠鏡では対物レンズに長い焦点距離のレンズを使っているため、波長(=色)による焦点位置が異なる色収差の問題が顕著になります。色収差を改善したレンズの開発が望遠鏡の歴史ともなりました。また、焦点距離が長いレンズは口径比(レンズ口径/焦点距離。レンズのF値は口径比の逆数)が大きくなりがちで、明るいレンズにするには口径を大きくしてたくさんの光を集めなければならず、均一な光学ガラスの製造と、精度の良いレンズ球面の研磨、そして色消しのためのレンズエレメントの組み合わせが望遠鏡レンズに求められる光学要素となりました。
 
▼ 望遠鏡の主流 - 反射鏡
 光学ガラスを通して像を結ばせる屈折型望遠鏡は、口径を無条件に大きくすることが困難で、1800年代の終わりに口径102cmの屈折望遠鏡が作られたのを最後に、1900年代に入ってからは反射鏡を使った望遠鏡に切り替わって行きました。現在の高性能天体望遠鏡は、口径が8メートル(8,000mm)ほどの反射鏡を使っています。
 天文学分野では、反射鏡タイプのレンズが主流であるのに、カメラの望遠レンズでは反射鏡タイプのレンズは好まれません。反射鏡タイプの方が安価で軽く、コンパクトであるにもかかわらず、重くて長い望遠レンズが好まれます。その理由は、反射鏡タイプのものはレンズ絞りが自由にきかないことと、レンズのボケ味が悪いこと、視野が狭いことです。1眼レフカメラでレンズの絞りを自由に変えられないのは困ったものです。レンズのボケも反射鏡タイプではピントの合った像以外のものがドーナッツ状にボケてしまいます。カセグレン式のレンズは、反射鏡の中心部をくりぬいてその中を光が通ってカメラに導かれるのでフォーカスポイント以外ではリング状のボケ像となってしまうのです。天体望遠鏡では、被写体が恒星であり、完全なる無限遠からの光を一点に集めるのが主目的であり、ボケ味は一般の写真のようにそれほど重要ではなく、口径の大きいものが求められるために反射式のカセグレン光学系が使われています。
 
      --- 望遠鏡のより詳細な事については、「望遠鏡レンズ」を参照下さい。
  
▲ その他
 その他、レンズは特殊な分野で高度な発展を遂げ進化しています。例を挙げると、航空写真用レンズ、写真製版用レンズ、フォトリソグラフィー用レンズ、使い捨てフィルムカメラ用レンズ、コピー・スキャナー用レンズなどです。
 
▼ 航空写真用レンズ
 航空写真用レンズは、9.5インチ巾(240mm)のロールフィルムを使い、高度1,000〜3,000mから地形を精密に撮影するため広角でイメージサイズが大きく、歪曲収差の極めて少ない高解像力のレンズが必要です。また、時速200kmで飛行する航空機に搭載されたカメラには、1/500秒以下の短時間露光を伴う高速レンズシャッタが不可欠です。ドイツのツァイス、スイスのウィルド、イギリスのウィリアムソン、フランスのポアビリエ、米国のボシュロム、フェアチャイルド社などが優秀な航空カメラ及びレンズを製造していました。
 
▼ 写真製版レンズ 
 写真製版レンズは、印刷用の版下を作る目的に設計された歪みがなく解像力の高いレンズです。半導体の回路を作るレンズも製版用レンズの発展型と言えなくもありません。半導体回路製造(リソグラフィー)ではサブミクロンオーダの描画を必要とするため、回折限界の解像力を持ったレンズが使われ、光源も回折像が最小になるように紫外光が使われています。この分野では、レンズの限界の挑戦を続けていると言っても過言ではありません。方や「写ルンです」に代表される使い捨てフィルムカメラ、携帯電話に使われているカメラレンズは、レンズ性能/コストを最大限に引き出したものです。何よりも小型コンパクトで安価に供給しなければならないことからプラスチックレンズの需要を生み、射出成形による非球面レンズ製造を確立させました。非球面レンズは、複数枚の球面レンズを一つにまとめることができる画期的なものです。これらのレンズは別の観点からレンズ業界に技術革新をもたらしたものと言えるでしょう。こうした技術がゆくゆくは大型レンズに採用される日も近いと考えられます。
 
 
 
 
 
 

 
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■ 光を集める作用(Light Collection)

 
 
 
 レンズの一番の働きは、先にも述べたとおり、光を集める作用です。透明物質に光が入るとき、光は媒質の屈折率によって曲げられます。屈折の法則は、オランダ人スネルとフランス人デカルトが詳しく調べました。この法則に従って、曲面を持つレンズに光が当たると面に沿うように一点に集まるようになります。レンズは下図に示すようにいくつものプリズムが集まったものと見なすことができます。平行な光は各プリズムに入射して屈折し、一点に集まります。(厳密には一点に集まらず近傍に集まる。これが収差と呼ばれるものとなっています。)
 
▼ レンズの設計
 レンズの設計は、光学ガラスと空気(ものによっては液体の中や真空)の間を光線がどのように進んでいくかを追跡することを基本としています。いろいろな光線(高さ、角度、波長)を入射させて一つづつ丹念に計算し、入射した光がどの経路を通って像がどこに結ばれるかを計算します。この計算は、スネルの法則を使った光線追跡が大原則で、いろいろな収差を総合的に考慮しながらレンズの曲率や、レンズの材質、レンズコンポーネントの構成を決めていきます。設計は、レンズに入射する光がレンズによって結像する際に、がまんできるボケ量に収まるまで手を返し品を代え来る日も来る日も計算を行うそうです。気の遠くなるような三角関数の計算がレンズ設計屋の仕事だったのです。
 こうした単純な仕事をコンピュータが行うようになって事情は一変しました。ミスを犯さず疲れを知らないコンピュータは光学設計にはうってつけでした。コンピュータが最初に使われ出したとき、本家アメリカは軍需用の砲弾(ミサイル)の弾道計算にコンピュータを使いましたが、日本の富士写真フィルムが最初のコンピュータを作ったとき、その目的は光学設計だったのです。それほど光学設計は、単純で膨大、しかもミスが許されない計算の連続なのです。光学追跡については、項目を改めて紹介したいと思います。
 
  
  
 
 
■ 近軸光線(Paraxial Rays、ガウス光学 Gauss Optics)
 レンズを通した光はなぜ一点に集まるかと言えば、レンズが球面でできているためであり平行光束は球面の中心部に集まる性質を持っているためです。平行光が一点に集まる精度はどのくらいかというと、レンズの磨き精度や収差除去の個体差に依存します。
 球面レンズは、原理的に見てもすべての光を一点に集める性能を持っているわけではありません。おおよその平行光束は中心部に向かって集まるものの、精度良く一点に集まるというわけではないのです。球面レンズ1個で平行光を一点に集めることは原理上無理なのです。
 この原理上無理な性質を球面収差と言っています。
球面鏡と同様球面で作られた球面レンズは以下に示すような集光特性を持っています。この特性は、球面鏡では、入射・反射の法則から導かれますし、球面レンズではスネル・デカルトの法則から導くことができます。
 
 
 レンズや球面鏡が光を一点に集めるとは限らない
 上の図に示したように、上段の球面鏡でも下段に示した両凸球面レンズでも平行光は一点に集まっていません。球面鏡では、コーヒーカップの内面で見られるような火線と呼ばれるカージオイド線(Cardioid Line)に沿った光線反射(Caustic Surface)が見られ、平行光束が一点に集まることはありません。反射鏡では球面鏡でなく、放物面鏡の方が平行光を焦点に集める能力が優れています。こうした性質は、屈折を利用した凸レンズでも同じことが言え、一点に集まることはありません。
 
 一点に集めることの理論上の限界 
 集光についてさらに述べると、レンズに球面収差がないと仮定しても、イギリス人の物理学者エアリーが発見したエアリー円板の大きさ以下に光を集めることは不可能です。(光と光の記録『レンズの分解能』参考)。この理由は、光の波の性質によるものです。レンズには、現実には様々な収差含んでいます。先に述べたように、球面でできた球面レンズではすべての光は一点に集まらない球面収差を持っています。レンズを磨き上げる製作精度が悪くても光は一点に集まりません。また、光には幅広い波長があり、波長によって屈折率が変わるので単色光でないと精度良く一点に集まりません。斜めから入射する平行光束も正しく一点には集まりません。レンズ設計者たちはこうした収差をできるだけ抑えて、一点から放射された光を再び精度良く一点に集める工夫をしています。
 
▼ 収差
 基本的な事として、何度も言いますが、1枚の球面レンズだけでは物体からの光をエアリーの唱えた一点に集めることはできません。なぜなら、彼は、レンズを理想の収差のないという前提に立って光の波動の観点から光の集光の限界を説いているからです。実際のレンズは、いろいろな誤差を伴っているので収差( = aberrations)を伴います。収差をできるだけ取り除く工夫がレンズ設計と言えるでしょう。
 実際の所、球面レンズを使って平行光束が一点に集まる条件は、sinθ = θと近似した近軸光線のみなのです。(この近軸光線による光学をガウス光学、ガウス領域と言います。)それ以上の入射角度(θ)に対しては無理が出て、球面収差が顕著となります。従って、この収差をとるためにレンズ光学があり、いろいろなレンズが設計されるのです。
 
▼ 便宜的な光線追跡
 なぜ、sinθ = θと近似した近軸光線領域で光学が成り立っているかというと、多くの光線がその関係式で収束するために集光のマクロ的な押さえをするのに簡便で計算が楽なためです。この近似式で、像のできる位置とか光線がどのように進んでいくのかという大所のおさえがとれるのです。無限遠の光束が一点に集まるとか、レンズの焦点位置から発した光束は平行に進むとか、光軸中心を通る光はそのまま真っ直ぐに進むという性質が利用できるようになるのです。近軸領域では、多くの光が一定の場所に収束するので近軸以外の光もここに集まるように補正が加えられます。それが収差を補正したレンズということになります。
 
 
▼ 近軸におけるレンズ公式
 以下の図が、近軸光線領域におけるレンズの結像原理図です。非常に有名な原理です。ドイツの天才数学者ガウスが発見しました。
 
 
      
 1/a + 1/b = 1/f ・・・(Lens - 1)

a: 物体点の位置からレンズ中心までの距離

b: レンズ中心から結像点までの距離
f: レンズ焦点距離
 M = b/a = l / L ・・・(Lens - 2)
M: 撮影倍率

l: 像の大きさ

L: 物体の大きさ

       
 
 この式は、レンズを扱う教科書で最初に出てくる基本的な式です。
この式では、
 
    1)レンズに平行に入った光は、レンズの焦点距離に向かって屈折する。
    2)レンズの前焦点距離を通過してきた光は、レンズから平行に進む。
    3)レンズの中心に入る光はそのまま真っ直ぐに進む。
 
という関係も知ることができます。
 太陽光のように非常に遠くから届く光はほぼ平行光とみなしてよく、この光をレンズに入れると焦点距離に光が集まるようになります。またレンズ前の焦点距離に物体を置くと、物体から出る光は平行に進むようになります。点光源をレンズの前焦点に置くと、光源は平行に進むようになるので前照灯や灯台のレンズにはこのような配置でレンズと光源が置かれています。
 上の式はまた、物体からの光がレンズを通るときそれが近軸(レンズ光軸に近い角度)で成り立つので、レンズを挟んで物体側の距離(a)と像側の距離(b)は、レンズ焦点距離(f)で表されることも教えてくれます。
 
 
 ところで、近軸光線領域とはどの程度をいうのでしょう。
 
sinθ
誤差(%)

100x(θ - sinθ)/θ

θ(ラジアン)
θ(degree)
θ-θ3/6
誤差(%)

100x(θ3/6 - sinθ)/θ

0.009999833
0.001666658
0.01
0.57295779
0.009999833
0.001666667
0.019998667
0.006666533
0.02
1.14591559
0.019998667
0.006666667
0.049979169
0.041661459
0.05
2.86478897
0.049979167
0.041666667
0.059964006
0.059989201
0.06
3.43774677
0.059964
0.06
0.069942847
0.081646661
0.07
4.01070456
0.069942833
0.081666667
0.079914694
0.106632539
0.08
4.58366236
0.079914667
0.106666667
0.089878549
0.134945336
0.09
5.15662015
0.0898785
0.135
0.099833417
0.166583353
0.10
5.72957795
0.099833333
0.166666667
0.198669331
0.665334602
0.20
11.4591559
0.198666667
0.666666667
0.295520207
1.493264446
0.30
17.1887338
0.2955
1.5
0.389418342
2.645414423
0.40
22.9183118
0.389333333
2.666666667
0.479425539
4.114892279
0.50
28.6478897
0.479166667
4.166666667
0.564642473
5.892921101
0.60
34.3774677
0.564
6
0.644217687
7.968901823
0.70
40.1070456
0.642833333
8.166666667
0.717356091
10.33048864
0.80
45.8366236
0.714666667
10.66666667
0.78332691
12.96367671
0.90
51.5662015
0.7785
13.5
0.841470985
15.85290152
1.00
57.2957795
0.833333333
16.66666667
近軸光線の考察 - sinθとθの誤差
 
 
 上の表は、sinθをθと置き換えたときにどれだけの誤差が出るかを表にしたものです。θは屈折角を表します。上表の右の欄は、θ近似を3次まで展開してθ - θ3/6 とした時のsinθとの誤差です。黄色い背景で示した欄は、誤差が0.66%程度のものです。θが0.20ラジアン(11.45°)を超えると、誤差が1%近くになり近似としては許せなくなります。θが0.90ラジアン(51.56°)になると誤差は13%となります。屈折角θは、球面レンズの高さを示すので、2f・sinθで平行光束の入射口径となり、これと焦点距離の比で口径比(絞り)が求まります。θが11.45°の口径比はF2.52となります。つまり、レンズ口径比がF2.52よりも小さな(明るい)レンズでは近軸光線領域としては扱えないことがわかります。従って、この値より明るいレンズに関しては様々な収差を補正したレンズの必要性が出てきます。レンズの収差と波である光を扱うが故のボケ(エアリー円板)、それに加えて色による収差のせめぎ合いがレンズ設計者がチャレンジしている本質です。
 
 
■ 球面レンズの曲率半径と焦点距離の関係
 レンズの基本的なものは、球面形状をしたレンズです。レンズのほとんどは一定の曲率半径を持っています。レンズの球面に沿って光線が屈折して一点に集まるようになり、そこが焦点(Focus Point)となり焦点距離(Focal Length)が求まります。ただし、何度も言いますが、球面レンズを通った光が一点に集まるのは近軸領域だけの話です。
 球面レンズでは、近軸光線領域でスネルの法則を用いて球面レンズの半径(r1、r2)と焦点距離fに以下の関係を持っています。
 
 
【レンズの厚みを無視できるとき】
 1/f = (n - 1)・(1/r1 - 1/r2) ・・・(Lens - 3)
f: 球面レンズの合成焦点距離

n: 球面レンズの屈折率

r1: 球面レンズの物体側の曲率半径

   (両凸レンズではr1>0)

r2: 球面レンズの像側の曲率半径

   (両凸レンズではr2<0)

【レンズの厚みがtであるとき】
 1/f = (n - 1)・(1/r1 - 1/r2 + (n - 1)2・t /(n・r1・r2) ・・・(Lens - 4) 
    (両凸レンズではr2<0なので第二項は負となり焦点距離は長くなる。)
 
r1 = r2の曲率が同じで、n = 1.52の光学ガラスを使った球面レンズは、曲率半径と焦点距離がおよそ同じになることが上の式からわかります。事実、光学部品メーカの球面レンズのカタログを見てみると半径r1 = r2 = 100mmの両凸レンズの焦点距離はおおよそf = 100mmになっています。 また、レンズ材質によって屈折率が変わるので焦点距離が変わります。屈折率n=2の材質による両凸レンズでは、曲率半径の半分が焦点距離になり、n = 1.5の材質では曲率半径が焦点距離になり、空気の屈折率に近づくにつれ焦点距離がどんどん伸びていきます。屈折率n=2は、サファイアとダイアモンドの中間くらいのもので、n = 1.5は石英や光学ガラス(BK7)がこれに近い値を持っています。
 平凸レンズでは球面が1面しかなく、他面は平面であるためr2 = ∞となり、1/r2 = 0となります。このレンズでは、球面の半径の倍(つまり直径)がおよその焦点距離となります。球面の1面を持つ平凸レンズは球の径が焦点距離となり、2面で構成される両凸レンズでは球の径の半分、つまり半径がレンズの焦点距離となります。
 球形のボールレンズはどのくらいの焦点距離を持つかというと、上の式から光学ガラスでほぼ球の直径に相当することがわかり、球の厚みt分だけ長くなることがわかります。水(n = 1.33)で作った球レンズは屈折力が弱いので焦点が長くなり直径の1.5倍ほど長い焦点距離となります。
 
 上の図は、透明な球形の焦点を表したものです。BK7と呼ばれる一般的な光学ガラスと石英はほぼ似たような位置に焦点を持ちますが、水は少し離れた所に焦点を持ちます。少し観点を変えてボールレンズを見てみると面白いことに気づきます。ボールレンズの焦点近傍に小さな物体を置いてボールレンズを通してその物体を見たとするとどうなるでしょう。小さな物体が大きく見えるハズです。大きなボールレンズは曲率Rが大きいのでそれほどの屈折力を持ちませんが小さな球形のボールレンズはかなりの拡大をすることができるはずです。実は、これが顕微鏡の始まりだったのです。1668年、オランダの博物学者レーウェンフック(Antony van Leeuwenhoek :1632-1723)は、ガラス玉を磨いて作った上記のボールレンズで顕微鏡を作り小さな物体の観察を行ったのです。できるだけ曲率の整った小さなガラスボールを作るのが初期の顕微鏡製作の重要なポイントだったのです。
もっとも、ボールレンズは、入射平行光の高さが高い部分では焦点位置が変わり、ある高さからは臨界角になって球面内部を2回反射して出て行きます。水滴による虹などは入射光が水滴の縁(高い入射光)でおきる現象となります。
 
 
 
■ 焦点距離と画角(Focal Length, Angle Of View)
 
 レンズの焦点距離と画角については、右図のような関係となります。基本的に焦点距離の短いレンズほど広い画角で物体を収めることができます。焦点距離の短いレンズというのは、屈折力の強いレンズのことです。度の強いレンズとも言います。像側から光線の入り具合を逆にたどっていくと、焦点距離の短いレンズは強い屈折力のために光線が広く拡がっています。逆に言うと、焦点距離の短いレンズは、広い範囲の光を集めることができることになるわけです。
 別の観点からレンズの集光を整理してみます。物体Aから出た光はレンズを通して最終的にA'に集まります。その中の一筋の光線は、レンズの中心(主点)を通過します。同様にして、物体表面の任意の点から出た光はレンズによって定まった所に落ち着きますが、物体のどの位置から出た光もその一つはレンズの中心を通ります。右の図は、レンズの中心を通る光だけに注目してレンズが像を作る関係を示したものです。興味あることは、物体とレンズの中心(H)で作る三角形(△ABH)と像とレンズ中心(H')が作る三角形(△A'B'H')は大きさが違うだけで同じ形、すなわち相似形となっていることです。レンズは物体を正しく縮小(もしくは拡大)する性質を持っていると言えます。正しくというのは、語弊があるかも知れません。レンズは収差だらけですので何が正しいのかをちゃんと説明しなければならないからです。ですが、レンズ設計者や製造者が日夜努力されているのですから、正しく結像するためにレンズがあると認識して間違いありません。ただ、設計の過程、製造の過程でどうしても収差がでてしまうのでそうした収差の性質と度合いをしっかり把握しておこうというのがこのサイトの目的です。
 「レンズは規則正しい性質を持つが、細か所では誤りがあるぞ、しかし、レンズの画角に関してのここでの説明は正しいぞ」
と言いたいのです。
 話がちょっと横道にそれましたが、物体と像はレンズを仲立ちとして相似則を満足させるので、物体の大きさとレンズの距離がわかれば物体をとらえる角度、いわゆる画角を求めることができます。実際のところ、CCDカメラなどは撮像素子の大きさに限りがあるので、その大きさの制約からレンズの画角が決められます。つまり、レンズの画角はレンズの焦点距離と撮像素子の大きさで決められてしまいます。
下式にレンズの画角の関係式を示します。画角はイメージサイズ(A'B')とレンズの置かれる位置(b)で決められ、レンズの置かれる位置はレンズ焦点距離により決まることを示しています。
 2θ = 2・tan-1(A'B'/2・b) ・・・(Lens - 5)

θ: 画角(半角)

A'B': 撮像面の大きさ

b: レンズ中心(H')から撮像面までの距離

   b = f・(1 + M)

M: 像倍率(A'B'/AB)

 2θ = 2・tan-1(A'B'/2・f) ・・・(Lens - 6)
上式は、物体が像よりも20倍以上大きく、bが限りなく焦点距離fに近い時のもの。)
撮像面の大きさは、撮像素子の水平サイズで言ったり、縦サイズで言ったり、縦・横を合わせた対角線で表したりします。
 カメラで言う標準レンズとは、人の視角に照らし合わせて同じような画角を持ったレンズをそう呼んでいます。人の視角は45°〜55°と言われています。厳密に言えば人はもう少し広い視野(両眼で約140°)を持っていますが、それは光の強弱だけで正確な視認ができるわけではありません。50°あたりの視力と色彩認識が一番優れた自然な視角であるとされています。人の視角の50°を持つカメラレンズが標準レンズであるので、2θ=50°を上の式に入れてやれば、カメラの種類とそれに合う標準レンズが求まります。
 例えば、2/3インチCCDカメラは、8.8mmx6.6mm(対角線11mm)の撮像面を持っていますから、A'B'=11と置くと、f=11.8となり、f12mmのレンズが2/3インチCCDでは標準レンズということになります。標準レンズfとカメラ撮像サイズA'B'の関係は上の式を整理して、
 f = 1.072・A'B' ・・・(Lens - 7)
という関係が導かれるので、撮像面の大きさとほぼ同じ数値のレンズ焦点距離が標準レンズであることがわかります。ライカサイズ(1眼レフカメラ、24mmx36mm、対角線43.3mm)カメラレンズではf50mmが標準レンズであると言われるのはこの理由から来ています(実際はf43.3mmであるが、製造上f50mmレンズが作りやすいのでf50mmが標準レンズとされています)。同様にして、ブローニー版や4x5インチシートフィルムを使った大判カメラのレンズはf175mm程度が標準レンズとなり、1/4インチCCDカメラ(3.6mmx2.7mm、対角線4.5mm)ではf4.8mmが標準レンズとなります。
 画角50°を境として、それよりも広い画角を持つレンズを広角レンズ、狭い画角のレンズを望遠レンズと呼んでいます。ライカサイズの標準レンズNikkorf50mmF1.2を1/4インチCCDに使うと画角が5.2°となり、これは人間の視覚の1/10程度となるので望遠レンズになってしまうことがこのことからわかります。
 
 
 
レンズ焦点距離
2/3インチ素子の画角(2θ)(8.8mmx6.6mm、対角11mm)
1/4インチ素子の画角(2θ)(3.69mmx2.77mm、対角4.61mm)
ライカサイズの画角(2θ)(24mmx36mm、対角43.3mm)
4x5インチ大判カメラの画角(2θ)(127mmx101.6mm、対角162.6mm)
f6mm
85.02°
42.03°
149.0°
171.6°
f12mm
49.24°
21.75°
122.0°
163.2°
f25mm
24.82°
10.54°
81.79°
145.8°
f50mm
12.56°
5.28°
46.83°
116.8°
f100mm
6.30°
2.64°
24.43°
78.22°
f200mm
3.15°
1.32°
12.36°
44.24°
f400mm
1.58°
0.66°
6.20°
22.98°
   
 レンズ焦点距離と画角(各種カメラ撮像サイズによる画角の違い)
ピンク色の数値は、標準レンズと呼ばれているもの。
 
 
 
■ 撮影倍率 (Magnification)
 
 レンズによってできる像の大きさは、レンズの焦点距離によっても変わりますが、物体の置く位置によっておおよその大きさを知ることができます。
 ここで、撮影倍率について整理しておきましょう。撮影倍率は、像の大きさ(A'B')を物体の大きさ(AB)で割った値を言います。
 
     M = A'B'/AB ・・・(前述)
 
撮影倍率Mは、一般的に1以下のことが多く、物体を縮小して像を撮像面に結ばせます。Mが1以上の時は物体より像の方が大きくなり拡大撮影となります。小さなものを撮影するときには、Mの値が大きくなるようなレンズ配置を用います。
1. 遠くにある物体
 物体が建物だとか山だとか非常に遠くにある場合、物体はレンズに対して非常に遠くに置かれることになります。富士山などは山の高さだけでも裾野から2,700m近くあります。裾野の巾は10km程度です。これを20,000m程度離れた御殿場から眺めるとすると、レンズから物体までは、a=20,000,000mmとなります。この位置でf50mmのカメラレンズを使ったとすると、富士山は、レンズ焦点距離の400,000倍も遠い位置にあることになります。この場合、像は、レンズ後方焦点距離と同位置に結ばれます。この時の撮影倍率は、b/a = 1/400,000となります。2,700,000mm近い山並みが6.75mmの像として結像することになります。カメラレンズにf100mmのものを使うと撮影倍率は半分になるので、像の大きさは13.5mmとなり、f200mmのレンズでは27mmの大きさになります。一眼レフカメラにf200mmのレンズを使うと、フィルム画面にいっぱいに富士山を写すことができ、それ以上の焦点距離レンズでは富士山の頂上を切り取ることができます。
 遠い物体を撮影するとき、撮影倍率で撮影の具合を考慮すると、撮影倍率が非常に小さい値の分数になるために使い勝手が悪いので、画角で言うことが一般的です。例えば富士山の裾野から頂上まで2,700mを10,000m離れた富士吉田で見る場合、その視野角は15.38°となります。人の標準視野角が50°ですから、約1/3で富士山を見ることになります。この位置で富士山をカメラいっぱいに写したとすると垂直画角15.38°のレンズを使えば良いことになります。一眼レフカメラではf89mmのレンズがこれに相当します。
と言う具合に、角度で言った方がわかりが良くなります。
 カメラで言う撮影倍率と望遠鏡で言う倍率ではいささか定義が異なります。カメラでは像の大きさと物体の大きさの比で撮影倍率が決まるのに対して、望遠鏡では人が見る物体の視角に対する望遠鏡によって得られる物体の視角の比で求まります。望遠鏡の詳しいことは別に述べることとして、倍率の定義に違いがあるので注意が必要です。顕微鏡の倍率は望遠鏡とは違いこちらは像の拡大倍率を指しています。小さい物体をどれくらいまで大きくして見ることができるかという観点で倍率を定義しているので、顕微鏡の倍率はカメラレンズの倍率に近い考え方と言えます。顕微鏡の詳しいことも項を改めて説明したいと思います。
 
2. 等倍で見る
 レンズを使って物体と同じ大きさの像を作る場合、物体をレンズ前側焦点距離の2倍の位置に置けば、レンズ後側焦点距離の2倍の位置に像ができ、像の大きさは物体と同じになります。a = 2fと置いて、レンズの公式 1/a + 1/b = 1/f に当てはめれば、a = b = 2f となり、撮影倍率 M = b/a = 1となることが理解できます。物体がレンズ前側焦点距離の2倍から遠のくにつれて、像はどんどん小さくなりレンズ後側焦点距離位置に近づいて結像することがわかります。
 
3. 拡大して見る
 物体がレンズ前側焦点距離から2倍までの位置にあるとき、像は拡大されます。物体が2fの時に像は物体と同じになり、2fからfに近づくにつれてどんどん大きくなります。10倍の拡大を得たい場合は、M = b/a = 10、b = 10a なので、これをレンズ公式に当てはめるとa = 1.1f の位置に物体をおけば、像が10倍になります。同様に100倍の拡大では1.01fの位置に物体を置けば良いことになります。限りなく前側焦点位置に物体を持ってくることにより像が大きくなることがわかります。像が拡大されるに伴い、像ができる位置はレンズのはるか後方、例えば10倍の撮影倍率では11fの位置、100倍では101fの位置にできて大きな像ができます。しかし、これはおそろしく暗い像となります。また拡大された像はレンズの収差による影響でシャープな像は望むべくもありません。 拡大して見るには拡大用にしっかりと補正が施されたレンズが必要です。
 
4. 像ができない位置
 物体をレンズ前側焦点位置に置くと、物体から出た光はレンズを通って平行光となります。つまりこの位置では像はできないことを示しています。像はできませんが物体から出た光は平行光になるため、物体を照明灯に使うような光源にすると光源から出た光は遠くまで拡がらずに届くことになります。この原理を利用して灯台や照明灯の光源や投影レンズの設計に利用しています。
 
5. 虚像(Virtual Images)のできる位置
 像には実像(Real Images)と虚像(Virtual Images)の二つがあります。実像というのは、像のできる位置に白い紙を置くと像ができていることでわかり、物体からの光がその位置に集まることを意味します。CCDカメラも銀塩フィルムも実像ができる位置に撮像面を置いて像を記録します。虚像と言うのは、あたかもその位置に像があるように見えるけれども、実際にその位置に白い紙をおいても像は見えないものを言います。鏡の像は虚像の典型的なものです。鏡の奥にある像は、その位置からあたかも光が出ているように見えますが実際